解説者のプロフィール

髙橋えみ子(たかはし・えみこ)
メンタルクリニック赤とんぼ院長。1985年、金沢医科大学医学部卒業。以降、都立大塚病院など複数の病院にて小児科医として勤務するかたわら、家族療法家であり小児科医でもある木下敏子医師の下でカウンセラーとして研鑽を積む。2009年、東京都北区にて、心療内科メンタルクリニック赤とんぼを開院。薬だけに頼らない、心のよりどころとなる診療に励んでいる。
▼メンタルクリニック赤とんぼ(公式サイト)
※ハチミツは1歳以下の乳児には与えないでください。
ショウガはちみつ紅茶で心が穏やかになり疲れが消える
私は、熊野けい子先生(別記事参照)が駒込で開いていた体操教室の生徒でした。
[別記事:75歳バレリーナが飲み続けて30年!体が温まる「生姜はちみつ」→]
今から5年ほど前のことになりますが、以前から患っていた脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアが悪化し、診療時にイスから立ち上がるのさえつらい時期がありました。整形外科の担当医からは、「今度動けなくなくなったら、手術だね」といわれていました。
それが、熊野先生から教えていただいた体操を続けていたところ、状態が改善して、動けるようになったのです。それに加え、私自身の医療に対する考え方と、熊野先生の病気に対する取り組みが一致するとも感じていました。
私は、2009年に東京都北区十条にメンタルクリニックを開き、心の悩みを抱えた患者さんを診てきました。そこで、「うちの患者さんのために、十条で体操を教えてもらえませんか」と熊野先生に思い切って依頼してみたのです。
先生にご快諾いただき、2018年からは、十条でも熊野先生の体操教室が始まりました。当院に通っている患者さんにも、先生の体操教室を、治療の一環として勧めています。
熊野先生から教えていただいたことはたくさんありますが、そのなかの一つが「ショウガはちみつ」です。
私自身は、このショウガはちみつを、毎日定期的にというわけではなく、「体が欲しているな」というときに活用しています。最も多いのは、クリニックでの仕事中、疲れたときに飲むパターンでしょうか。
私のクリニックには、ショウガパウダーとはちみつが、常備してあります。それを紅茶に溶いて、自分とスタッフ分の「ショウガはちみつ紅茶」を作って、おいしく飲みます。
スタッフの分のショウガパウダーは適量ですが、自分の分は、何度も振りかけて、たっぷりと入れています。はちみつも、ティースプーンに2~3杯。これらを加えたカップに、私の場合、お湯ではなく、紅茶に加えるのです。
私もスタッフも、このショウガはちみつ紅茶を飲むと、ほんとうに心からほっとして、ひと息つけると感じています。飲んでいるうちに、心が穏やかになり、いつのまにか疲れが吹き飛ぶのです。
寒い日に外から帰ってきて、「体が冷えたな」と感じたときには、自宅でショウガをすってお湯をそそぎ、ショウガはちみつ湯を飲むことがあります。
また、ちょっとカゼをひきかけて、「このままだとまずいぞ」というときにも、ショウガはちみつをとることにしています。その翌日に目が覚めると、カゼがもうすっかり抜けている感じがして、とても助かっています。
仕事柄、診察中に患者さんと対面してコミュニケーションをとりますから、私がカゼをひくわけにいきません。多くの患者さんと接するうちに、ウイルスをもらってしまうこともないとはいえません。自身の健康管理はとても重要です。
そんな私のカゼ対策として、ショウガはちみつは大変役立っています。
緊張し過ぎた時はコーヒーより紅茶がおすすめ
ショウガはちみつ紅茶が自律神経のバランス改善に役立つ
昔から、私にとっての嗜好品はコーヒーで、今もよく飲んでいます。
診療前には、いつもブラックコーヒーを飲みます。すると、やる気ががぜん出てくることを感じます。コーヒーを飲むことで、自律神経の交感神経が緊張し、仕事に向かう活力がわいてくるのです。
自律神経は、私たちの意志とは無関係に働いて、内臓や血管などをコントロールしています。自律神経には二つあり、昼間に優位になり、私たちのアクティブな活動をつかさどるのが交感神経。これに対して、夜間に優位になり、心身をリラックスさせる休息の神経が副交感神経です。両者は拮抗し、バランスを取るように働いています。
コーヒーで交感神経が緊張すれば、仕事モードへの切り替えに役立ちます。しかし緊張し過ぎれば、それは体の負担となります。私は、食後にもコーヒーを飲みますが、ときにコーヒーを飲んだあと、急に下痢をしてしまうことがあります。
そんなときは、紅茶のほうがよいのです。コーヒーと比べると、紅茶のほうが心身の緊張を緩めるのに向いているからです。ショウガはちみつ紅茶にすれば、心身を緩める効果は、より高くなるでしょう。
私のクリニックには、うつ、パニック障害、不眠、自律神経失調症などの患者さんがいらっしゃいます。そうした患者さんたちにも、ショウガはちみつ紅茶を勧めています。
精神的に不安定になっているときは、多くの場合、交感神経が過緊張状態にあります。この過緊張状態を緩めることはとても大事なことです。その手段の一つとして、ショウガはちみつ紅茶が大いに役に立ちます。
また、「冷えは万病の元」というのも、西洋医学的に考えても間違いありません。そういった観点からも、ショウガはちみつは有用です。
冷えを取り、心と体をリラックスさせるために、皆さんも、ショウガはちみつ紅茶を試してみてはいかがでしょうか。

この記事は『壮快』2022年3月号に掲載されています。
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