頭は心臓から離れているので、血流が悪くなりがちで、ストレス反応が現れやすい部位でもあります。自律神経の働きが乱れたり、睡眠が不足していたりした場合、目や耳などに不調が生じます。すると、頭皮にも変化が生じ、ツボにも反応として反映されるのです。今回は、より探しやすいツボの刺激方法を提案しましょう。【解説】立花愛子(りゅうえい治療院副院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

立花愛子(たちばな・あいこ)

りゅうえい治療院副院長。鍼灸師免許、管理栄養士免許、医薬品登録販売者資格を取得。鍼灸治療とともに東洋医学の知識を取り入れた栄養指導を行う。そのほか、お灸講座講師、執筆、メディア取材などを通して、簡単で効果的な東洋医学の活用方法を紹介している。著書に『目がスカッと!耳がスッキリ!のツボ』(ビックサクセス)、『顔ツボでぐんぐん脳活! すぐに実践できる脳活ツボ・マッサージ』(ぶんぶん書房)など。

二つの相乗作用で多様な効果をもたらす

頭は、心臓から離れているので、血流が悪くなりがちです。実際に頭皮がむくんでいるかたは少なくありません。ここに刺激を与えて、頭部の血流をよくすることができれば、さまざまな不快症状の改善も期待できます。

また、頭はストレス反応が現れやすい部位でもあります。自律神経の働きが乱れたり、睡眠が不足していたりした場合、目や耳などに不調が生じます。すると、頭皮にも変化が生じ、ツボにも反応として反映されるのです。

こうした場合、この反応点へのツボ刺激によって改善効果をもたらすことができます。いわゆる「特効ツボ」というものも、こうした反応点の代表的なものといっていいでしょう。

頭部へのツボ押しは、血流改善効果と、反応点への刺激効果、この二つの相乗作用によって、さまざまな効果をもたらします。

今回は、より探しやすいツボの刺激方法を提案しましょう。ツボのラインを手がかりとして、刺激する箇所を紹介します。

東洋医学では、体の中に、気という一種の生命エネルギーが流れていると考えます。その気の通り道である経絡(けいらく)が、私たちの体を巡っていて、この経絡のライン上にツボが並んでいるのです。

頭の中心を通る正中線のラインが、督脈(とくみゃく)という経絡になりますが、ほかにも頭には何本かの経絡のラインが走行しています。ツボを探すときには、このラインを手がかりにしましょう。

ライン上を押して、へこんでいたり、痛気持ちいいと感じたり、響く感じがあったりすれば、そこが求めるツボです。

なお、次項からツボの位置をイラストで紹介していますが、人によって多少のズレがあることはご承知おきください。同じ人であっても、いつも決まった場所ではなく、少し位置がズレることがあります。

症状別に紹介!頭の特効ツボ21

ここから、症状別にお勧めのツボを紹介していきましょう。

鼻の症状

上星(じょうせい)
顖会(しんえ)

こちらも正中線のライン上にあり、鼻の症状があると、反応が現れやすいツボです。鼻水が出たり、鼻づまりになったりすると、まず上星に反応が現れます。

鼻の症状が悪化し、アレルギー性鼻炎になったり、副鼻腔炎になったりすると、今度は顖会に反応が現れることが多いです。顖会は、副鼻腔炎の治療では必ず使うツボとなっています。

脳の活性化

懸顱(けんろ)
懸釐(けんり)

こめかみに沿ったライン上にあるツボです。懸顱と懸釐は、ともに三叉神経を刺激して、脳の血流状態をよくする効果が期待できます。私たちの治療院では、このツボへの鍼灸治療を行い、脳梗塞後の後遺症のリハビリに活用しています。

脳を活性化できるため、ちょっと気持ちが落ち込んでいるときなどは、ここを押すことで気分をリフレッシュさせることができます。緊張気味のときや、滑舌をよくしたいときなどにも応用できます。

ほかに、懸顱は歯痛、懸釐は顎関節症でお悩みのかたにも勧められるツボです。

画像: 脳の活性化

自律神経の症状

百会(ひゃくえ)
前頂(ぜんちょう)
後頂(ごちょう)

百会は、自律神経のバランスが崩れたときに反応が出る場所とされ、体の中心を通る正中線のライン上にあります。自律神経を調整するツボの定番で、自律神経失調による多くの不定愁訴に有効です。

また、百会は万能なツボとされ、自律神経失調症だけに限らず、多くの効能があります。例えば、ストレス解消や、頭痛、肩こりにもいいでしょう。

正中線のライン上で、百会を前後から挟むかたちで、前頂と後頂があります。症状が悪化すると、百会だけではなく、その前後の位置にも、反応が現れます。それが前頂や後頂で、百会と合わせて刺激することで、改善効果を高めることができます。

