目は、朝起きたときから寝るまで1日中酷使されています。そのため大量の血流が必要ですが、血流が低下していたり、血液が汚れていたりしたら、眼圧は正常でも視神経の負荷につながると考えられます。その改善方法のひとつが、葉物野菜の摂取です。最近、ハーバード大学の研究データが報告されました。【解説】小栗章弘(医療法人弘鳳会おぐりクリニック理事長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

小栗章弘(おぐり・あきひろ)

日本眼科学会認定眼科専門医。1991年岐阜大学医学部を卒業後、岐阜大学医学部附属病院、清水厚生病院、医療法人白鳳会鷲見病院に勤務。1999年、アメリカ・オレゴン州ポートランドに渡り、DeversEyeInstitute,DiscoveriesinSightにて主として緑内障の研究に携わる。2004年3月、滋賀県長浜市にて、おぐり眼科クリニック(現、おぐりクリニック)を開業し、近視治療コンタクトレンズ(オルソケラトロジー)や眼内コンタクトレンズ手術による視力回復治療を開始。2015年1月に愛知県名古屋市でおぐり近視眼科・内科クリニック(現・栄眼科クリニック)を開業。近視や緑内障など、病気の原因を改善する幅広い目の疾患の診療にあたっている。
▼おぐりクリニック(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

日本人の緑内障の7割以上は「正常眼圧緑内障」

緑内障は、視神経が原因不明で萎縮し、視野が欠ける病気です。放置すれば失明することもあり、日本人の中途失明の一番多い原因疾患です。

原因の1つと考えられるのが眼圧の上昇です。眼球は眼圧によって球形を保っていますが、目の中の水(房水)の流れが悪くなると眼圧が上がり、視神経の出口(視神経乳頭)を圧迫して、萎縮を引き起こします。

ところが、日本人の緑内障の7割以上は、眼圧に異常はありません。なぜ視神経が萎縮するのか、わかっていないのです。

実は緑内障といっても、「緑内障」という確立した病気はありません。視神経の萎縮が起こる病気で、明らかに原因が特定できるものを除外し、残った病気が緑内障なのです。

緑内障の主なものは次の2つです。房水の出口である隅角(ぐうかく)が閉じている「閉塞隅角緑内障」と、隅角が開いている「開放隅角緑内障」です。

後者はさらに眼圧が高い「原発開放隅角緑内障」と、眼圧が正常な「正常眼圧緑内障」に分けられます。

これらのうち、日本人に圧倒的に多いのが、「正常眼圧緑内障」です。眼圧は「正常」でも、治療でまず使われるのは、眼圧を下げる点眼薬です。

血流が低下すると視神経に負荷がかかる

眼圧の高い人には、眼圧を下げる治療も必要でしょう。しかし、眼圧が高くない人が、なぜ緑内障になるのでしょうか。私は、薬の使用より、体質の改善が大事だと考えます。

近年の研究で、緑内障に血流の低下が関係していることが判明してきました。5年ほど前に放映されたNHKの番組『ためしてガッテン!』でも、全身の血流が悪くなると網膜の血流が低下して、緑内障になりやすいと報告されています。

私は、血流の低下に、悪玉活性酸素が関係していると考えています。悪玉活性酸素は血管をさびさせ、血液を汚し、血流を悪くします。後天的な病気のほぼ全てに悪玉活性酸素が関与していますが、その影響を真っ先に受けるのが、目なのです。

目は、朝起きたときから寝るまで1日中酷使されています。そのため大量の血流が必要ですが、血流が低下していたり、血液が汚れていたりしたら、眼圧は正常でも、視神経の負荷につながると考えられます。

緑内障に限らず、多くの目の病気は、血液状態が改善すると軽快します。私自身、食生活の見直しなどで血液状態を改善したら、長年苦しんだ花粉症やドライアイを克服できました。

葉物野菜に含まれる成分が血流を改善

その1つの方法として私が勧めているのが、葉物野菜の摂取です。

最近、葉物野菜の効果を裏付ける、米・ハーバード大学の研究データが報告されました。葉物野菜などに含まれる硝酸塩が、緑内障の予防や進行の抑制に効果のあることがわかったのです。

緑内障を発症していない40歳以上の男女約10万5000人を対象に、26年以上追跡調査した結果、葉物野菜を1日1.45食(101.5g)食べている人は、0.31食(21.7g)しか食べていない人に比べて、緑内障のリスクが21%低下し、初期の視野欠損のある人では、48%も低下したのです。

この数字を見ると、緑内障が進行している人ほど、葉物野菜による進行の抑制効果が大きいことがわかります。

葉物野菜に含まれる硝酸塩には血管を拡張させる作用があり、血管をしなやかにして血流を改善します。加えて葉物野菜には、悪玉活性酸素を除去する抗酸化作用がありますから、理にかなった結果だと思います。

今回の研究は、原発開放隅角緑内障を対象に検証したものですが、緑内障が、悪玉活性酸素や血流低下の影響下で発症しやすいことを考えると、日本人に多い正常眼圧緑内障にも効果が期待できます。

日光を浴びることや適度な運動も大切

ハーバード大の研究では、1日100g以上の葉物野菜の摂取が推奨されています。

ゆでたり、炒めたり、スープにしたりなど、調理法は問わないので、可能であれば、食事のたびに食べるといいでしょう。ホウレンソウ、コマツナ、キャベツなど、どんな葉物野菜でも構いません。ただし、緑内障の人は体を冷やす生食はなるべく控えた方がいいでしょう。

加えて、1日20〜30分でいいですから、太陽光を浴びて、善玉活性酸素(細菌やウイルスを攻撃して体を守ってくれる活性酸素)やビタミンDを増やしましょう。

また、適度な運動と、深い呼吸も大事です。酸素をたくさん取り込み、吐き出すことで、悪玉活性酸素が産生しにくくなります。

画像: この記事は『安心』2022年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年2月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.