血液をサラサラに保つ食品として、タマネギなどもよく知られていますが、血栓を溶かす働きのある食品は、納豆だけしか確認されていません。世界中で研究が進められており、その中には、脳梗塞などの緊急時に用いられる血栓溶解薬(t-PA)よりも、ナットウキナーゼの方が作用が強いという報告もあります。【解説】二宮淳一(心臓血管外科名誉専門医)

解説者のプロフィール

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二宮淳一(にのみや・じゅんいち)

心臓血管外科名誉専門医。1977年、日本医科大学大学院医学研究科卒業。79年、米国トロント大学心臓血管外科へ留学。循環器・脈管専門医として、生後数時間の新生児から90歳代までの心臓血管外科の手術を手がけている。

血栓の主成分であるフィブリンを溶かす

納豆には、ドロドロの血液によって血管内にできた血栓(血液の塊)を溶かす働きがあります。血液の凝固を抑制し、血液をサラサラに保つ食品として、タマネギなどもよく知られていますが、血栓を溶かす働きのある食品は、納豆だけしか確認されていません。

納豆のネバネバ部分には「ナットウキナーゼ」という酵素(体内での化学変化を促進する物質)が含まれています。血栓を溶かすのは、このナットウキナーゼの働きです。

私たちの体は、皮膚に傷がつくと、血液を固めてかさぶたを作り、傷口を修復します。これと同様に、血管の内部に小さな傷ができたときも、血液が凝固して(血栓ができて)、傷口が修復されます。

健康な状態であれば、血管の傷口が修復されると、体は血栓を溶かす酵素を分泌します。しかし、加齢やストレスなどでこの働きが衰えると、血栓が溶けきれずに残り、血管を詰まらせてしまうのです。脳梗塞や心筋梗塞は、脳や心臓の血管に血栓が詰まることで発症します。

血栓の主成分は「フィブリン」というたんぱく質です。納豆に含まれるナットウキナーゼには、このフィブリンを溶かす働きがあります。

1980年に日本人研究者に発見されて以来、ナットウキナーゼは世界中で研究が進められています。その中には、脳梗塞などの緊急時に用いられる血栓溶解薬(t-PA)よりも、ナットウキナーゼの方が血栓を溶かす作用が強いという報告もあります。

私もかつて、ナットウキナーゼに関する研究・臨床試験を行いました。シャーレの中に人工的に培養した血栓の成分を満たし、そこへナットウキナーゼを垂らしたのです。このときは、3時間ほどで、ナットウキナーゼが血栓成分を溶かす様子が目で確認できました。

画像: ナットウキナーゼと市販の納豆とのフィブリン血栓分解力の比較 ナットウキナーゼ(シャーレ内の左)と市販の納豆(同右)の血栓分解能の比較を試験者3名で行った結果、いずれもナットウキナーゼによる分解能が優れていることが判明。

ナットウキナーゼと市販の納豆とのフィブリン血栓分解力の比較
ナットウキナーゼ(シャーレ内の左)と市販の納豆(同右)の血栓分解能の比較を試験者3名で行った結果、いずれもナットウキナーゼによる分解能が優れていることが判明。

血栓が溶ければ、脳梗塞や心筋梗塞などの予防につながります。また、血液の流れがよくなります。そのため、高血圧の改善も期待できるのです。

血圧を上昇させる酵素の働きを抑える

読者の中には、納豆が健康維持に向かないという人もいるでしょう。例えば、血栓症の既往歴があり、血液を固まりにくくする薬のワルファリン(商品名・ワーファリンなど)を処方されている人は、医師に納豆を避けるように言われているはずです。

これは、納豆に多く含まれるビタミンK2がワルファリンの働きを弱めてしまうからです。

他にも、納豆はプリン体が多く、痛風の患者さんには積極的にお勧めできません。カリウムも多いため、重い腎臓病の人も避けた方がよいでしょう。納豆独特の風味がそもそも苦手という人もいます。

そんな人々には、ナットウキナーゼだけを抽出した健康食品の利用がお勧めです。ナットウキナーゼだけであれば、前述したワルファリンの働きを弱めることはありません。

以前私は、ワルファリンを服用する心臓血管病の患者さん60人に、ナットウキナーゼの健康食品を併用してもらったことがあります。この臨床試験では、ナットウキナーゼを併用しても、ワルファリンは安定して働くことが確認できました。

協力してもらった患者さんの中には71歳以上の高齢者や、アレルギー疾患、糖尿病、肝障害などの合併症を持つ人もいましたが、副作用は確認されていません。

この結果を得て、私は、狭心症や心筋梗塞、手術で心臓に弁を入れた患者さんなどにもナットウキナーゼの健康食品の併用を勧めています。その結果、皆さん安定した効果を得ており、副作用の報告もありません。

近年では、ナットウキナーゼは、血栓の主成分であるフィブリンを直接溶かすだけでなく、体内で血栓を溶かす酵素を作る細胞を増やしたり、血圧を上昇させる酵素の働きを抑えたりする作用があることもわかってきました。

日本ナットウキナーゼ協会では、健康維持を目的とした場合の1日のナットウキナーゼ推奨量は2000FU以上としています。市販の納豆1パック(約50グラム)に含まれるナットウキナーゼは、およそ1500FUです。※FU:ナットウキナーゼの活性を示す単位

ただ、納豆は発酵食品という性格上、商品によって含まれるナットウキナーゼの量が異なります。毎日安定した量のナットウキナーゼをとりたい人、プリン体による痛風や腎臓病などが気になる人には、健康食品の利用をお勧めします。

その場合、他の成分を含まない、ナットウキナーゼ単体の健康食品を選べば、効果を実感しやすいでしょう。

画像: この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。

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