目の病気を防ぐ一番の方法は、定期的に眼科を受診することに尽きますが、普段の生活で、疲れ目や近視の悪化のリスクを減らすためには、「20・20・20」を意識するとよいといわれています。これは「近い距離を20分見たら、20フィート(6m)以上遠くを20秒見る」というものです。【解説】大野京子(東京医科歯科大学眼科学教室教授)

解説者のプロフィール

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大野京子(おおの・きょうこ)

東京医科歯科大学眼科学教室教授。日本眼科学会認定眼科専門医。1987年、横浜市立大学医学部卒業。2014年より現職。2016年に日本近視学会を立ち上げ、近視疾患診療のガイドラインの作成、矯正では対処できず失明に至る可能性がある「病的近視」の研究や啓発活動に取り組む。専門は近視、眼底疾患、黄斑疾患。

定期受診と並行し目に優しい生活習慣を実行しよう

[別記事:早期発見のポイントを眼科医が病気別に解説→

目の病気を防ぐ一番の方法は、定期的に眼科を受診することに尽きます。

しかし、普段から目に優しい生活習慣を実行することも、疲れ目を防いだり、いくつかの目の病気のリスクを下げたりするのに役立ちます。手軽に実行できる習慣を、いくつか挙げてみましょう。

近くを20分見たら6m先を20秒見る

現代人は昔に比べて、圧倒的に近くを見る時間が長くなっています。しかし、そうした習慣を続けていると、疲れ目や近視の悪化を招きやすくなります。

そのリスクを減らすためには、「20・20・20」を意識するとよいといわれています。これは、アメリカで提唱されている方法で、「近い距離を20分見たら、20フィート(6m)以上遠くを20秒見る」というものです。

目は、近い距離にある物を見るとき、毛様体筋という筋肉を緊張させて、目のレンズである水晶体の厚みを増すしくみになっています。近くばかりを見ていると、目が疲れやすいのはそのためです。

「20・20・20」の習慣で、適宜遠くを見る時間を作れば、近視の進行抑制や、疲れ目の予防に役立ちます。

なお、6m先を見られる場所であれば、室内で行っても構いません。距離を取るのが難しい場合は、窓から外を見るなど工夫するとよいでしょう。

近視、疲れ目のセルフケア
【遠くを見る】
「20・20・20」を意識する
※近い距離を20分見たら、20フィート(6m)以上遠くを20秒見る。

抗酸化物質をとる

年とともに発症リスクが高まる、加齢黄斑変性の対策としては、食生活上での心がけも役立ちます。

これまでの研究で、ビタミンCやEなどのビタミン類、ルテインなどの強い抗酸化作用(体の酸化を防ぐ力)を持つ色素成分、ミネラルの一種である亜鉛などの摂取が、加齢黄斑変性の予防や進行抑制に有効だという結果が出ています。

加齢黄斑変性は、その病名の通り、加齢が大きく影響して起こります。物を見るために重要な網膜の黄斑部が、加齢とともにダメージを受けることが、主要な原因だと考えられているからです。

そして、それには有害な活性酸素(体内で増え過ぎると細胞を傷つけ、老化の一因となる物質)による酸化現象が、深く関わるとされています。

前述した栄養成分は、優れた抗酸化作用を持っています。そのため、加齢黄斑変性の予防や進行の抑制などに、大いに役立ちます。

ビタミンCは新鮮な野菜や果物に、ビタミンEは魚介類や大豆製品、ナッツ類などに、豊富に含まれています。

また、緑黄色野菜には、ビタミンC・Eに加え、ルテインも豊富に含まれています。

一方、亜鉛は、カキやイワシといった魚介類や、赤身肉などに多く含まれます。

加齢黄斑変性の予防のためには、遅くとも50歳を過ぎたら、これらの食品を積極的にとり入れるとよいでしょう。

また、加齢黄斑変性は、基本的に近視がない、いわゆる「目のいい人」に起こりやすい病気です。そのため、そういう人はより食事での対策を心がける必要があります。

すでに加齢黄斑変性の治療を行っている人は、医師に相談して、これらの栄養素のサプリメントを処方してもらうこともできます。

加齢黄斑変性のセルフケア
【食事に抗酸化物質をとり入れる】
・ビタミンC…野菜(パプリカ、キャベツなど)、果物(イチゴ、キウイフルーツなど)
・ビタミンE…魚介類(サバなどの青魚、ウナギなど)、大豆製品、ナッツ類
・ルテイン…緑黄色野菜(ピーマン、ホウレンソウなど)
・亜鉛…魚介類(カキ、イワシなど)、赤身肉
【禁煙する】
緑内障や白内障の予防にもお勧め。

正しく目薬をさす

どんな目の病気でも、受診して処方された内服薬を飲むのはもちろん、点眼薬(目薬)を指示通りさすことが重要です。

特に、緑内障に対して処方される点眼薬は、進行を食い止める大切な薬になっています。

とはいえ、お年寄りの場合は手がふるえることなどが原因で、目薬がさしにくい場合もあるでしょう。そんな人は、点眼補助具を使うのがお勧めです。

これは、目全体を覆うキャップのような形の道具で、点眼薬を固定してさすことができるというものです。こうした道具は、多くの薬局などで取り扱っているので、気になる人は相談してみるとよいでしょう。

禁煙する

目の病気のうち、緑内障、白内障、加齢黄斑変性については、喫煙が明らかな悪化要因であることがわかっています。

これらの病気がある場合は言うまでもなく、まだ病気を発症していない場合も、予防のために、ぜひ禁煙しましょう。

老眼や近視を改善できる目薬が開発中

目の病気ではありませんが、老眼で不自由な思いをしている人に要注目のトピックがあります。それは、アメリカで「老眼を改善する点眼薬」が承認されたことです。

これは、瞳孔を適度に縮小させることで、近くの物を見やすくします。日本では、すでに緑内障の治療薬として承認されている薬ですが、老眼の改善効果もあると明らかになりました。

しかし、実際に老眼用の目薬として、濃度などを検討した上で承認されるのは、まだ先になる見込みです。アメリカでは他のメカニズムによる老眼薬や近視の治療薬も研究されており、これらは将来的にビッグマーケットになるといわれています。

近い将来、点眼薬で老眼や近視の悩みから解放される日が来るかもしれません。

画像: この記事は『安心』2022年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年2月号に掲載されています。

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