タマネギは昔から薬用野菜として重用されてきました。高血圧や糖尿病、動脈硬化など生活習慣病の予防から、ダイエット、美肌効果まで、幅広い効能を持っているのです。この効能を余すところなく得るためにはまず、細かく切ること。次に、切ったら20分ほど放置すること。水にさらすのはNGです。【解説】石原新菜(イシハラクリニック副院長)

解説者のプロフィール

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石原新菜(いしはら・にいな)

医師。帝京大学医学部卒業後、大学病院での勤務を経て、現在、自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實氏が院長を務めるイシハラクリニックで、漢方医学、自然療法、食事療法により、さまざまな病気の治療に当たっている。雑誌をはじめ、テレビやラジオなどのメディアへの出演が多数。『女のキレイは30分で作れる』(マキノ出版)など著書、監修書も多く手がける。近著、『新装版 カラダの不調が消える奇跡の「腹巻き健康法」 』(ロング新書)が好評発売中。

2つのファイトケミカルが血管の老化を防ぐ

タマネギはいろいろな料理に使える上に、保存がきくので、常備しているご家庭も多いでしょう。わが家でも、切らしたことがありません。

タマネギは便利でおいしい家庭野菜である一方、昔から薬用野菜として重用されてきました。ニンニク、ネギ、ラッキョウ、ニラなどと同じヒガンバナ科ネギ属に属し、仏門では禁忌とされていたそうです。あの強い臭いもさることながら、精のつく野菜は修行の妨げになると、避けられたのでしょう。

逆に言えば、それだけ強い薬効を持っているのです。

実際にタマネギには、多彩な有効成分が含まれています。その代表ともいえるのが、2種類のファイトケミカル。ファイトケミカルとは、紫外線や虫、カビなど、植物にとって有害なものから自分を守るために作り出される成分で、色素や香り、苦味、アクなどがあります。

その一つが、硫黄化合物のイソアリインです。

これはタマネギの辛味成分で、アリイナーゼという酵素と反応するとアリシンに変わります。アリシンには、毛細血管を広げて血流をよくしたり、血液をサラサラにしたりする作用があります。これがタマネギの血圧を下げる効果につながっています。

また、血糖値の上昇を抑制したり、LDL(悪玉)コレステロール値を下げたりする作用も報告されています。

さらに、アリシンがビタミンB1と結合すると、アリチアミンという物質に変わります。これが糖質を効率的にエネルギーに変え、疲労回復に役立ちます。ビタミンB1は豚肉に多い成分。ですから、豚肉とタマネギは、味だけでなく効能的にも相性がいいのです。

タマネギには、イソアリイン以外にも多種類の硫黄化合物が含まれていて、その数も量もニンニクを上回るそうです。

もう一つは、ケルセチンです。これは黄色い色素で、外側の茶色い皮に多いですが、可食部の白い部分にも含まれています。

強い抗酸化作用があり、活性酸素の害から血管や体の組織を守って、老化やがんを防いでくれます。血管の老化が抑えられて柔軟性が維持されれば、動脈硬化の予防になります。

また、ケルセチンにもコレステロール値を改善したり、アレルギーを抑えたりする作用があります。

切ってしばらく放置するのが賢いとり方

この2大成分以外に注目したいのが、グルタチオン、オリゴ糖、食物繊維です。

グルタチオンは、3つのアミノ酸がつながったペプチドで、抗酸化作用があり、肌の老化を抑えるアンチエイジング効果が知られています。

オリゴ糖食物繊維は、善玉菌のエサになって善玉菌を増やします。ですから腸内環境がよくなり、便秘や下痢が改善します。また善玉菌が増える過程で、短鎖脂肪酸が作られます。短鎖脂肪酸は大腸粘膜を健康にし、炎症を抑えるなど、さまざまな機能を持っています。

タマネギに多い水溶性食物繊維は、腸からの糖や脂肪の吸収を抑えるので、ダイエットにも有効です。

画像: 【タマネギの健康効果】血液をサラサラにして生活習慣病を予防・改善  ダイエットや老化防止にも役立つ

タマネギに含まれる主な有効成分とその作用

イソアリイン
酵素と反応してアリシンに変わり、血液をサラサラにして血圧を下げる。

ケルセチン
強い抗酸化作用があり、活性酸素から血管や体の組織を守って、老化やがんを防ぐ効果が期待できる。

グルタチオン
抗酸化作用があり、肌の老化を抑えるアンチエイジング効果が知られている。

オリゴ糖と食物繊維
腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整え、便秘や下痢を改善させる。

このように高血圧や糖尿病、動脈硬化など生活習慣病の予防から、ダイエット、美肌効果まで、タマネギは幅広い効能を持っているのです。

この効能を余すところなく得るために、調理の際にちょっとした注意を払ってください。

まず、タマネギを細かく切ること。細かく切るほど、アリシンが増えます。アリシンの元になるイソアリインと、それを分解するアリイナーゼは、細胞の中の別々のところに存在しています。この2つが出合ってアリシンに変わるには、なるべく細かく切って、細胞を壊す必要があるのです。

次に、切ったらしばらく(20分ほど)放置すること。その間にイソアリシンがアリイナーゼと反応し、アリシンに変わります。酵素は熱に弱く、タマネギを切ってすぐ加熱すると、アリイナーゼが不活性化してアリインが作られませんが、アリシンに変われば加熱しても大丈夫。

また、タマネギを生で食べる時、辛味や刺激臭を取るため水にさらす人がいますが、これはNG。水にさらすと、アリシンや水溶性食物繊維といった成分が失われてしまいます。水にさらさなくても、切ってしばらく放置すれば、辛味が消えて食べやすくなります。

タマネギの薬効を高めるコツ

タマネギは細かく切る
アリシンの元となるイソアリインと、それを分解するアリイナーゼは、細胞内の別々のところに存在するので、なるべく細かく切り、細胞を壊す必要がある。

切ったら20分ほど放置する
20分ほどの間にイソアリシンがアリイナーゼと反応し、アリシンに変わる。

水にさらすのはNG
水にさらすと、アリシンや水溶性食物繊維といった成分が失われてしまう。

画像: この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年3月号に掲載されています。

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