私も脳梗塞と乳がんという二つの大病を経験しました。だからこそ、病気と闘うために、あるいは治療後速やかに回復するためには、体力が必要だと思うのです。そのために必要な条件の一つに、「血行をよくして、適正な体温を保つこと」があると思います。特に、中高年世代は、冷えの自覚がある人はもちろん、ない人も温活を心がけるに越したことはありません。【体験談】麻木久仁子(タレント・温活指導士)

プロフィール

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麻木久仁子(あさぎ・くにこ)

1962年、東京都生まれ。学習院大学法学部在学中にアルバイト先でスカウトされ、芸能界デビュー。知性派タレントとして、数々のクイズバラエティで「クイズの女王」として活躍する。2010年に脳梗塞を発症、2012年に初期の乳がんが見つかった経験から、食生活を見直すために薬膳を学ぶ。国際薬膳師、国際中医師などの資格を取得し、食を通して「体を温め、免疫力を高める」という考えや食事を多方面で提案している。日本温活協会が主催する通信講座「温活薬膳料理講座」監修。著書に『ゆらいだら、薬膳』(光文社)などがある。

朝に温活をすることで体が活動しやすくなる

更年期以降の女性に多い体の悩みに「冷え」があります。実際、私も50代後半になってからそういった不調を感じるようになりました。

私の場合は、手先や足先が冷たいといった、典型的な症状はありません。しかし、以前と比べると、起床時に体を動かしづらくなりました。活動すべき時間になっても、体が温まらないために、スムーズに動くことができないのです。

そこで始めたのが、「温活(おんかつ)」です。温活とは、冷えやすい体質を改善するために、体を温める活動のことです。

そもそも、中高年世代になると、誰でも体が温まりづらくなります。それはすなわち、血行が悪くなっているということ。そのため、冷えを放置したまま過ごすのはよくありません。

私たちは、どれだけ気をつけようとも、体調をくずすことがあります。私自身も、脳梗塞(脳の血管が詰まる病気)と乳がんという、二つの大病を経験しました。

だからこそ、病気と闘うために、あるいは治療後、速やかに回復するためには、体力が必要だと思うのです。では、どうすれば体力を保つことができるのでしょうか。

そのために必要な条件の一つに、「血行をよくして、適正な体温を保つこと」があると思います。特に、中高年世代は、冷えの自覚がある人はもちろん、ない人も温活を心がけるに越したことはありません。

温活を行う際は、実践する時間帯も重要です。最もお勧めのタイミングは、なんと言っても朝。なぜなら、薬膳や東洋医学の考えでは、朝は「陰から陽に切り替わる時間」とされているからです。

東洋医学では、全ての物事が陰と陽で構成されていると考えます。1日を陰陽に当てはめると、昼は陽で、活動するのに適している時間帯です。一方、夜は陰と考えられ、体を休める時間帯とされています。

そして朝は、体が陰から陽へと切り替わる時間帯。つまり、休息状態から活動状態へと移るために、体にエンジンをかけるタイミングです。

しかし、冷えがあると、体がなかなか温まらないために、エンジンがスムーズにかかりません。そこで、朝に温活をすることによって、素早く体を活動できる状態にするのです。

画像: 朝に温活を行う麻木さん

朝に温活を行う麻木さん

ご飯とみそ汁が朝食に最適なコンビ

ではここで、私が実践している温活を紹介します。私の場合は、体の内側と外側から、それぞれ次のように温めるようにしています。

まずは、内側からの温活についてです。体を内から温めるものといえば、食べ物や飲み物。特に朝は、温かくて消化がよいものを食べるのが基本です。

これを踏まえた上で、薬膳の考え方に沿った、四つの食事のポイントを意識しています。

体を温める食材をとる

薬膳では、食材には体を温めるものと冷やすものがあると考えます。主食で例を挙げるなら、米は体を温める食材で、小麦は体を冷やす食材です。そのため、朝食に最適なのは、パンよりご飯だと言えます。

加えて、冷たい食材もまた、体を冷やすと考えられています。生野菜やヨーグルト、果物などが、これに当てはまります。これらを朝食にとるのは、活動しようとする体に水をかけて、わざわざ冷やしているようなものです。

しかし、パンを主食にすると、こういった冷たい食べ物がつけ合わせになりやすくなります。すると、体を冷やす食材ばかりをとることになり、朝にエンジンがかかりにくくなってしまいます。

そういった点から考えると、ご飯と温かいみそ汁が主体の和食は、朝食に最適な組み合わせです。ちなみに、私自身は、おかゆや野菜たっぷりの汁物を、朝食の定番にしています。

なお、生野菜や果物そのものは、栄養たっぷりの食材ですから、食べること自体は悪くありません。体がしっかり温まっている昼食や、おやつの時間帯にとるといいでしょう。

ただし、どうしても朝に食べたいという場合は、温野菜や焼きリンゴなど、火を通して温かい状態に調理することをお勧めします。

食事の料理は適温にする

薬膳の考え方では、食べ物の温度は、体温に近いものがよいとされています。そのため、冷たいものはもちろん、熱過ぎるものも、なるべくとらないようにしています。

冷たいもので言えば、私は基本的に、冷蔵庫で冷やしたものを食べたり飲んだりしません。コンビニでは常温の飲み物を選びますし、ビールも常温で楽しみます。

熱過ぎるものについては、舌をやけどしそうなほど、高温のものはとらないようにしています。とろ火で体を温めるイメージで、ほどほどの温度のものを食べるようにしています。

