骨盤が本来の正しい状態で収まっている人は、実はそれほど多くありません。多少の前傾・後傾は、利き足や軸足にも関係している生理現象ですが、傾きがひどくなり、前後左右のバランスが崩れた状態を骨盤のゆがみといいます。「足落とし」は、この骨盤のゆがみを整えることを目指すセルフケアです。まずは骨盤がどうゆがんでいるのかチェックしましょう。【解説】福冨章(福富健康院院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

福冨章(ふくとみ・あきら)

福富健康院院長。1961年生まれ。はり師・きゅう師、柔道整復師、あん摩マッサージ師。江戸時代のあん摩術が、現代人の抱える症状に効果がある点に着目し、古法あん摩と現代の解剖学に基づく手法を融合。日々の施術を行うとともにセルフ整体法を考案する。著書に、『ウルトラポーズで体がよみがえる』(主婦の友社)などがある。
▼福富健康院(公式サイト)

脚の長さの違いは骨盤のゆがみが原因

骨盤は、筋肉により上半身とつながり、背骨の土台にもなっている重要な部位です。しかし、骨盤が本来の正しい状態で収まっている人は、実はそれほど多くありません。

骨盤のゆがみ方には、高齢者のように骨盤が後ろに倒れる骨盤後傾タイプと、ハイヒールをはいた女性のように骨盤が前に倒れる前傾タイプがあります。

骨盤のゆがみは、傾きやねじれなど、前傾と後傾だけではありませんが、いずれも腸骨の前傾・後傾に連動して動くので、この二つに集約されます。

画像: 脚の長さの違いは骨盤のゆがみが原因

骨盤は、背骨の末端にある仙骨を中心にして、左右に羽のように骨が広がっています。その左右の羽が腸骨と呼ばれる部分です。

腸骨は、左の腸骨が前傾すると、右の腸骨が後ろに倒れることで、バランスを取っています。逆に、左の腸骨が後傾して、右の腸骨が前傾する場合もあります。多少の前傾・後傾は、利き足や軸足にも関係している生理現象です。

腸骨の前傾、および後傾がひどくなり、前後左右のバランスが崩れた状態を骨盤のゆがみといいます。この骨盤のゆがみによって、さまざま変化が体に現れます。その一つとして、脚の長さの違いがあります。

お尻を床に下ろし、両脚を伸ばして座ってみてください。この状態で足を揃えると、腸骨が前傾している側は脚が長く、腸骨が後傾している側は脚が短く見えます。

立った場合は、腸骨が後傾している側に骨盤が傾くため、そちら側の脚が長く見え、前傾側の腸骨が上がって脚が短く見えます。

このように、骨盤のゆがみによる脚長差は、寝たり座ったりした状態と立った状態で、逆になることが多いのです。

このような骨盤のゆがみによって、体のバランスが崩れ、全身に悪影響が及びます。腰痛股関節痛ひざ痛足底痛などの直接的な原因となってしまうのです。

骨盤が前後に倒れるのは、上半身にも影響があります。腸骨の前傾側の肩甲骨が後ろに倒れ、腸骨の後傾側の肩甲骨が前に傾くためです。そのため、首や肩のコリや痛み頭痛の原因になります。

逆に、骨盤のゆがみを整えることで、肩甲骨の傾きが矯正され、首や肩の症状も改善できます。

骨盤が前に倒れると、腰椎の前弯が強くなり、いわゆる反り腰になります。これによって、ギックリ腰や脚の痛みを起こしやすくなります。骨盤が後ろに倒れると、腰が後ろに曲がり、へっぴり腰になります。これは慢性腰痛や股関節痛、ひざの痛みを起こす原因になります。

骨盤のゆがみを整えて、正しい位置に戻すことができれば、反り腰やへっぴり腰も改善し、慢性腰痛やひざ痛も解消します。さらに、骨盤を整えることで、肩甲骨や首の位置も正しくなるため、「骨盤を整えただけで、肩や首のコリが解消されました」と喜ぶかたが少なくありません。

