解説者のプロフィール

平田真知子(ひらた・まちこ)
昭和45年より独学で薬草の研究を始め、その後、長崎市の植物学者・高橋貞夫先生に師事し、薬草研究を行う。昭和60年より各地の薬草会の指導を始め、自治体の健康づくり大会で健康相談や、保健所、公民館、老人会や農協などで講演などを行う。主宰する「薬草の会」には数百名もの会員が40~100歳という幅広い年齢で在籍している。会員は皆、声にハリがあって大きく、肌ツヤよく、認知症やがんとは無縁で過ごしている。
▼マチコばあちゃんの薬草歳時記(You Tube)
今が摘みどき、作りどき!
「 薬草の使い方」
【お勧めの利用法】薬酒、薬草茶、料理など
薬酒や薬草茶にすると薬効を安全に体にとり込める
今回は薬草の使い方をまとめて説明したいと思います。
まず、薬草には「上薬(じょうやく)」「中薬(ちゅうやく)」「下薬(げやく)」の3つがあることを知っておいてください。
上薬とは、全く毒成分がないものを言います。飲み続けることにより、体を健やかにしたり、バランスを整えたりする働きがあります。
中薬とは、微毒があるものを指します。その微毒を体にとり入れることによって変化が起こり、病気を退治してくれます。常用してもよいし、病気がよくなったらやめた方がよいものもあります。
これらに対し、下薬とは、毒成分がとても強いものを指します。呼吸困難やかゆみなど、さまざまな症状を引き起こす場合がありますが、中には毒成分を和らげる処理を施し、薬として出回っているものもあります。
しかし、素人は下薬には手を出さない方が無難です。私の主宰する薬草の会でも、「あまり怖いものには近づくまいよ。安全なものだけに近づこうよ」との方針で活動してきました。
けれども、なんの反応も起こらないものは、それこそ毒にも薬にもなりません。例えば、ビワの葉は微量の毒が含まれていますが、そういうものでないと、体にはなんの変化も起こらないのです。
では、そうした薬草をどうやったら安全に体にとり込めるかというと、まずは「薬酒」にすることです。
どの薬酒も、漬け込んでからだいたい3ヵ月で出来上がります。そのまま飲んでおいしいものもあれば、セキショウのように、とても飲めたものではないものもあります。でも、どんな薬酒でも、3年ほど寝かせると熟成が進んでまろやかになり、とても飲みやすくなります。
薬酒に使うお酒は、アルコール度数が高ければ高いほど、薬草の精油成分が抽出され、長く熟成させられます。1日にさかずき1~2杯(20〜30ml)を限度に飲んでください。
複数の薬草をブレンドした「薬草茶」も、薬効を体にとり込む安全な方法です。
私たちは、1種類だけの薬草を飲むことはまずありません。自分が欲しい薬効を持つ薬草を数種類混ぜ合わせ、それをひとつかみ(約10〜20g)、水を入れて火にかけ、沸騰したら中火でさらに5分ほど煮出すと出来上がりです。これは好きなときに飲んで結構です。
人生を豊かにする足元の宝。それが「薬草」
他に、多くの薬草に向く使い道は、意外かもしれませんが、「料理」です。どの薬草も、天ぷらにすると、とても食べやすくなります。
私のこだわりは、天ぷらにしても、再び野にある姿に戻ったように揚げること。薬草の天ぷらにかけては、誰にも負けない腕前と自負しています。
けれども、これは薬効を取るというより、季節の遊びとして楽しむもの。私が10代のころからたしなんでいる俳句と同じです。
実際、薬草と俳句は通ずる部分がたくさんあります。俳句では、「吟行(ぎんこう)」といって、俳句を作るために自然の中へ出かけていくことがありますが、薬草も自然の中へ出かけていって、採取したり、観察したりします。
そして、「平凡の中の非凡を見る」という点でも両者は一致しています。ありふれた風景から、無限の広がりを感じさせる俳句が生まれるように、ただの雑草と思っているものに、とんでもない力を秘めたものがあるのです。そんな薬草の面白さ、奥深さを、少しでも感じ取っていただけたなら、本望です。
薬草は足元にある宝です。
人生をとても豊かにしてくれます。
みなさんも大いに活用してください。
季節の恵みを楽しむ薬草の天ぷら

材料
・季節の薬草……適量(セリ、ノビル、ナズナなど)
・衣(天ぷら粉、水)……適量
作り方
❶小麦粉に冷水を加え、さっくり混ぜて衣を作る。
❷フライパンで揚げ油を160℃くらいに熱する。

❸薬草は丈の長いものは丸くまとめ、裏側にだけ衣をつけて、からりと揚げる。


この記事は『安心』2022年2月号に掲載されています。
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