解説者のプロフィール

加藤淳(かとう・じゅん)
名寄市立大学保健福祉学部栄養学科教授。北海道の農業試験場や豪州クイーンズランド大学などで豆類の品質、加工適性、健康機能性などについて研究。北海道立総合研究機構・道南農業試験場長などを歴任し、2019年4月より現職。著書に、『小豆の力』(キクロス出版)、『アズキ博士が教える「アズキ」のチカラはこんなにすごい!』(KKロングセラーズ)などがある。
小豆(アズキ)の健康効果に注目が集まっている
アズキのポリフェノールが体内での糖の吸収を妨げる
最近、アズキの健康効果に注目が集まり話題となっています。豆類、なかでもアズキの研究を長年続けてきた私にとっても、喜ばしいことです。
アズキが私たちの健康にもたらす効果や、食文化への貢献は、計り知れないものがあります。今回は、特に糖尿病に重点を置いたアズキの効能について、ご紹介しましょう。
アズキの健康機能性を語るうえで外せない二大要素は、「ポリフェノール」と「食物繊維」です。
まず、ポリフェノールとは、ほとんどの植物に存在する色素や苦み成分の総称です。抗酸化作用があり、体内で老化や病気を引き起こす活性酸素を消去し若々しく健康な体に導きます。
あまり知られていませんが、アズキはほかの食品と比べても極めて多くのポリフェノールを有しています。ポリフェノールが多いことで知られる赤ワインより多く、多い物では2倍ほども含まれているのです。
アズキのポリフェノールは、カテキングルコシドという成分が最も多く、お茶のカテキンやそばで有名なルチンも含まれています。
私たちが行った実験では、アズキのポリフェノールが糖尿病に対して有効であることを示唆する結果が得られました。
実験用のマウスに砂糖水を飲ませると、ヒト同様に急激に血糖値が上昇します。通常のエサを与えたマウスは、30分で血糖値がピークになり、120分かけて下降し、元に戻ります。
ところが、アズキのポリフェノール入りのエサを与えたマウスは、血糖値の上昇のスピードが緩やかで、ピークは60分後。その最大値も、通常のエサを与えたマウスより低い値でした。
つまり、アズキのポリフェノールが、体内での糖の吸収を妨げることがわかったのです。
ゆでると食物繊維が増え低カロリーに!
そして、アズキの健康機能性を支えるもう一つの要素が、豊富な食物繊維です。その量は、野菜のなかでも特に多いことで知られるゴボウのなんと4倍。
食物繊維には、水溶性と不溶性の2種類がありますが、アズキの場合、約7割が不溶性です。しかもこれが、煮ることで5割ほど増えます。
というのも、アズキの成分の約半分を占めるでんぷんは、ゆでると難消化性の食物繊維に変化。「レジスタントスターチ」という、人体では分解できない物質になり、カロリー(エネルギー)は低下します。
つまり、豊富な食物繊維でおなかは膨れるのに低カロリーという、理想的なダイエット食になるのです。
砂糖を加えない「煮小豆」がおすすめ
煮汁の有効成分をすべて閉じ込める!
とはいえ、アズキは和菓子の材料という認識が一般的には強いでしょう。甘いあんこは、脂質が少なく、洋菓子よりはヘルシーですが、食べ過ぎれば糖尿病や肥満が懸念されます。
そこで私が提案しているのが砂糖を加えない「煮アズキ」です。
ポイントは、アズキを煮る前に短時間、乾煎りすること。タンニンの分子変化を起こして渋みを消します。さらに豆の吸水率ギリギリの量の水を加えて煮ることで、煮汁に出た有効成分をすべて閉じ込めた、健康効果の高い煮アズキができます。
この方法はNHKの情報番組で「ウラワザ煮アズキ」として取り上げられ、おかげさまで大きな反響がありました。
私はふだんから、たくさん煮アズキを作って冷凍保存しています。といだ白米に、凍ったままの煮アズキを適量加えて普通に炊く「アズキご飯」が、お気に入りの食べ方です。ぜひ毎日アズキを食べて、若さと健康の維持向上に役立ててください。
アズキ博士・加藤先生がテレビで紹介した
煮アズキの作り方

材料
アズキ(乾)…300g
水…500ml
差し水…100ml
❶アズキはさっと洗ってザルに上げ、キッチンペーパーなどで拭う。
❷①を、底が広めの鍋に入れ、中火で2~3分、絶えずかき混ぜながら乾煎りする。
❸アズキの表面が少し黒っぽくなったら、500mlの水を加えて強火にかける。沸騰したら火を弱め、100mlの差し水を加え、ふたをして弱火にする。
❹ときどき様子を見て、30分ほどで煮汁が少なくなったらふたを開け、混ぜ返しながら水分を飛ばす。
❺煮汁がなくなったら完成。指で強く押すとつぶれる程度のかたさが出来上がりの目安。
*冷蔵で1週間、冷凍で1ヵ月ほど保存できる。冷凍しても有効成分に変わりはない。
*1日に50g程度(煮た状態で)を目安に食べるとよい。
*食べるタイミングはいつでもいいが、ダイエット目的の場合は食事の最初に、よく噛んでとるのがお勧め。満腹感が得られ、そのあとの食事量が減るため、より効果的。

この記事は『壮快』2022年4月号に掲載されています。
www.makino-g.jp