また、骨盤が前傾していると、特に女性ですが、やせているのに、ポッコリおなかになるかたがいます。この場合、骨盤のゆがみを正すことで、ポッコリおなかがたちまち引っ込むという効果も期待できます。ウエストがたちまち数cm縮むということが起こるのです。

骨盤のゆがみ方をチェックする簡単な方法

今回、ご紹介する「足落とし」は、この骨盤のゆがみを整えることを目指すセルフケアです。

やり方は次項を参照して頂くとして、その前に行うことがあります。どちらの骨盤がどうゆがんでいるのか、それをチェックすることです。

まずは、イスに深く腰かけて、深く足を組んでみてください。

このとき、脚を上に組みやすい側の腸骨が前傾している可能性が高いと判断します。右脚を上に組みやすいのなら、右重心タイプです。

立てひざも、一つの目安になります。一度あぐらか正座をかいて、そこから片ひざを立ててください。

そのとき、ひざを立てた側の腸骨が後傾している可能性が高いといえます。左ひざを立てる、立てひざのクセのあるかたは、左の腸骨が後傾していることになります。つまりこの場合も、右の腸骨が前傾している右重心タイプです。

左右どちらの肩に鞄をかけるか、でもチェックできます。たいがい重心側に鞄本体がくるようにかけます。重心側の腸骨は多くの場合、前傾しています。鞄本体が右にくるようにかけるかたは右重心タイプです。

これら三つのチェック法を試して、はっきりわかる方法で判別してください。骨盤の前傾後傾がわかったら、それに応じた足落としを実践しましょう。

重力に任せて足をポンと落とす

足落としの肝となるのは、足をポンと落とす点にあります。

足落としは、単純なストレッチのように、腸骨が前傾している側を、後ろへと引っ張って前傾を修正しようという方法ではありません。逆に、腸骨が前傾している側を、あえて、さらに前に傾ける方向に力をかけていきます。

それから、重力に任せて足をポンと落とします。すると落としたときに、反射的に後傾への修正が行われるのです。

腸骨が後傾している側についても、同じ理屈が当てはまります。後傾している側をあえて後ろに力をかけていき、ポンと足を落とすことで、反射的に前傾側へと修正されます。

足落としは、左右をそれぞれ3~5回行って、それを1セットとし、1日に数セット行うのが理想です。

足落としを行うタイミングに、特に決まりはありません。ただし、朝、体が温まっていないうちに行うと、足がつってしまうことがあります。朝起きてすぐは控えたほうがよいかもしれません。

なお、足落としのポーズをとったときに痛みが出てしまうかた、股関節が人工関節のかたは控えたほうがよいでしょう。いい換えれば、足落としのポーズがとれるかたなら、誰にでも勧められます。

なかなか治りにくい、腰やひざなどの関節痛にお悩みのかた、ポッコリおなかが気になるかたはぜひお試しください。

足落としのやり方

「右重心タイプ」の場合で説明。「左重心タイプ」の場合は、右側と左側を逆にして行う。
右側と左側それぞれ3~5回を1セットとし、1日に数回行う。 

用意する物
・低めのイス(正座イスや踏み台など、なんでもOK)

右足側

画像1: 足落としのやり方

左ひざを立てて低いイスに座り、右ひざを床に着け、右手で右足のすねの下方を持つ。左手で右の腸骨を押さえ、右ひざを着けたまま、息を吐きながら右足を持ち上げる。

画像2: 足落としのやり方

息を吐ききったら、右手を離し、右足の甲をポンと床に落とす。

左足側

画像3: 足落としのやり方

両ひざを立てて低いイスに座り、右手で左鼠径部の上を押さえる。左手で左ひざの皿の下を引っかけるように持ち、息を吐きながら股関節を深く曲げて左足を持ち上げる。

画像4: 足落としのやり方

息を吐ききったら、右手を離し、左足の裏をポンと床に落とす。

画像: この記事は『壮快』2022年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年2月号に掲載されています。

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