市販の鎮痛剤が効くのは、肩や首のコリなど、筋肉の緊張が持続することで起こる「緊張型頭痛」です。脳血管の拡張が主な原因で起こる「片頭痛」に効くトリプタン製剤には、医師の処方が必要です。症状に合った薬を使用することで、痛みが取れ、結果的に使う薬の量も減らせます。【解説】大和田潔(あきはばら駅クリニック院長)

解説者のプロフィール

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大和田潔(おおわだ・きよし)

あきはばら駅クリニック院長。1991年、福島県立医科大学卒業後、東京医科歯科大学神経内科に入局。東京都立広尾病院などで救急診療を担当後、東京医科歯科大学大学院で基礎医学研究を修める。青山病院医長を経て、2007年にあきはばら駅クリニックを開院。頭痛専門医、神経内科専門医、総合内科専門医、東京医科歯科大学臨床教授、米国内科学会会員、医学博士。最新の著書は『「コロナ治療放置」は人災が招いた』(ビジネス社)。
▼あきはばら駅クリニック(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

片頭痛に市販の鎮痛薬はあまり効かない

頭痛薬や鎮痛剤は、多くの人にとって、最も身近な薬ではないでしょうか。家庭の救急箱にも必ず入っています。市販もされている手軽な薬だからこそ、使い方には注意が必要です。

私は神経内科が専門で、頭痛も専門領域です。さまざまな痛みを抱えるかたがクリニックを訪れます。痛み止めとのつきあい方について、まずは頭痛からお話ししましょう。

頭痛は一般に、「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の三つに分類されます。群発頭痛は少し特殊なので、ここでは片頭痛と緊張型頭痛を取り上げます。

片頭痛は、比較的女性に多い頭痛です。月経に関連して起こりやすいので、最も多い年代は20~40代ですが、中高年でも多くの人が悩まされています。

頭がズキンズキンと脈打つようなひどい頭痛は、ほぼ片頭痛と考えていいでしょう。というのも、片頭痛は脳血管の拡張が主な原因だからです。血管の周りの三叉神経という部分が刺激を受け、痛みが発生します。痛みは頭の片側とは限りません。

一方、緊張型頭痛は、肩や首のコリなど、筋肉の緊張が持続することで起こります。心因的な場合もあります。

自分の頭痛のタイプを知っておくことは重要です。なぜなら片頭痛に効くのは「トリプタン製剤」という薬で、市販の鎮痛剤はさほど効かないからです。

いわゆる市販の鎮痛剤が効くのは、緊張型です。片頭痛と併発する場合も多いので、痛みの一部に市販薬が効くこともあります。あまり効かないと思ったら、頭痛外来を受診しましょう。

トリプタン製剤は、鎮痛剤ではなく脳の血管と神経に作用する薬です。医師の処方が必要ですが、症状に合った薬を使用することで、痛みが取れ、結果的に使う薬の量も減らせます。

脳を休ませるだけで薬を減らせた人が多数

薬に頼らないためには、脳を休ませることが重要です。

仕事などストレスを減らす
夜はスマホやテレビ、パソコンをやめて早寝し、7時間ほどしっかり睡眠をとる

たったこれだけで頭痛がよくなり、薬を減らせた患者さんがおおぜいいます。

例えば、50代の女性は、親の介護と子供の受験、自分の仕事も大変で、三重苦でした。けれども、会社を休職し、デイサービスを探して親の世話を任せ、子供の受験は夫に動いてもらうことで、睡眠時間を確保。すっかり症状がよくなりました。

さて、頭痛以外の痛み止めについても触れておきましょう。

近年、整形外科を中心によく使われるようになった薬に、アセトアミノフェンとトラマドール塩酸塩をセットにした配合剤があります。

アセトアミノフェンは市販の鎮痛剤にも使われますが、トラマドール塩酸塩は市販されていません。医療用麻薬にこそ該当しませんが、オピオイドといって、モルヒネの仲間なのです。

中枢神経や末梢神経に働きかけることからよく効く一方で、長期にわたって使用すると多くの副作用や依存性が生じるリスクがあります。

また、同様によく使われるのが、プレガバリンという成分の薬。これは神経障害性のピリピリとした痛みに有効です。

ただやはり、これも副作用に注意すべき点があります。服用を急に中止することで、不眠、悪心(むかつき)、頭痛、不安などの離脱症状が出現する可能性が指摘されているのです。

トラマドール塩酸塩の配合剤やプレガバリンは、よく効くだけに、つい頼ってしまいがち。それが、乱用を助長する側面もあると覚えておきましょう。

頭にせよ、別の部位にせよ、痛みというのは体が危険を察知しているセンサーです。なぜ痛むのか、原因を探り、それを取り除かない以上、根本的な解決にはならないと考えます。

頭痛外来では、薬も処方されますし、頭痛を治すコツも教えてもらえます。けれども、いくら凄腕の名医がいたとしても、あなたの体のコントロールはできません。まずは薬の前に、生活環境を整えてみましょう。

 

画像: 【頭痛薬・鎮痛剤】片頭痛と緊張型頭痛では効く薬が違う  痛みの原因を取り除くべく生活環境を見直そう

痛み止めは適切に使い分けを!

一般的な市販の鎮痛剤(非オピオイド鎮痛薬)
非ステロイド性抗炎症薬(成分名)
アスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェン、エテンザミド、イソプロピルアンチピリンなど
アセトアミノフェン製剤

処方される鎮痛剤以外の薬
トリプタン製剤
鎮痛剤ではなく脳内の血管や神経、脳に作用する片頭痛の専用薬。

処方される鎮痛剤で注意が必要な薬(一部)
トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合錠
トラマドールは弱オピオイド鎮痛成分。モルヒネより依存性が少ないため医療用麻薬には該当しないが、非オピオイド鎮痛薬よりは鎮痛作用が強い。依存性のリスクもある。これにアセトアミノフェンを配合した薬剤。
プレガバリン
神経障害性または線維筋痛症に伴う痛みに特化した鎮痛補助薬。依存性がある。

大量・長期服用により依存性が現れる薬もあり、勝手にやめると離脱症状が出て危険。必ず専門医に相談しながら減薬を進めること。

画像: この記事は『壮快』2022年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年3月号に掲載されています。

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