私のクリニックでも、コロナ禍になって体温の低い人が増えています。冷えは、むくみ、便秘をはじめ、生理不順や生理痛、ひざや腰の痛み、耳鳴り、めまい、高血圧、糖尿病、緑内障、さらには皮膚の代謝が落ち、シミ、シワ、くすみを増やす原因にもなります。体を温める方法はいろいろありますが、私の一番のお勧めは「腹巻き」です。【解説】石原新菜(イシハラクリニック副院長)

解説者のプロフィール

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石原新菜(いしはら・にいな)

医師。帝京大学医学部卒業後、大学病院での勤務を経て、現在、自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實氏が院長を務めるイシハラクリニックで、漢方医学、自然療法、食事療法により、さまざまな病気の治療に当たっている。雑誌をはじめ、テレビやラジオなどのメディアへの出演が多数。『女のキレイは30分で作れる』(マキノ出版)など著書、監修書も多く手がける。近著、『新装版 カラダの不調が消える奇跡の「腹巻き健康法」 』(ロング新書)が好評発売中。

コロナ冷えとは?

巣ごもり生活で低体温の人が増えている

古来、「冷えは万病の元」と言われますが、本当にその通りで、むくみ、便秘をはじめ、女性であれば生理不順や生理痛を招きます。

他にも、ひざや腰の痛み、耳鳴り、めまい、高血圧、糖尿病、緑内障、さらにはがんと、あらゆる不調や病気が、冷えによってもたらされるのです。

美容にも影響します。冷えると血流が悪くなりますから、皮膚の代謝が落ちます。これは、シミ、シワ、くすみを増やす原因になります。

さまざまな悪影響をもたらす冷えですが、長引くコロナ禍で巣ごもり生活が続き、体が冷えている方が増えています。私は、このような体の冷えを「コロナ冷え」と呼んでいます。

私のクリニックでも、コロナ禍になって体温の低い人が増えています。平熱が35℃台の人も珍しくなく、34℃台の人もちらほらと見かけるようになりました。

主な原因は「運動不足」と「ストレス」

コロナ冷えの原因は、いろいろありますが、第一に運動不足が挙げられます。

感染拡大を避けるため、散歩やジム通いを控える方が増えました。体を動かすと汗が出てポカポカと温まりますが、動かさないと冷えてしまいます。さらに、筋肉量も低下するので、熱産生が悪くなることも冷えを招きます。

ストレスも問題です。「離れて暮らす家族や友人に会えない」「どこにも行けない」といったストレスを抱え続けると、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)のうち、交感神経の働きが優位になります。

すると、末梢血管が収縮して、血流が悪くなるので、手足が冷えてしまいます。これが、冒頭で挙げたような不調や病気の原因となるのです。

冷えによって太る方もいます。全身の各細胞には、ミトコンドリアという小さな器官が存在します。ミトコンドリアが、血流とともに運ばれる糖や脂肪をエネルギーに変えることで、私たちは生命活動を維持できています。

ところが、糖や脂肪が行き渡らなくなれば、内臓や筋肉の働きが落ち、基礎代謝が下がります。これが、肥満をもたらすのです。

「コロナ禍で太った」という声が増えましたが、これは単なる運動不足だけではなく、このような冷えの影響も加味して考える必要があります。

冷えは、血液だけでなく気(生命エネルギーの一種)の流れも悪くします。気の流れが悪いと、精神面に悪影響が現れやすく、うつ(うつ症状)、不眠、不安などが生じます。ギスギスした人間関係は、もしかしたら冷えがもたらす気の流れの悪化かもしれませんよ。

水の飲み過ぎも「冷え」の原因に!

1日2Lを目安に取りすぎないようにする

もう一つ、血液と気の流れと合わせて考えたいのが、水分のことです。もともと、東洋医学では、「気血水」の流れが健康を決めると考えていて、この3つはセットになっています。

水は、不足することも問題ですが、とり過ぎもよくありません。

近年、水はカロリーや糖質を含んでいないこともあって、健康志向の高い方が好んで飲むようになりました。水のイメージがよくなったために、飲めば飲むほど、血液がサラサラになって、体内の老廃物や毒素も排出できると勘違いしている方も大勢います。

しかし、排泄できる量を上回るほどに大量に水を飲むと、体内にたまってしまいます。

この状態を、東洋医学では「水毒」と呼びます。水毒になると、ビショビショになった服を着こんでいるような状態なので、当然体が冷えます。ですから、水は1日2Lまでを目安にしてとり過ぎないようにしてください。

体を冷やす食べ物にも注意

冷えは、陰性食品(東洋医学で体を冷やすと考えられる食べ物)の食べ過ぎによっても起こります。陰性食品の代表的なものとしては、

・生もの(生野菜、果物、生魚など)
・冷たいもの(ジュース類、牛乳、アイスクリームなど)
・白砂糖(ケーキなど)
・酢
・暑い時期や南の地方でとれる作物(トマト、バナナなど)
があります。こういったものは、冬場はたくさんとらないようにするとよいでしょう。

冷え対策に「腹巻き」がおすすめ

体温が1℃上がると、代謝が12%、免疫が30%上がる

冷え対策には、体を温めることも有効です。体を温める方法はいろいろありますが、私の一番のお勧めは、「腹巻き」です。

腹巻きの効用については次項でお話ししますが、私自身が10kgやせて、平熱も1℃上がりました。見た目もすっきりしました。

私のクリニックでも、患者さんに実践してもらっています。2週間で0.5℃、1ヵ月で1℃平熱が上がる人も大勢います。2週間で、1℃上がった人もいました。

体温が1℃上がると、代謝が12%、免疫が30%上がると言われています。それだけで太りにくくなり、さまざまな病気にかかりにくくなります。

画像: 体を温めて10kgのダイエットに成功!

