感染症予防効果が期待されたのでしょう、コロナ禍において、納豆は売り上げを伸ばしているといわれます。他にも血栓を溶かす作用、慢性炎症を抑える効果など、優れた効能が多くのかたに知られるようになってきました。また、メラニンの産生を阻害するという新しい研究も発表。美肌の効果が期待できるというわけです。【解説】須見洋行(倉敷芸術科学大学名誉教授)

解説者のプロフィール

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須見洋行(すみ・ひろゆき)

倉敷芸術科学大学名誉教授。1945年、奈良県生まれ。74年、徳島大学医学部大学院修了。宮崎医科大学(現宮崎大学)生理学助教授、倉敷芸術科学大学教授などを経て、現職。シカゴ大学マイケルリース研究所で研究中、血栓溶解に働く「プロウロキナーゼ」「ナットウキナーゼ」を発見。納豆研究の第一人者。著者に『納豆は効く 解明された納豆パワーの秘密』(ダイナミックセラーズ出版)など多数。▼専門分野と研究論文(CiNii)

コロナ禍で納豆の売り上げが伸びている理由

コロナ禍において、納豆は以前よりも、2~3割売り上げを伸ばしているといわれています。納豆による感染症予防効果が期待されたのでしょう。しかしそれだけではなく、納豆の優れた効能が多くのかたに知られるようになってきたことも、近年の人気拡大につながっていると考えられます。

ここでは、私が長年研究してきた納豆の豊富な健康効果について、わかりやすくお話ししましょう。

感染症の予防効果

納豆には、強い抗菌作用、抗ウイルス作用があります。病原性大腸菌О‐157に対しても抑制効果が判明しているほか、インフルエンザウイルスの予防効果も期待できます。

新型コロナウイルスに対する納豆の予防効果についても、さまざまな研究がなされているようです。今後、さらなる予防効果が認められることも、期待できるでしょう。

血栓を溶かす作用

これは、私自身の納豆研究のスタートラインとなったものです。1980年代シカゴ大学で血栓(血の塊)の研究をしていた私は、大豆のたんぱく質を分解する納豆菌の働きに興味を持ちました。

納豆を調べてみると、ほかの血栓溶解酵素よりも、はるかに短時間で、多くの血栓を溶かす物質が見つかったのです。その酵素が「ナットウキナーゼ」でした。

私は長年、このナットウキナーゼの作用について、研究を続けてきました。そして、近年の研究で、ナットウキナーゼが血管内皮細胞からtPAという物質の分泌を促すことを突き止めました。

tPAは、脳梗塞の緊急治療時、脳に詰まった血栓を溶かすためにも使われる物質です。このtPAは、ふだん血管内で産生されていますが、納豆を食べ、ナットウキナーゼを摂取することにより、より多くのtPAが血管内で産生されるとわかったのです。

これにより、よくいわれる、「血液がサラサラになる」作用が生じる、というわけです。この納豆の血液サラサラ効果が、脳卒中や心筋梗塞などの予防に役立つことはいうまでもありません。

ちなみに、認知症の原因の約2割を占めるのが、脳血管の障害によるものです。ナットウキナーゼで心・血管障害を予防できれば、認知症予防の効果ももたらすでしょう。

また、納豆菌によって産生される香気成分のピラジン化合物は、血液中の血小板の凝集抑制作用があり、これも、血液サラサラ効果を高めてくれます。

ビタミン・ミネラルが豊富

納豆は、肝臓の働きを助けるビタミンB2、貧血を防ぐB12、老化予防に役立つビタミンEといったビタミン類が豊富です。なかでも、ビタミンK2は、動脈硬化や骨粗鬆症の予防効果があり、若さと骨の健康を保つうえで重要な働きを持つことがわかってきました。

納豆はミネラルも豊富。カルシウムやマグネシウム、鉄、カリウムなどのミネラルが体の機能の維持を助けてくれます。

慢性炎症を抑える効果

納豆に含まれるたんぱく質の一つ、ポリアミンには、体内の慢性炎症を抑制し、細胞の代謝を活性化する働きがあります。これにより、動脈硬化やアレルギー疾患の予防、老化を遅らせる効果などが期待できます。

血液や血管、腸を健康にする

生活習慣病の予防・改善

ここまで説明してきた要因が、生活習慣病に対しても、よい働きをもたらします。

ナットウキナーゼによって血液がサラサラになりビタミンK2やポリアミンが動脈硬化を抑制すれば、弾力のある血管内にサラサラの血液が流れることになります。それが高血圧の予防にもなるのです。

また、納豆の摂取は、コレステロール値を下げる効果があることは、マウスの実験でも確かめられています。さらに、納豆の食物繊維が腸からの糖の吸収を抑制して、血糖値の上昇を緩やかにします。

近年、生活習慣病の基盤病態に慢性炎症があると考えられるようになってきました。先述した炎症を抑える効果によっても、生活習慣病の予防・改善ができるというわけです。

腸内環境の改善

納豆菌や、納豆に豊富な水溶性食物繊維の働きによって、腸内環境が改善します。すると、腸の動きがよくなり、便秘が改善し、消化・吸収もよくなります。腸内環境がよくなれば、免疫力アップにもつながるでしょう。

女性ホルモン様効果

納豆の大豆イソフラボンには、女性ホルモンと似た働きがあります。女性は閉経後、女性ホルモンが急減する結果、さまざまな不定愁訴に襲われます。

頭痛、ほてり、イライラ、動悸、めまいなど、いろいろな症状がありますが、納豆の大豆イソフラボンは、女性ホルモンに似た働きをして、この不定愁訴を和らげる効果があります。

美肌効果

近年、ナットウキナーゼがメラニン(肌や毛髪の色を決める黒色色素)の産生を阻害するという新しい研究が発表されています。納豆をとると、メラニンの産生が抑制され、美肌の効果が期待できるというわけです。

画像: 美肌効果も期待できる!

美肌効果も期待できる!

製造日の古い物を買うのがお勧め

納豆には、このように多くの効能があります。とはいえ、一度に5~6パックとるといった、食べ過ぎはよくありません。1食につき1~2パック程度と、適量を心掛けてください

ちなみに、納豆の有効成分であるナットウキナーゼは、その効果が長く持続するという特長があります。心筋梗塞に使われる注射薬が血栓を溶解する効果は4~20分。一方、ナットウキナーゼは、8~12時間も作用し続けます。

つまり、納豆は半日ほど間をおいて食べても、ナットウキナーゼの効果を一日中行き渡らせることができるのです。

また、納豆の有効成分の効能を生かすという点では、スーパーなどの売場に並んだ商品のなかから、製造日の古い物を買うほうがいいでしょう。

私は、新しい物でも、2~3日おいてから食べています。その間に発酵が進み、ナットウキナーゼやポリアミンなどの有効成分がより増えると考えられるからです。

私自身は1日3食納豆を食べています。お気に入りは、お酒を飲んだあとに、ご飯に納豆をのせ、ネギを散らして作る納豆茶漬け。とてもおいしいので、ぜひ一度お試しください。

画像: 【納豆の健康効果】感染症予防の研究が進行中  生活習慣病や老化、アレルギー対策におすすめの優秀食材

納豆に期待できる主な健康効果
感染症の予防
血栓を溶かす
生活習慣病の予防、改善
動脈硬化の予防
アレルギー疾患の予防
腸内環境の改善
不定愁訴の緩和
美肌効果

画像: この記事は『壮快』2022年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年3月号に掲載されています。

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