コーヒーを飲むと目がさえる人とさえない人がいます。これは覚醒遺伝子の配列の違いによって決まりますが、さえるタイプの人は積極的にコーヒーを飲むと、ドライアイの改善に役立つ可能性が大きいといえます。目薬はさし過ぎると涙を洗い流して逆効果になる場合もあるので、規定の回数をさした後は、カフェインで涙を増やすとよいでしょう。【解説】有田玲子(伊藤医院副院長)

解説者のプロフィール

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有田玲子(ありた・れいこ)

伊藤医院副院長兼眼科担当。慶應義塾大学眼科非常勤講師、東京大学眼科臨床研究員。専門分野はドライアイ、マイボーム腺機能不全、コンタクトレンズ。マイボーム腺機能不全の研究会「LIME研究会」の代表も務める。マイボーム腺機能不全の研究の第一人者。マイボーム腺機能不全の啓蒙のため、テレビや雑誌などのメディアにも多く登場。YouTubeでも、目についての情報を積極的に配信している。
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涙の量が2~5倍に増加

涙の量が減って目が乾き、疲れ目、目のかゆみ・痛み、目ヤニ、目のゴロゴロ感、目の充血、涙目、かすみ目などが起こる「ドライアイ」。高齢化やパソコン・スマートフォンなどの多用などにより、現代人に増えています。

そんなドライアイの人たちに朗報があります。私たちが行った研究の結果、「コーヒー」に、涙を増やす作用のあることがわかったのです。

私が涙とコーヒーの関係を調べたのは、ドライアイ外来で、デスクワークをしている60歳前後の男性患者さんから、こう質問されたのがきっかけでした。

「昼食時にコーヒーを飲んだときと飲まないときでは、午後の目の状態が変わり、仕事のやりやすさが違う。コーヒーと涙には関係があるのですか」。

即答できず、文献を調べてもハッキリした論文がなかったため、調べることにしたのです。

さまざまな先生方のご協力を得て、20〜50代の健康な男女78人のボランティアの皆さんに被験者になっていただき、以下の実験を行いました。

実験では、コーヒーのカフェインが主に作用するのではないかと推論し、被験者にカフェインのカプセルを飲んでもらい、涙の量の変化を調べました。

一方、見た目は同じで、デキストロースという、甘くない砂糖のようなものが入っているカプセルを飲んだ場合も、同様に調べて比較しました。

被験者には2回来院してもらい、1回目か2回目のどちらかにカフェインのカプセル、他方にデキストロースのカプセルを飲んでもらいます。実験の精度を高めるため、どちらであるかは、被験者自身はもちろん、私たち研究者側もわからないようにして行いました。

すると、カフェインを飲んだときは、比較用のデキストロースを飲んだときに比べ、多くの人で涙の量が2〜5倍に増えました。涙の層に色が着くようにして顕微鏡で写真撮影したところ、涙の層の厚みが明らかに増加したのです。

ただし、中にはカフェインを飲んでも涙が増えない人もいました。これについては、同時に行った被験者の遺伝子検査により、「覚醒遺伝子」と呼ばれる遺伝子(ADORA2A receptor gene)の配列と関係があることがわかりました。

コーヒーで眠れなくなる人に効果がある

一般に、コーヒーを飲むと目がさえる人とさえない人がいますが、この体質の差は、覚醒遺伝子のちょっとした配列の違いによって決まっています。

そして、コーヒーで涙が増える人は、コーヒーを飲むと目がさえる人と一致していたのです。そうした遺伝子配列を持つ人は日本人の7割に及びます。

コーヒーを飲むと目がさえるタイプだと、ご自分でわかっている人は多いでしょう。そういう人は、積極的にコーヒーを飲むと、ドライアイの改善に役立つ可能性が大きいといえます。

画像: コーヒーで眠れなくなる人に効果がある

その場合の目安量は、カフェインとして300mgで、これはコーヒー約3杯分に当たります。インスタントコーヒーでも同様で、砂糖やミルクを入れて飲んでも構いません。

カフェインは、日本茶や紅茶にも含まれるので、300mgに相当する量を飲めば、コーヒーと同じく涙を増やす効果が期待できます。その目安量は、玉露なら1杯、煎茶なら9杯、紅茶なら6杯です。

いずれも、1度にこの量を飲む必要はなく、1日分のトータルで結構です。ただし、遅い時間帯に飲むと、夜に眠りにくくなるので、遅くとも午後3時くらいまでに飲み、それ以降の時間帯は控えましょう。

特に、目の乾きを感じて、よく目薬をさしている人には、カフェインの摂取で涙を増やすことをお勧めします。目薬は、ひんぱんにさし過ぎると、涙を洗い流して逆効果になる場合もあります。規定の回数をさした後は、カフェインで涙を増やすとよいでしょう。

ただし、毎日欠かさずカフェインをとっていると、効き目が落ちてくる恐れがあります。週に1〜2日程度は、飲むのを休みましょう。

なお、カフェインで目がさえるタイプにもかかわらず、この方法でドライアイが緩和されない人は、油切れ」タイプのドライアイと考えられます。

涙は99%の水分と1%の油分から成り、油が水分の蒸発を防いでいます。

油分が不足して起こるのが、油切れタイプのドライアイで、目を温めたり、まばたきを多くしたりすることが改善に役立ちます。

涙(水分)不足の人にとっても目の油分は大切なので、カフェインをとるとともに、これらを心がけるとより効果的です。

カフェインで目がさえない人(コーヒーなどを飲んでも眠れる人)は、カフェインでは涙を増やせませんが、そういう人は下記の方法で目を温めたり、まばたきの回数を増やしたりするのを心がけてみてください。

ドライアイ、眼精疲労におすすめのセルフケア

ポリ袋でタオルを包むことで、温め効果が持続します。油の足りないタイプのドライアイの人にもお勧め!目の血行がよくなるので、眼精疲労の改善にも役立ちます。

用意するもの
おしぼりまたは薄手のタオル…2枚
ポリ袋…1枚

画像1: ドライアイ、眼精疲労におすすめのセルフケア

ホットタオルを作る。

〈お湯を使う場合〉
50℃ぐらいのお湯を用意する。おしぼり1枚をお湯に浸して取り出し、さっと絞る。
※やけどには十分注意!

画像2: ドライアイ、眼精疲労におすすめのセルフケア

〈電子レンジを使う場合〉
おしぼり1枚を水にぬらして絞り、ぐるぐる巻きにして、そのまま電子レンジで加熱する。

画像3: ドライアイ、眼精疲労におすすめのセルフケア

加熱時間の目安:おしぼりサイズのタオルの場合、500Wで1分が目安。手に持つと熱いぐらいの温度にするのがポイント。

画像4: ドライアイ、眼精疲労におすすめのセルフケア

①をすぐにポリ袋に入れる。

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もう1枚のおしぼりで上から巻く。

画像6: ドライアイ、眼精疲労におすすめのセルフケア
画像7: ドライアイ、眼精疲労におすすめのセルフケア

目の上に乗せて、そのまま5分間リラックス。1日2回行うと効果的。

画像8: ドライアイ、眼精疲労におすすめのセルフケア
画像: この記事は『安心』2022年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年2月号に掲載されています。

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