体を温めて10kgのダイエットに成功!

私も15年以上前から腹巻を愛用

止まった生理が戻り平熱は大幅にアップ!

私は、15年以上前から腹巻きを愛用し、おなかを温めてきました。きっかけは、私自身の絶不調でした。まずは、その体験からお話ししますね。

私は高校生の頃まで、父(医師の石原結實)の教えに従って、腹巻きをしたり、真っ赤になるまで風呂につかったり、運動をしたりしていました。冷えこそ万病の元と考えていた父は、日常的に体を温める術を私たちに教えていたのです。

ところが、受験のために実家を離れた私は、そんなことはすっかり忘れ、むしろ体を冷やす生活を送っていました。運動はせず、風呂はシャワーのみ。大学入学後はコーヒーやビールをがぶ飲みしました。

いわゆる「青春」を謳歌していたので、古臭いイメージのある腹巻きなんて、するわけがありません。

研修医になると、時間に追われる過酷な生活が続きました。結果、体調がどんどん悪くなったのです。頭痛、肩こり、めまい、吐き気、便秘、切れ痔、多汗症、巨大ニキビ、花粉症……。気がつけば、48kgだった体重は10kg以上増えて60kgになっていました。そして、生理も止まってしまったのです。

このままでは大変と、すぐに父にSOSを出しました。返ってきた返事は、「腹巻き、運動、風呂」といった、高校時代までの父の教えでした。そして、10枚以上の大量の腹巻きが送られてきたのです。

それから現在に至るまで、24時間、1日も欠かさず腹巻きを着用しています。もちろん、体を冷やす飲食物を避け、風呂で温まり、ジョギングなどの運動も行っています。

そうした生活を心がけるようになって、みるみるうちに体調が改善! 半年後には生理が戻り、肥満傾向も止まりました。1年足らずのうちに体重は10kg減少したのです。

そして、先ほど挙げた全ての不定愁訴が解消しました。ギリギリ36℃だった体温も1℃近く上がって、平熱は36.9℃になりました。

不調と肥満の本当の原因は、過酷な仕事ではなく、私自身が招いた「冷え」にあったのです。もし、それを放置していたら、「未病」から本当の病気に進んでいたかもしれません。

この冷えの改善に、絶大な力を発揮したのが腹巻きです。なぜ腹巻きがいいのかといえば、体の中心である「おなか(お中)」を温めてくれるからです。

おなかには、脳、心臓、肺以外の全ての臓器が集まっています。これらの臓器が元気に働くことが、健康につながるわけですから、まず温めておなかの血流をよくすることが大事です。

血流がよくなれば、各臓器の細胞に栄養や酸素が運ばれるとともに、老廃物も回収されますから、細胞自体が活性化します。

それに、おなかは大量の血液が出入りしているので、温めれば、温かい血液が全身を巡ります。血液が体内を一巡する速さは、わずか45秒。即座に手足の先まで体が温まります。

腸が温まると免疫力が高まる!

おなかを温める利点はもう一つあります。それは、体内屈指の免疫器官といえる腸を活性化させられることです。

腸には、パイエル板と呼ばれる小さなリンパ節(体内の老廃物や疲労物質を回収し運ぶリンパ管が合流するところ)の集まりがあります。そこには、免疫の要となるリンパ球(病原体を攻撃する白血球の成分の一種)が集結しています。その数は、全身の約7割にのぼるといわれています。

腸が冷えると、リンパ球はうまく働きませんが、温めることで活性化し、結果的に免疫力が高まります。

私は、体が冷えている患者さんには必ず腹巻きを勧めています。すると、ほぼ例外なく、体調がよくなります。その例を紹介しましょう。

Aさん(50代女性)は初診時、4cm大のチョコレート嚢胞(卵巣内で血液が固まる病気)と6cm大の子宮筋腫があり、不正出血が続いていました。平熱も低かったので、腹巻きを勧め、体を冷やさない生活をアドバイスしました。

すると、ほどなく不正出血が止まり、10ヵ月後の検査では、チョコレート嚢胞が消失。その半年後には、6cmあった子宮筋腫が4cmに縮小し、医師もびっくりしたそうです。

Bさん(30代男性)は、腹巻きをするようになって、93kgあった体重(身長184cm)が85kgまで落ち、140mmHgと高めだった血圧が120mmHg台に下がって安定しました。頭痛やめまいが消え、痔までよくなったと喜んでいました。

血糖値が高めだったCさん(60代女性)は、主治医から減量を勧められていました。ところが、食事制限は難しいと言うので、腹巻きでおなかを温めるようにアドバイスしました。すると、たちどころに便秘が解消し、6kgも体重が減りました。また、血糖値も下がったとお喜びでした。

他にも、「73kgから10kg減量できた」「生理痛が和らいだ」「便秘、下痢が改善した」など、多くの方が腹巻きの効果を実感しています。

腹巻きの上に使い捨てカイロをはるのもおすすめ

なお、腹巻きは高いものでなくて結構です。お持ちのものをお使いください。一日中巻いていても構いません。より効果的におなかを温めるために、腹巻きの上のへその部分に使い捨てカイロをはるのもお勧めです。

画像: コロナ禍で〈冷え〉を訴える人が急増!?巣ごもり生活の代償「コロナ冷え」にご用心!

効果的なおなかの温め方
腹巻きの大きさや素材は問わない。腹巻きをした上から、使い捨てカイロをする(へその位置)とより効果的に温められる。
※使い捨てカイロを使う際は、低温やけどに注意する。

画像: この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。

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