網膜血管閉塞症とは、網膜の血管が血栓(血の塊)などによって詰まる病気です。納豆に含まれるナットウキナーゼには、血栓を溶かす作用があり、その作用によって血液循環がよくなり、物を見る上で重要な黄斑部の浮腫も改善、視力が回復するのだと考えられます。【解説】玉井嗣彦(鳥取大学名誉教授・日野病院名誉病院長)

解説者のプロフィール

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玉井嗣彦(たまい・あきひこ)

1962年、鳥取大学医学部卒業。米国チューレン大学客員講師、高知医科大学教授、鳥取大学医学部附属病院長を歴任。2001年に退官。現在、鳥取大学名誉教授、日野病院名誉病院長。

網膜血管閉塞症の患者さんに納豆を勧めてきた

眼科医である私は、患者さんに「納豆」を広く勧めてきました。中でも積極的に勧めているのは、「網膜血管閉塞症」という症状に対してです。

網膜血管閉塞症とは、網膜の血管が血栓(血の塊)などによって詰まる病気です。網膜血管閉塞症は、大きくは次の4種に分けられます。

網膜の中心部分には、動脈と静脈が通っていて、そこからたくさんの毛細血管が枝分かれして網膜全体に行き届いています。

中心の動脈が詰まるのが「網膜中心動脈閉塞症」、枝分かれした動脈が詰まるのが「網膜動脈分枝閉塞症」です。

同様に、中心の静脈が詰まるのが「網膜中心静脈閉塞症」、枝分かれした静脈が詰まるのが「網膜静脈分枝閉塞症」です。

中心の動脈が詰まると失明の危険性が高まり、中心の静脈が詰まると視野の中心が見えにくくなります。枝分かれした動脈・静脈が詰まった場合は、視野の一部が欠けて見えにくくなります。

私がこの病気の治療に納豆を活用しようと考えたのは、当時、倉敷芸術科学大学教授の須見洋行先生が発表された論文がきっかけでした。

それは、納豆に含まれるナットウキナーゼという酵素に、血栓を溶かす作用があるという内容です。

通常、血液は固まろうとする働き(凝固系)と、溶かそうとする働き(線溶系)がバランスを取りながら機能しています。ところが、そのバランスがくずれて凝固系が優位になると、フィブリンという物質が作られ、血栓ができます。

血栓の治療には通常、ウロキナーゼという薬が使われます。これは、線溶系の酵素を活性化させることで、血栓を溶かす薬です。

納豆に含まれるナットウキナーゼには、これとほぼ同様の作用があるとわかったのです。さらに、ナットウキナーゼにはウロキナーゼにはない、フィブリンを直接分解する作用があることも明らかになりました。

そこでさっそく、臨床で試してみると、納豆を食べて網膜血管閉塞症が改善した症例が、多数得られたのです。そのいくつかをご紹介しましょう。
 

右目がかすむといって来院されたAさん(58歳・男性)は、網膜中心静脈閉塞症でした。入院時の右目の視力は0.7。中心静脈の蛇行や腫れ、眼底出血が見られました。

Aさんには、毎日夜食に納豆を2パック(100g)食べてもらいました。すると1ヵ月後に、ほぼ正常な血管に戻り、出血も消えたのです。2ヵ月後には視力が1.2に回復し、その後も再発はありません。

画像: Aさん(58歳・男性)の右目 入院時は、中心静脈の蛇行や眼底出血がある。納豆食を始めて1ヵ月後、血管はほぼ正常に戻り、出血も消失。視力も回復。

Aさん(58歳・男性)の右目
入院時は、中心静脈の蛇行や眼底出血がある。納豆食を始めて1ヵ月後、血管はほぼ正常に戻り、出血も消失。視力も回復。

突然、右目の一部が見えなくなったと来院されたBさん(21歳・女性)は、網膜動脈分枝閉塞症を患い、血流が途絶えていました。

毎日、昼食と夕食に納豆を1パック(50g)ずつ食べてもらったところ、閉塞していた血管が8日目で再び疎通し、視野欠損も回復しました。

画像: Bさん(21歳・女性)の右目 初診時は、網膜動脈の一部が閉塞(矢印)し血流が途絶えている。納豆食8日目で血管が再疎通し、視野欠損も回復。

Bさん(21歳・女性)の右目
初診時は、網膜動脈の一部が閉塞(矢印)し血流が途絶えている。納豆食8日目で血管が再疎通し、視野欠損も回復。

右目に網膜静脈分枝閉塞症を発症したCさん(82歳・男性)は、硝子体出血を併発。眼底写真は血液で濁って、血管が見えない状態でした。週2回、夕食に1パック(50g)の納豆を食べてもらうと、2ヵ月で濁りがなくなり、0.01だった視力は1.5まで回復しました。

いずれも、納豆を食べる以外に投薬治療は行っていません。

納豆は夜食べるのが効果的

視力が回復するのは、納豆の血栓溶解作用によって血液循環がよくなり、物を見る上で重要な黄斑部の浮腫も改善するからだと考えられます。私は老眼や疲れ目を訴える患者さんにも、納豆を勧めています。その中には、「ハッキリ見えるようになった」という人もいます。

血栓対策には、納豆は夜食べるのが効果的です。血栓は朝できることが多く、ナットウキナーゼの血栓を溶解する力は約12時間持続するからです。私も週1〜2回は、納豆を食べるようにしています。おかげで86歳になる今も、健康な目を維持しています。

最後に注意点です。ワーファリンという抗血液凝固剤を服用中の人は、納豆に含まれるビタミンKが薬の働きを阻害するので納豆の摂取は控えましょう

画像: この記事は『安心』2022年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年2月号に掲載されています。

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