解説者のプロフィール

駒形依子(こまがた・よりこ)
こまがた医院院長。東京女子医科大学医学部卒業。米沢市立病院、東京女子医科大学病院産婦人科などを経て、2018年、山形県米沢市に婦人科・漢方内科のこまがた医院を開業。自称「子宮が大好きすぎる産婦人科医」として、西洋医学・東洋医学の双方の視点から診療を行う他、患者が自分で自身を治せる「グレない子宮の作り方」を数多く提案している。『子宮内膜症は自分で治せる』、『子宮筋腫は自分で治せる』(ともにマキノ出版)、『膣の女子力 女医が教える「人には聞けない不調」の治し方』(KADOKAWA)など、著書多数。
▼こまがた医院
更年期の不調の原因は?
「下半身の冷えがひどい」「足が冷えるのに頭はのぼせる」「生理不順、生理痛がつらい」「頻尿がひどくなった」
女性は更年期、つまり閉経前後の時期になると、こういった不調に見舞われるようになります。その時期は、平均的に50歳前後です。個人差があるので、60代になってから起こる方もいます。さらにその後、長く続くケースも少なくありません。
更年期の不調の原因としては、女性ホルモンの分泌が減少し、ホルモンバランスが不安定になることが知られています。直接的な原因として、もう1つ大きな要素があります。それは、「骨盤内の冷え」です。
私たちの体は、体内で発生した熱エネルギーによって温められた血液が巡ることで、体温を保っています。ですから、血液の流れが悪くなったり、流れる量が少なくなると冷えてしまいます。
更年期以降、子宮は冷えやすくなります。なぜなら、更年期を迎えると、子宮は徐々に小さくなって、血液が届きにくくなるからです。
そもそも、子宮は受精卵を育てる「ベッド」の役目を持った臓器であって、閉経によってその大役を終えます。更年期前の成人女性は、月に1回程度は子宮に血液がたくさん集まって、妊娠に適したフカフカな状態を作っています。
しかし、更年期の年代になるとその作用がなくなって、子宮は次第に小さくなります。小さくなることは、体の自然な適応なので問題ありません。問題は、子宮に供給される血液量が一気に減り、行き場を失った血液が上半身に流れ込むことにあります。
多量の血液が上半身で滞ることで、更年期特有の「のぼせ」や、急激なほてりと発汗に襲われる「ホットフラッシュ」などを引き起こすのです。また、手足は冷たいのに上半身が熱くなる「冷えのぼせ」も、これが原因になります。
「骨盤内が冷えるのなら、腹部を温めればいいだろう」と思うかもしれません。しかし、例えば腹部にカイロを当てても、それほど骨盤内は温まりません。それは、脂肪や筋肉、骨などに阻まれ、効率よく熱が伝わらないからです。
特に皮下脂肪は、断熱材の役目をするものなので、その外側から温めても、熱は中に入りにくいのです。
更年期不調をもたらす冷えを効率よく解消する方法「おまたカイロ」
そこで、骨盤内を効率よく温める方法として、お勧めしたいのが「おまたカイロ」です。ここでいう「おまた」とは、会陰部(膣と肛門の間)のこと。会陰部に脂肪はほぼなく、骨もありません。
ですから、ここを温めると、骨盤内に熱をダイレクトに伝えられるのです。
おまたカイロを行うことで、骨盤内の血流がよくなります。すると、ホットフラッシュを引き起こすような血液の溜まりも解消するので、更年期の症状にも効果的です。
子宮内膜症による過多月経と生理痛が改善
おまたカイロは、私の実体験から生まれた健康法です。私は10代の頃から過多月経で、生理痛にも悩まされていました。本来、更年期と違って月経が安定しているはずの年齢ですが、体質やストレスなどが影響して不安定な状態でした。
その後、産婦人科医になり、不調は冷えが元凶だと気づきました。そこで、効率よく骨盤内を温める方法を模索して、たどり着いたのがおまたカイロなのです。続けるうちに月経トラブルが軽減し、20代後半には過多月経が安定して、生理痛もなくなりました。
ぜひ、おまたカイロをお役立てください。
おまたカイロのやり方
<用意するもの>
・ハンカチタオル(使い古したものでよい)…1枚
・はるタイプの使い捨てミニカイロ…1枚
❶ハンカチタオルを広げて、下のイラストの位置に、使い捨てカイロをはる。

❷カイロを包むようにして、ハンカチタオルを3等分に折る。

❸②を、下着とズボンの間に挟む。

<注意>
●電気毛布やこたつなど、局所的に体を温める暖房器具との併用は、低温やけどにつながることがあるので避ける。寝ている際におまたカイロをつけても問題はないが、低温やけどには十分気をつける。
●熱いと感じてきたら、ハンカチタオルを後ろに引っ張ってお尻に当てる(仙骨カイロ)。それでも熱く感じる場合は、はがして腰にはり直すか、諦めてカイロを捨てる。
●トイレに行く際などに、おまたカイロが落ちる可能性がある。下着を脱ぐときには、十分気をつける。
※下のような布ナプキンに挟めば、落ちる可能性はなくなるが、熱くなった際にずらすことができないので注意。

●ゆったりとしたズボンをはいていると、おまたカイロが固定されずに落ちることがある。パンツにとめられる布ナプキンを使う、ガードルをはくなどして対応する。
※スキニージーンズなどのぴったりとしたズボンの場合は、人によってはシルエットが浮き出ることがある。気になる人は、事前に鏡などで確認するとよい。

この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。
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