アメリカで発展した自然医学・オステオパシーの「頭蓋仙骨療法」では、乱視や近視などの目の症状は、目の奥にある「蝶形骨」と関わりがあると考えます。「目尻押し」は、ごく弱い力で蝶形骨と前頭骨のゆがみを矯正し、疲労性の乱視や、眼精疲労による頭痛も改善します。【解説】後藤敏勝(サムライ整骨院院長)

解説者のプロフィール

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後藤敏勝(ごとう・としかつ)

柔道整復師。カイロプラクティックを主体に行う整骨院に勤め、約5年半、カイロプラクティックやオステオパシーなどの手技療法を学ぶ。2013年、北海道札幌市に「サムライ整骨院」を開院。心・身体・環境の三位一体の考えのもと、西洋、東洋、量子、食、住居、自然環境を組み合わせ、施術や生活のアドバイスを行う。著書に『感情は、出し切る! ことで消えていく』(Kindle版)などがある。
▼サムライ整骨院(公式サイト)
▼心と身体の自然治癒サポーター 後藤敏勝(YouTubeチャンネル)

こめかみへの指圧で疲れ目の症状が改善

スマホや読書などで目を酷使すると、物が二重に見えたり、ぼやけて見えたりしませんか。

実は私も、20代後半ごろに、そんな状態に陥りました。視力は両目とも1.5~2.0で、決して悪いわけではないのに、長時間手元を見続けると、左目だけ、物が二重に見えるようになったのです。

私はこの状態を「疲労性の乱視」と名付けました。

患者さんなど、周囲の人にもこういう症状がないか聞いてみると、多くの人が悩まされている様子。ある患者さんは、車の運転中に視界がブレると嘆いていました。

さらに調べていくと、たいていの場合、疲労性の乱視が出るのは左右どちらか一方の目だけということがわかりました。

この症状をなんとかしたいと思った私は、自分の体を使って改善法を模索。今回ご紹介する「目尻押し」を考案しました。

このとき参考にしたのが、アメリカで発展した自然医学・オステオパシーの「頭蓋仙骨療法」です。

この療法では、乱視や近視などの目の症状は、目の奥にある「蝶形骨(ちょうけいこつ)」と関わりがあると考えます。蝶形骨とは、文字通り蝶の形をした骨のことで、目から脳へ向かう視神経などが、この骨の間を通っています。

そこで私は、体の外から唯一蝶形骨に触れられる、左右のこめかみの辺りを指圧してみました。すると、あっという間に症状が軽減したのです。

さらに私は、別の骨もポイントとなることに気づきました。それは、頭蓋を構成する骨の一つである「前頭骨(ぜんとうこつ)」です。

頭の骨である頭蓋は、たくさんの骨で成り立っています。前頭骨は額の辺りにあり、蝶形骨と一緒に、眼窩(眼球が収まるくぼみ)を作っています。

しかし、ストレスの多い状態が続くと、脳や脊髄を覆う膜である「硬膜」が緊張し、蝶形骨が後ろ側へずれてしまいます。それに伴い、蝶形骨と接している前頭骨の位置もずれることで眼窩がゆがみ、眼球に圧力が加わってしまうと考えたのです。

実際、まぶたの上に圧力が加わると視界がぼやけます。これと同様に、骨の位置がずれて眼窩がゆがみ、眼球に圧力が加わることで、物が二重に見えるなどの異常が生じるのでしょう。

そこで、この二つの骨が触れる位置を指圧したところ、視界が元に戻りました。これはおそらく、蝶形骨と前頭骨のゆがみが取れて、眼球への圧力が消えたためだと思われます。

目尻押しのやり方

《蝶形骨の指圧》(左右両方)

画像1: 目尻押しのやり方

目尻の真横にある、骨がくぼんでいる箇所を、人さし指の腹で優しく触れる。
①の指を少し前にずらし、1~2回ほど鼻から深呼吸をする。

《前頭骨の指圧》(症状が出ている側)

画像2: 目尻押しのやり方

まゆ尻のそばにある眼窩の縁を人さし指の腹でなぞる。小さな突起を見つけたら、その突起の耳側の真横に優しく触れる。
①の指を顔の中央側に少しずらし、1~2回ほど鼻から深呼吸をする。
※両目に症状が出ている場合は、もう片方も同じように行う。

ごく弱い力で触れるのがポイント

目尻押しのやり方は、前項の通りです。ポイントは、グッと強く押すのではなく、ごく弱い力で触れること。

実は、蝶形骨・前頭骨を含む頭蓋の骨たちは、常に微妙に動いています。その理由は、頭蓋の内部で循環している脳脊髄液によって、頭蓋が微妙に膨らんだり、縮んだりをくり返しているからだと考えられています。

目尻押しは、この頭蓋の動きを利用して行います。頭蓋の微妙な動きに合わせて、蝶形骨と前頭骨のゆがみを矯正するには、ごく弱い力で指圧をするのがうってつけなのです。

実際に、この目尻押しを、動画サイトのYouTuneで「1分で乱視を調整する方法」として紹介したところ、「うそのようにピントが合った」「左目の乱視が見やすくなった」など、多くの反響がありました。

また、私自身も目尻押しを習慣にして以降、疲労性の乱視が起こる回数が減りました。視界がブレたと感じても、これを行うだけで、すぐ元に戻ります。

なお、時間に余裕のある人は、前頭骨を押した後に、指をそのままにした状態で視線を動かしてみてください。左右、上下、時計回り、反時計回りに眼球を動かすことで、より効果を体感しやすくなるはずです。

目尻押しは、こうした視界の異常だけでなく、眼精疲労による頭痛の改善にも効果が期待できます。

また、眼窩のゆがみを調整して、眼球にかかる圧力を取り去る効果も見込めます。そのため、眼圧が上がるタイプの緑内障にも効果があると考えられます。

普段から目を酷使する人や、乱視が気になる人は、ぜひこのセルフケアをお試しください。

画像: この記事は『安心』2022年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年2月号に掲載されています。

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