画像: 自律神経の症状

目の症状①

曲差(きょくさ)
承光(しょうこう)
通天(つうてん)
絡却(らっきゃく)
玉枕(ぎょくちん)

これらのツボは左右のまゆ頭から真上に伸び、正中線と平行のライン上にあります。曲差は、アレルギー性結膜炎などによる、目のかゆみを止めるのに役立ちます。

過労や自律神経の乱れなどによって、脳自体の働きが落ちてくると、目の疲れやかすみ、頭重感といった症状が出てきます。それらの解消に役立つのが、承光、通天、絡却という三つのツボです。

特に絡却は、隣に百会があり、百会を補うような働きをしているとされています。百会と同様、自律神経の乱れによる不定愁訴にも利用できます。

玉枕は、とくに緊張型頭痛や後頭部痛によく使うツボです。玉枕の直下には、同じライン上で天柱という有名なツボがあります。天柱もいっしょに刺激すれば、後頭部の筋肉の緊張を緩め、血流をよくして、頭痛を解消する効果が高まります。

目の症状②

頭臨泣(あたまりんきゅう)
目窓(もくそう)
正営(しょうえい)

こちらは、左右の黒目から真上に伸びるライン上にあります。やはり正中線と平行です。頭臨泣は、一日の疲れがたまって生じるような目の疲れ、頭痛などに効果的です。

緑内障や白内障、黄斑変性症などの目の疾患があると、目窓や正営というツボに反応が現れます。鍼灸治療では、ここに鍼を打って治療を行います。ツボ治療による緑内障や白内障、黄斑変性症などの改善例は多くありますが、眼科医療機関での診察・治療は必ず受けてください。そのうえで、セルフ指圧を併用しましょう。

画像: 目の症状②

耳の症状

角孫(かくそん)
顱息(ろそく)
翳風(えいふう)

こちらは正中線と平行のラインではなく、耳の周囲を巡るライン上にあります。

角孫は、耳を縦に二つ折りにしたとき、その頂点の位置にあります。昔から、耳鳴りに効果があるとして使われてきました。また、抜け毛予防にも効果があるとされています。

顱息は、耳の後ろ側の輪郭に沿った曲線のライン上にあります。耳鳴り、めまいに有効ですが、ほかに血圧を安定させる効果が期待できます。このツボへの刺激が副交感神経を優位にして、血管を拡張させて、血圧を下げるといわれています。

翳風は、耳の後ろの出っ張った骨(乳様突起)の前の小さなくぼみの位置にあります。めまい、難聴、耳鳴りに効くほか、耳の詰まった感じ(耳閉感)にも有効です。

肩こり、頭痛

天柱(てんちゅう)
風池(ふうち)
完骨(かんこつ)

天柱、風池、完骨の三つは、ともに脳への血流を増やし、首、肩の筋肉の緊張を解きほぐして、肩こり、首こりを楽にします。筋肉のコリから生じる頭痛の解消にも役立ちます。この三つは同じライン上にあるわけではありませんが、後頭部の近い位置に存在します。

この三つのツボへの刺激によって、頭部の血流が大きくアップします。それが目や耳の症状の改善にもつながるので、目や耳の症状でお悩みのかたには、ぜひ勧めたいツボです。

特に風池は、目の症状の特効ツボとされています。眼の病気に対する鍼治療で、よく使われるところです。

耳の症状で悩む人を触診すると、たいてい完骨の辺りの筋肉がこっています。完骨を刺激し、その周辺の筋肉の緊張を解くことが、耳の症状の改善につながっていきます。

入浴前は避け「痛気持ちいい」力で押し込む

最後に、頭のツボのもみ方を説明しておきましょう。

正中線上やそれと平行して走るツボは、両手の押しやすい指をツボの上に重ねて押します。ゆっくりと力を入れ押し込み、それを10回程度くり返します。

側頭部のツボは、左右のツボに指をそれぞれ当てて、同様に、10回ほど押しましょう。耳の症状は片方だけに起こることも多いので、症状の出ている側だけ、刺激を行うようにしてもいいでしょう。

後頭部の天柱、風池、完骨については、自分の押しやすい指をツボに当てたら、ツボを押しながら、同時に、頭を後ろへ倒します。これによって、効果的な刺激ができるはずです。これを同様に10回ほど行います。

いずれも、10回を1セットとして、1日に数セット行うのが理想的です。

なお、ツボ押しは、原則として、入浴前は避けましょう。熱による刺激は、ツボ刺激の効果を薄めてしまいます。それ以外であれば、いつ行っても問題ありません。

今回ご紹介したツボのなかに、自分のお悩みの症状を見つけたら、ぜひ頭部のツボ押しをお試しください。ツボの位置ですが、正確さを求め過ぎる必要はありません。自分にとって痛気持ちいい、効果を感じる点かどうかが重要です。

画像: この記事は『壮快』2022年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年2月号に掲載されています。

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