ふくらはぎが冷え、むくんだ状態で就寝すると、下半身にたまった水分が寝ている間に腎臓に移動して尿量が増えます。夜間にトイレに起きる回数が増え、不眠にもつながってしまいます。ふくらはぎを温めて体温が上がると、免疫力も高まり、自律神経やホルモンのバランスも整います。【解説】関博和(せき接骨院院長)

解説者のプロフィール

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関博和(せき・ひろかず)

せき接骨院院長。柔道整復師。健康管理士一般指導員。介護予防運動指導員。姿勢教育指導士。全身の代謝を上げる筋肉調整と骨格の矯正を行う。

ふくらはぎと太ももどちらが温かい?

短パン姿で寝たらギックリ腰になった!

突然ですが皆さん、ご自身の太ももと、ふくらはぎを触って温かさを比べてみてください。「ふくらはぎの方が冷たい」と感じる人が少なからずいらっしゃるでしょう。

もしそうなら、要注意。ふくらはぎの冷えは、「万病の元」といえるからです。

ふくらはぎは、露出の機会が多く、冷えやすい部位です。ことに女性は、スカートで足を出すことが多いと思います。流行りなのか、男女ともに丈が短かく、足首のだいぶ上まで出るパンツをはく人も増えているようです。

ふくらはぎは「第2の心臓」と言われるように、歩くことによる筋肉の収縮で、ポンプのように血液を上に戻す役割をしています。ふくらはぎの筋肉を動かさないと、全身の血液循環が悪くなりますし、水分が下半身にたまって、足がむくみます。

しかも、運動不足でふくらはぎの筋肉量が減れば、筋肉によって産生される熱の量も減り、ますます冷えてきます。

さらに、ヒールなど高い靴をはいたり、すり足で歩く癖があったりすると、ふくらはぎの筋肉が常に緊張して縮こまり、ますます血行不良や冷え、むくみが強くなります。

こうした状態が続けば、全身の不調につながってきます。

私自身、若い頃に夏場、冷房を強くした部屋で短パン姿で足を出して寝ていたら、ぎっくり腰になったことがあります。そのとき、ふくらはぎを触ると、完全に冷え切っていました。

ふっくらはぎの冷えが「頻尿」を起こす

ふくらはぎの冷えは、体に多くの悪影響を及ぼしますが、とりわけ深刻なのが「頻尿」です。

寒くて下半身が冷えると、トイレが近くなる経験は、どなたにもあることでしょう。寒いと、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)のうちの交感神経が優位になり、体温が奪われないように体の表面にある末梢血管を収縮させます。

すると、汗や水蒸気として皮膚から出る水分が減ります。一方で、体の中心部の血流は増え、腎臓にも多くの血液が流れ込みますから、作られる尿の量が増えます。

加えて、ふくらはぎが冷え、むくんだ状態で就寝すると、下半身にたまった水分が寝ている間に腎臓に移動して、尿量がさらに増えます。

その結果、夜間にトイレに起きる回数が増え、睡眠が妨げられ、不眠にもつながってしまいます。

夜間頻尿や足のむくみを改善する方法

夜間頻尿や足のむくみを改善するため、私がお勧めしているのが、ふくらはぎを温めることです。

ふくらはぎ用のサポーターやレッグウォーマーを、できれば入浴時以外は1日中、装用されるといいでしょう。

ふくらはぎの温め方
市販のレッグウォーマーを両足に装用する。
冷えがひどい場合は、レッグウォーマーの上から、使い捨てカイロをはる。
カイロをはる場合は、低温やけどに注意。

画像: 【ふくらはぎの冷えが影響】夜間頻尿や足のむくみを改善する「ふくらはぎの温め方」

ふくらはぎを温めて、夜間頻尿や不眠が改善した方は多くいらっしゃいます。「5回以上もトイレに起きていたが、1~2回に減った」「1回も目覚めることなく、ぐっすり眠れるようになった」などの声も多く聞かれます。「高かった血圧が下がった」という人もいます。

こうした効果があるのは、全身の血行がよくなり、体温が上がるためだと考えられます。

私の接骨院で十数名の方にご協力いただき、ふくらはぎを温めた前後の体温の変化を調べたことがあります。遠赤外線の出る機器(脚温器)で、ふくらはぎを10~15分温め、その前後にわきの下で検温しました。

すると、全員の体温が上がったのです。平均で0.5℃、最高では1.7℃も上昇しました。

体温が上がれば、皮膚表面の血管が開いて血流がよくなります。逆に、腎臓に送られる血流は減り、夜間頻尿が減るというわけです。

また、体温が1℃上がると、基礎代謝(じっとしていても消費されるエネルギー)が12%上がるといわれています。常にふくらはぎを温めていれば、基礎代謝が上がって、やせやすくもなるはずです。

体温が上がると免疫力も高まりますし、自律神経やホルモンのバランスも整います。女性の生理不順や更年期障害、また、男女ともに不妊体質を改善するのにも、ふくらはぎを温めるのは有効です。

寝違えや腰痛を防ぐ

ふくらはぎを温めると、腰など他の部位の筋肉の緊張もゆるむので、腰痛の改善にも役立ちます。冬場は筋肉が硬くなり、背骨の動きが悪くなるため、ぎっくり腰や首の寝違えが増えますが、その予防にも有効です。

画像: この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。

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