体内に侵入した細菌やウイルスを攻撃・排除する「抗体」はたんぱく質でできています。のど粘膜などの組織維持や免疫維持にも、たんぱく質は欠かせません。運動不足で落ちた筋肉量の回復や、免疫力の維持に、朝食に鶏むね肉をプラスしてはいかがでしょうか。適度な炭水化物と合わせてとることをお勧めします。【解説】大和田潔(あきはばら駅クリニック院長)遠藤恵子(管理栄養士、栄養相談専門士)

解説者のプロフィール

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大和田 潔(おおわだ・きよし)

あきはばら駅クリニック院長。医学博士。福島県立医科大学を卒業後、東京医科歯科大学神経内科に進む。救急病院などを経て、同大学大学院にて基礎医学研究を修める。2007年から現職。頭痛、アレルギーの他、「減薬をして健康を目指す」ことで、メタボリックシンドロームの治療を行う。患者個人の状態や生活習慣に応じた食事指導をするために、管理栄養士と二人三脚で行う食事指導をしてきた。『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 人体のしくみ』(西東社)など、著書・監修書多数。健康、減薬、慢性炎症の話題などで、メディアにも多く出演。
▼あきはばら駅クリニック

鶏むね肉は筋肉と家計を助ける最高の食材

筋肉量を維持するには、筋肉の材料となるたんぱく質の摂取が不可欠です。

たんぱく質が豊富な食材の中でも、筋肉量を維持してほしい高齢者や、食事が偏りがちな人にお勧めなのが、鶏むね肉。その理由を説明しましょう。

安価で使いやすい

鶏むね肉の利点は、なんといっても低価格で、毎日の食事にとり入れやすいところです。いくら体にいいといわれる食材でも、値段が高いと、なかなか続きません。

鶏むね肉は、肉類の中でも特に安価で購入できるので、家計に優しい食材です。また、味に癖がないので、料理にも幅広く使えます。そのため、毎日同じメニューで食べ飽きるということもありません。

低脂質&高たんぱく

鶏肉は、牛や豚などの肉と比べて脂質が少ない食材です。その中でも、特にヘルシーなのがむね肉。もも肉よりも脂質が少ない上に、たんぱく質が豊富です。そのため、ダイエット中の人でも、余計なカロリーを抑えながら、効率よくたんぱく質を摂取できます。

特筆すべきなのは、たんぱく質の種類。筋肉の増加には、たんぱく質中に含まれる「分岐鎖アミノ酸」が必要です。これは、必須アミノ酸のうちのバリン、ロイシン、イソロイシンの総称で、体内では筋肉の材料やエネルギー源になることで知られています。

この分岐鎖アミノ酸は、マグロやサバなどの魚類に多く含まれている他、鶏むね肉にも豊富です。そのため、食が細くなりがちな高齢者が筋肉量を効率的に維持するのに、非常に役立つ食材だといえます。

質の高い免疫システムの保持につながる

筋肉量の維持や増加に鶏むね肉を役立てる場合は、朝食に適度な炭水化物と合わせてとることをお勧めします。

炭水化物が不足すると、体は食事中のたんぱく質や筋肉に含まれるアミノ酸を、エネルギー源として使用します。特に、夕食から長く時間が空いた起床後は、血液中のアミノ酸の濃度が低下している状態です。

その状態で、炭水化物をとらずたんぱく質だけをとると、筋肉合成ではなく、エネルギーとして消費されてしまいます。

逆に、食事の支度が面倒だったり忙しかったりするからといって、おにぎりやパンなどの炭水化物だけで朝食を済ませてしまうと、たんぱく質不足だけでなく、血糖値も上昇します。

たんぱく質を含んだ朝食をしっかり食べると、腹持ちがよくなり、血糖値の上昇もゆるやかになります。そのため、昼食や夕食の過食を防ぐことにもつながります。

調理が面倒な人は、市販のサラダチキンでも構いません。まずは1品、朝食で鶏むね肉を食べる工夫をしてみましょう。

その上で、より筋肉をつけやすくするならば、食後1時間ほどたった頃に、軽く20分ほど歩いたり、軽い筋トレを行ったりするのもお勧めです。
 

また、鶏むね肉と言えば、肉質が硬いという印象を持っている人も多いと思います。しかし、工夫次第でやわらかく仕上げることができます。

ポイントは「繊維を断つようにして切る」と「調味料と水を加えてよくもんだら、1時間ほど冷蔵庫で放置する」の二つです。

これにより、肉の細胞の中に水分が入り、モチモチしたやわらかい食感になります。漬け込み調味料に少量の砂糖やみりんを加えておくと、加熱時に水分が失われにくくなります。

鶏むね肉のひき肉もお勧めです。「つみれ団子」をあらかじめ作りおきするのも、使いやすくてよいでしょう。貧血気味の人は、フードプロセッサーで砂肝も合わせてミンチして作れば低カロリーな上に、鉄分やビタミン、葉酸も加えられます。

どちらも、冷蔵・冷凍保存をしておけば、食べたいときに好きなだけ食べられます。忙しい朝は、みそ汁などにこれらを入れるだけで、たんぱく質を手軽にとることができます。

成人が筋肉量を維持するには1食で20~30gのたんぱく質をとる必要があるといわれています。肉類でたんぱく質をとる場合、「たんぱく質の量×5=肉の重量」が目安となります。鶏むね肉で20gのたんぱく質をとるならば、100g分を調理して食べるだけでよいわけです。

食事で十分なたんぱく質をとれば、免疫力(病気に対する抵抗力)も維持できます

体内に侵入した細菌やウイルスを攻撃・排除する「抗体」はたんぱく質でできています。のど粘膜などの組織維持や免疫維持にも、たんぱく質は欠かせません。

質の高い免疫システムの維持のために、良質で十分な量のたんぱく質と、エネルギー源になる炭水化物を上手に摂取しましょう。

新型コロナウイルス流行中にこそ、運動不足で落ちた筋肉量の回復や、免疫力の維持をしておきたいですよね。この機会に、朝食に鶏むね肉をプラスしてはいかがでしょうか。

鶏むね肉を食べるポイント

朝食に、炭水化物と合わせてとる
「炭水化物+たんぱく質」を朝にとると、たんぱく質を効率よく筋肉づくりに利用できる上、血糖値の急上昇や昼食・夕食の過食を防ぐ効果が期待できる。

調理に一工夫をして「作りおき」を
「ふわ焼き鶏むね肉」(*下記別記事参照)や、「鶏むね肉のつみれ団子」を作りおきするのがお勧め。

1食につき約100g程度を食べる
 肉類でたんぱく質をとる場合は、「たんぱく質の量×5=肉の重量」が目安。

[別記事:おいしく手軽にたんぱく質が摂取できる!ふわ焼き鶏むね肉の作り方&やわらかレシピ→

画像: この記事は『安心』2022年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年4月号に掲載されています。

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