便秘の患者さんに共通するのが、食事量の少なさです。それでは、出る物も出ないというわけです。ゴボウは、便秘に効果がある水溶性食物繊維が豊富なうえ、おかずに加えれば、ある程度の量をとることができるので、これもメリットです。【解説】前田孝文(南流山内視鏡おなかクリニック院長)

解説者のプロフィール

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前田孝文(まえだ・たかふみ)

南流山内視鏡おなかクリニック院長。2001年、京都府立医科大学医学部医学科卒業。医学博士。自治医科大学附属さいたま医療センターなどでの勤務を経て11年に同センター外科臨床助教。12年より辻仲病院柏の葉臓器脱センターに勤務。17年に千葉県内で初の便秘専門外来を開設。21年に南流山内視鏡おなかクリニックを開院。西洋医学のほか、鍼治療や整体、食事療法を取り入れ治療に当たる。著書に『男の便秘、女の便秘』(医薬経済社)。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医などの資格を持つ。
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「水溶性食物繊維と不溶性食物繊維」便秘に効果があるのはどっち?

腸の調子のよしあしは、その日の体調を左右します。今日のおなかの調子はいかがですか。

便秘体質の人は、ふだんから腸にいい食事を意識し、摂取に努めていると思います。一般的に、腸にいいとして勧められているのは「発酵食品」と「食物繊維」の2つ。それは間違いないのですが、質が問われます。

食物繊維であれば、水に溶ける水溶性と、溶けない不溶性がありますが、このうち、便秘に効果があるというエビデンスが認められているのは、水溶性食物繊維のほうです。

不溶性は「便のかさを増す」という点では、腸から便を押し出すのに役立ちますが、摂取量や体質によっては、便が詰まる可能性もあります。そのうえ不溶性食物繊維は、穀類や野菜、豆、キノコなど、たいていの植物性の食べ物に入っているので意識せずとも足ります。

一方、水溶性は、便をやわらかくして、スルッとスムーズな排便を助けます。海藻類に多いとされますが、海藻は、ぬめりなどにより栄養分析が難しく、日本食品標準成分表(七訂)では、水溶性と不溶性の食物繊維量は示されていません。

ゴボウは水溶性食物繊維が多く量も食べられる

では、水溶性食物繊維を意識して多くとるには、何を食べればいいのでしょうか。

私がお勧めしているのが「ゴボウ」です。ゴボウは不溶性食物繊維も含みますが、農林水産省の定める日本人がよく食べる野菜(指定野菜14品目、特定野菜35品目)のなかで、水溶性食物繊維の多い野菜の3位にランクインしています。

ちなみに1位はラッキョウ、2位はニンニク。薬味のような野菜ですから、量をとるのは難しいでしょう。そこで、ゴボウの出番なのです。

便秘の患者さんに共通するのが、食事量の少なさです。比較的若い人ならダイエット、高齢のかたは食が細くなりがちで、そもそも、食事の絶対量が足りていません。それでは、出る物も出ないというわけです。

ゴボウは水溶性食物繊維が豊富なうえ、おかずに加えれば、ある程度の量をとることができるので、これもメリットです。

水溶性食物繊維は、大腸に届くと、腸内細菌の栄養(エサ)となります。腸内細菌の動きが活発になり、腸の動きをよくする酢酸や酪酸など、短鎖脂肪酸の生成が増加。それにより、便通が促されるのです。

このゴボウの水溶性食物繊維はイヌリンといい、さまざまな健康機能があるとして、最近、脚光を浴びています。

糖質の吸収を抑えることで血糖値の上昇を抑制する、血中のコレステロールや中性脂肪を低減する、免疫機能を刺激し向上させる、有害物質の排泄に働く、ミネラルの吸収を高めるなど、いいことづくめです。食物繊維の摂取は、がん予防や、循環器疾患の死亡を減少させることもわかっています。

便秘対策に鬼に金棒「ゴボウは食べる整腸剤」

もう一つ、ゴボウの便秘解消効果を語るうえで欠かせないのが、ミネラルの一種であるマグネシウムです。

マグネシウムは腸の内容物をやわらかくして便通を促進する作用があり、病院で処方される緩下剤の主成分でもあります。ゴボウはこのマグネシウムも、野菜のなかでは比較的多く含んでいます。

水溶性食物繊維にマグネシウムが加われば、便秘対策として、鬼に金棒。ゴボウはまさに、「食べる整腸剤」といえるでしょう。

抗酸化成分の含有量は野菜のトップクラス

便秘とは少し離れますが、ゴボウの成分で見逃せないのが、ポリフェノールです。ポリフェノールは植物の色や苦みのもとになる成分で、強力な抗酸化作用、つまり体の老化を防ぎ、若さを保つ効果があります。

そして、ゴボウのポリフェノール含有量は、野菜のなかでもトップクラス。切ったゴボウがすぐに黒ずむのは、ポリフェノールの作用によるものです。皮の部分に特に多く含まれるため、ゴボウはきれいに洗ったら皮をむかず、アク抜きもせずに料理に使うのがベストです。

ちなみに先述したイヌリンは果糖がたくさん結合した構造をしています。収穫してから長くおくと、イヌリンが果糖に分解され、甘みが増す一方で、食物繊維としての効果は薄れます。ゴボウを買ってきたら、なるべく新鮮なうちに食べましょう。

私自身、きんぴらはもちろんけんちん汁や素揚げなどにしてゴボウをよく食べ、腸への効果も実感しています。患者さんにも勧めており、実際、きんぴらゴボウを積極的に食卓に上げるようにして、便秘が解消したかたもいらっしゃいます。

ただし、こうした食事療法で効果を出すには、長く続けることが肝心です。飽きないよう食べ方を工夫し、食生活に上手にゴボウを取り入れましょう。

画像: なぜ便秘に「ゴボウ」がいいのか?皮をむかずアク抜きせずに調理すれば最高の“食べる整腸剤”に

ゴボウはここがすごい!
水溶性食物繊維イヌリンが豊富!
マグネシウムが豊富!➡ダブルパワーで便秘解消に有効
ポリフェノールが豊富!➡老化を防ぎ、若さをキープ

[別記事:腸が喜ぶ大地の恵み!シャキシャキ!ゴボウ美味レシピ&活用術→

画像: この記事は『壮快』2022年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年4月号に掲載されています。

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