スパイス類は少量を使う

手っ取り早く体を温める食材に、トウガラシやニンニクなどの香辛料(スパイス)があります。これらは、陰陽の分類でいうと陽の食材ですが、体内にバランスをとる陰の力があって、初めて健康的に作用します。

ところが、東洋医学では、体内にある陰と陽のエネルギーのどちらもが、加齢とともに減少するといわれています。特に、中高年世代の体は、些細なことで、このバランスが乱れやすくなります。

そのような状態で、陽のエネルギーが強いスパイス類をとると、陰陽のバランスが乱れてしまいます。そのため、のぼせたり、体が乾きやすくなったりしてしまうのです。

また、激辛料理などで、過剰な量をとってしまうのもよくないと考えられます。急に体を温めるため、その反動で、一気に冷えてしまうためです。

もし、スパイスを活用したい場合は、少量にとどめて使うとよいでしょう。また、体を潤わせる作用を持つ、豆腐や貝類、白菜などを同時にとることも心がけてください。

ショウガを活用する

先ほど、スパイス類を使う際の注意点を述べましたが、一つだけ、お勧めしたい食材があります。それは、ショウガです。

薬膳では、生のショウガは体表の冷えをとり、火を通したショウガは臓腑(内臓)を温めるといわれています。どちらも温活に適しているので、体の状態に合わせて、これらを使い分けるとよいでしょう。

生のショウガがお勧めなのは、寒い日に外出して体がブルブルふるえるときや、カゼのひき始めなど。生ショウガをすりおろしたスープや、ショウガ湯をとれば、体の表面の悪寒を取り払ってくれます。

慢性的な冷えや朝の温活に最適なのは、煮込んだショウガ。内臓をしっかり温めることで、体のエンジンをかかりやすくしてくれます。

最後に、これらの条件を踏まえた上で、体の内側からの温活に最適なスープを一つ紹介します。それは、下記にある「スペアリブの温活スープ」です。体を温める食材を使った、簡単でおいしいメニューなので、ぜひ作ってみてください。

スペアリブの温活スープ

画像: スペアリブの温活スープ

体を温める陽の食材である、八角・クローブ・カルダモン・黒コショウと、陰を補うコラーゲンたっぷりのスペアリブが入った、体がポカポカ温まる辛くないスープです。

材料
スペアリブ(骨付き豚バラ肉)……2本
大根……250g
干しシイタケ…2枚
キクラゲ……少々
八角……2個   
クローブ………6個
カルダモン…2個
黒コショウ(粒)…6粒 
しょうゆ…大さじ3
塩……少々
パクチー……少々

鍋にスペアリブとひたひたの水(分量外)を入れて熱し、10分ほど下ゆでする。アクが浮いたら丁寧にとる。
大根は食べやすい大きさに切る。干しシイタケとキクラゲは水で戻す。
鍋にスペアリブと②を入れる(干しシイタケとキクラゲは戻し汁ごと入れる)。
八角、クローブ、カルダモン、黒コショウ、しょうゆを入れ、ひたひたの水(分量外)を注ぎ、弱火で90分煮込む。水がなくなったら足す。
塩で味を調え、パクチーをあしらう。

体の外から温めることで内側の熱を逃さない

次に、体の外側からの温活を紹介します。

食事で内側から体を温めたら、その熱を逃さないように、外からも体を温めることが必要です。その中で、私が朝に実践しているのは、次の二つです。

おなかを温める

おなかには、胃腸をはじめとする、たくさんの臓器があります。そのため、ここを温めることを強く意識しています。

温め方としては、電子レンジで温めて使える、おなか用のカイロを当てています。くり返し使える上、使い方も簡単なため愛用しています。

ちなみに、温活目的ではありませんが、おなかを温めるのと同じタイミングで、顔全体も専用のカイロで温めるようにしています。これを行うと、目がシャキッと大きく開くので、眠気のリフレッシュにも最適です。

熱めのお湯での足湯

時間があるときは、前述のカイロに加えて足湯も行います(上項の写真を参照)。これは、熱めのお湯にくるぶしくらいまでを浸け、2~3分ほど温める方法です。たったこれだけでも血行がよくなり、体にエンジンがかかるのがわかります。

ポイントは、お湯の温度です。ぬるめのお湯に足を浸す足湯は、リラックス効果が高いため、かえって眠気に襲われてしまいます。そのため、朝の温活には不向きだと感じています。

少し「熱い!」と感じる温度のお湯で行えば、心身ともに、エンジンがかかりやすくなるでしょう。

 
朝の温活は、1日を気持ちよくスタートさせることにもつながります。日々を元気に過ごすために、皆さんもぜひお試しください。

画像: この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。

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