解説者のプロフィール

佐々木繁光(ささき・しげみつ)
佐々木整体治療院院長。1957年、千葉県生まれ。日本大学薬学部卒業後、薬剤師として病院に勤務。鍼灸師とあんまマッサージ指圧師の資格を取得し、治療家の道へ進む。治療院での施術のほか、整体教室を開催するなど、セルフケアにも力を入れている。共著に『一瞬整体で痛みが消える! 病気が治る!』(マキノ出版)などがある。
▼佐々木整体治療院
「糖尿穴」を刺激する「太ももの一点押し」
私の治療院には、腰痛、ひざ痛、股関節痛など、痛みの症状に悩む患者さんが、連日訪れます。患者さんの話をよく聞,き、状態を把握したうえで、鍼や灸、整体、マッサージ、指圧などのなかから、最も適した方法を選び治療に当たっています。
関節痛だけでなく、ほかの悩みを抱えている患者さんも少なくありません。なかでも多いのが、「糖尿病を改善したい」という患者さんです。
糖尿病の場合、検査で血糖値の高さを指摘され、食事療法や服薬で治療に当たるケースがほとんどです。一方で「数値が改善しない。どうしたらいいか」という相談をよく受けます。そんなときに患者さんに勧めているのが、左足にあるツボを刺激する「太ももの1点押し」です。
このツボは、私の師匠である宮本紘吉先生から「膵臓のツボ」として教えてもらいました。そのため、私は膵臓の働きが衰えている患者さんに、このツボ押しをよく行っていました。
あるとき、「膵臓は血糖値を下げるインスリンを出す臓器だから、糖尿病も改善するのでは」と思いついたのです。
そこで糖尿病の患者さん10人に協力してもらい、左太もものツボを押す前後で血糖値の変化を調べました。すると、10人全員の血糖値が下がったのです。
後日、このツボが「糖尿穴(とうにょうけつ)」と呼ばれていることを知りました。それ以来、私は糖尿病に悩んでいる人に、太ももの1点押しを勧めています。では、太ももの1点押しで血糖値が改善した症例をご紹介しましょう。
当初、腰痛で鍼治療を受けていたKさん(68歳・女性)は、ある日、服薬してもなかなか高血糖が改善しない、と打ち明けてくれました。糖尿病が発覚したときの血糖値は200mg/dl以上、ヘモグロビンA1cは8.5%だったそうです。
そこで腰痛の治療とともに、太ももの1点押しを施術し、自宅でもご自身で行うように勧めました。すると、始めて数ヵ月が過ぎたころには、Kさんの血糖値は110mg/dl以下、ヘモグロビンA1cは6.3%くらいで安定するようになったのです。主治医も、血糖値やヘモグロビンA1cの改善に驚いていたとのことです。
太ももの1点押しのやり方
太ももの1点押しのやり方は、下項をご参照ください。ひざが直角になるイスに腰かけているときなら、いつ行ってもかまいません。1日に何回行ってもけっこうです。
「なぜ左足なのか」という理由は、はっきりわかりません。ただ、インスリンを分泌する膵臓が体の左寄りにあることが関係していると思われます。私の治療経験では、糖尿病は膵臓がある体の左側のトラブルと連動することがわかっています。
糖尿病の人は多くの場合、左の股関節がかたく開きにくいのです。左太ももの糖尿穴を押すと、血糖値が下がるとともに、左股関節の動きがよくなるケースが多く見られます。
同様に見られる、左手が上がりにくいという糖尿病の人も、糖尿穴を押すと左手がスムーズに上がるようになります。
糖尿病で太ももの1点押しが効くのは、膵臓のインスリン分泌が悪い人と、左の股関節がかたくなっている人です。

❶ひざが直角になる高さのイスに腰かける。

❷ツボの位置は、左足のつけ根からひざまでの中間点で、左右の中央。グッと押したとき痛いところ。

❸両手の親指をツボに当て、グッと体重をかけて5秒ほど押し続ける。これを3回くり返す。1日に何度行ってもよい。
体の左側に現れる痛みやしびれにも効く!
糖尿病には、肝臓が原因の場合があります。この場合、このツボを押しても効果はありません。糖尿穴を押しても血糖値が下がらなければ、肝臓の機能低下を疑ってください。
糖尿穴は、体の左側に出た痛みやしびれにもよく効きます。私の経験では、四十肩、ひざ痛、腰痛、座骨神経痛などの改善に、著効を発揮します。
糖尿病だけでなく、体の左側に痛みやしびれ、動かしにくさなどが現れたら、すぐにこのツボを押してみてください。症状の改善が期待できるでしょう。
自分の手の指を使うツボ押しは、誰でも簡単にできて、安全な方法です。病院での糖尿病治療と併行して、日々の生活に取り入れてください。

この記事は『壮快』2022年4月号に掲載されています。
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