解説者のプロフィール

岡尾知子(おかお・ともこ)
国際薬膳師、国際中医師。鍼灸師。長年、フリーランスの編集・ライターとして雑誌や書籍の編集、執筆を行う。取材を通じて東洋医学に関心を持つようになり、薬膳と中医学、鍼灸を学ぶ。現在は池袋ひりゅう鍼灸院にて鍼灸師として治療に当たる傍ら、「ロータス薬膳教室」を主宰。東洋医学に基づく健やかなライフスタイルの普及・啓発を行う。メディア出演多数。近著に『はじめての薬膳生活』(法研)がある。
ゴボウを食材にしている国は少ない!
ゴボウの種は解毒と解熱むくみ取りの漢方薬
私たち日本人は、ふだんいろいろな形でゴボウを口にしています。けれども、このようにゴボウを食用にするのは、日本と朝鮮半島だけなのだそうです。
私はもともと、美容や健康に関する記事を編集・執筆する仕事をしていました。取材を通じて漢方やツボ、鍼灸などの世界に出合い、東洋医学の奥深さに惹かれました。
それを機に、中医学や薬膳を学び、鍼灸師の資格も取得。現在は、鍼灸治療や薬膳ワークショップなどを通じて、東洋医学に基づく心身の養生法を伝える活動をしています。
実はゴボウは中国から日本に伝来した植物ですが、本家の中国では、先に述べたとおり食用とされていません。かわりに、ゴボウの種子である「牛蒡子」が、生薬(漢方薬の材料)として、重宝されています。
薬膳や漢方の基になる中医学の分類では、牛蒡子は体を冷やす「涼性」に属します。主な効能は、解毒、解熱、そして余分な水分を取り除くことです。
排泄をよくして体を冷やし、発汗を促すことから、主にカゼのひき始めに用いられます。
食用にすれば「便秘解消」の味方
一方、ゴボウを食用とする場合に期待できる効果は、なんといっても、お通じの改善でしょう。食物繊維が非常に豊富なので、便秘で悩むかたには、積極的にとってほしい食材です。
もちろん、普通に煮物にしたり、汁物に入れたりしても十分効果的ですが、「腸にいい薬膳」として私がお勧めしているのが「ゴボウみそ」です(作り方は下項を参照)。
腸にいい作用があり、なおかつゴボウと相性のよい食材を組み合わせて、便秘解消効果をさらにアップさせることを狙いました。
内環境を改善する「ゴボウみそ」レシピを考案
体の水はけがよくなりため込みにくい体に!
レシピ考案に当たり工夫したポイントは、三つあります。
①発酵食品としてのみその作用
②ゴマ油の潤滑作用
③ハチミツの潤腸作用
ゴボウみそは、食物繊維の多いゴボウに、発酵食品であるみそを組み合わせ、腸内環境の改善作用をより高めています。
さらに、ゴマ油、白すりゴマ、ハチミツを加えています。食物繊維が便のかさを増し、ハチミツの潤いが適度な水分を与え、ゴマの良質な油分が腸内での滑りをよくする。そんな相乗効果が期待できるのです。
中医学では便秘を、体質により細かく分類しています。
大きく分けると、体が虚弱で〝出す力〟が足りないタイプと巡りが悪くてため込んでしまうタイプ。特にゴボウが向いているのは後者で、中医学では「痰湿体質」といいます。
女性の場合はむくみと冷えを抱えた水太りに、男性の場合は脂肪が蓄積したメタボ体形につながりやすいので、よけいな水分や老廃物をため込まないよう注意が必要です。
ゴボウは常備菜として習慣的に摂取しよう
ゴボウみそを積極的に食事に取り入れると、体の水はけがよくなり、ため込みにくい体になります。便秘はもちろん、冷えからくる冬太りやメタボも、改善に向かうでしょう。脂肪肝や高脂血症の人にも、ゴボウみそは向いています。
なお、特に冷えが気になる人は、ゴボウみそにトウガラシを加えることをお勧めします。
現代人の不調は「体にため込んで、停滞している」ことに起因する場合が多いように思われます。不調を改善したいなら、体にいい物を取り入れる前に、まずはため込んでいる物を出すこと。そして、巡りがよくなったところで、足りない物を補うのが効果的といえます。
ゴボウは栄養成分面から見ても、東洋医学的な理論からも、デトックス力に優れた食材ですから、現代人の食養生にぜひ取り入れてほしいですね。
快調なら「ゴボウカレー」で消化力アップ!
今回ご紹介したゴボウみそは常備菜として利用できて、慢性的な便秘に悩む人向きの一品。一方、「ふだんは快調なのに、なんだかスッキリしない」というときは、消化にいいスパイスの力で巡りを促す、ゴボウカレーがお勧めです。
日ごろ脇役に回りがちなゴボウですが、常備菜として定着させつつ、ときには主役にすることで、きっと朝から気持ちのいいスタートが切れるはずです。
ゴボウみその作り方

材料(作りやすい分量)
ゴボウ…1本(100g)
ネギ…5cm
ゴマ油…大さじ2
みそ…大さじ1と1/2
みりん…大さじ1
白すりゴマ…大さじ1
ハチミツ…適量
❶ゴボウとネギをはみじん切りにする。
❷フライパンにゴマ油を入れて温め、ゴボウを加え、弱めの中火で炒める。
❸かさが半分程度になったらネギとみそ、みりんを加えて軽く炒める。
❹全体がなじんだら白すりゴマを加え、ハチミツで味を調える。
●ゴボウのアクが気になる場合は、5分ほど水にさらす。
●みそを加えたら、菌をなるべく死滅させないよう、加熱は短時間にする。
●冷蔵で1週間~10日ほど保存可能。
●ご飯のお供に、おかずみそとして食べる。キュウリや蒸し鶏につけたり、ひき肉に混ぜ込みハンバーグ状にして焼いたりするのもお勧め。

この記事は『壮快』2022年4月号に掲載されています。
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