活性酸素は体内に侵入してきた細菌やウイルスを殺すという有益な働きをする一方で、がんやアルツハイマー病、老人性のシミ・シワ、糖尿病、高血圧、動脈硬化などを引き起こす元凶でもあります。活性酸素に負けないためには、食事で抗酸化物質を補い、体の抗酸化力を高める必要があります。そこで野菜スープ、というわけです。【体験談】奥野修司(ノンフィクション作家)

プロフィール

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奥野修司(おくの・しゅうじ)

1948年、大阪府生まれ。立命館大学卒業。ノンフィクション作家。『ナツコ ―沖縄密貿易の女王』で講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。主な著書に、『「副作用のない抗がん剤」の誕生』(文藝春秋)、『本当は危ない国産食品』(新潮社)など。

野菜の有効成分はスープに溶け出す

私は長年、ノンフィクション作家として、終末期医療について取材を重ねています。

そのなかで、2021年5月に逝去された熊本大学名誉教授・前田浩先生や、鹿児島の堂園メディカルハウス院長・堂園晴彦先生と知り合いました。

前田先生は抗がん剤の開発に力を注ぐかたわら、「がんを予防できる食事」の研究も続けていました。

そんな先生は、「がんを予防するには、野菜を煮込んでスープにして食べるのがいい」といって、以前から「野菜スープ」を飲むことを周囲に勧めていました。

また、堂園先生も臨床医の立場から、野菜スープを患者さんに勧めています。

なぜ抗がん剤の研究者や医師が、野菜スープを推奨するのでしょうか。

野菜にはビタミンA、C、E、ファイトケミカルなどさまざまな抗酸化物質が含まれています。これらの物質には、がんや老化の主原因となる「活性酸素」を中和して消去する「抗酸化作用」があります。

前田先生は、抗酸化物質の豊富な野菜を常食し、活性酸素を制すれば、がん予防の一助となる、と考えたのです。

野菜に含まれる抗酸化物質の代表が「ファイトケミカル」です。ファイトケミカルは、植物が紫外線や害虫から身を守るために作り出す化学物質です。

トマトのリコピン、ニンジンやカボチャのカロテノイド、お茶のカテキンなど、その種類は1万種を超えます。ファイトケミカルは活性酸素対策の頼もしい味方なのです。

活性酸素は強い酸化力を持ち、細胞を酸化して破壊します。体内に侵入してきた細菌やウイルスを殺すという有益な働きをする一方で、DNAを傷つけ細胞を変異させてがんを誘発します。アルツハイマー病や老人性のシミ・シワ、糖尿病、高血圧、動脈硬化などを引き起こす元凶でもあります。

活性酸素の発生源は、呼吸で取り入れた酸素、紫外線、放射線、農薬、食品添加物などの化学合成物質、ストレスなど実にさまざまです。

人間の体には、体内で発生した活性酸素を消去する酵素などの物質を作る働きがありますが、加齢とともにこの働きは低下します。

また、ストレスや化学物質にさらされ続け、活性酸素が大量に発生すると、処理しきれず病気にかかりやすくなります。

活性酸素に負けないためには、食事で抗酸化物質を補い、体の抗酸化力を高める必要があります。そこで野菜スープ、というわけです。

「野菜なら毎日食べている」というかたも、調理法に注意してください。

というのも、生野菜のサラダのように、加熱をせずに野菜を食べても、抗酸化物質はほとんどとれないからです。野菜の細胞を包む「セルロース」という繊維成分は非常にかたく、生のまま野菜を刻んだり、すり潰したりしたくらいでは壊れません。

ところが、野菜を5分も煮ればセルロースは簡単に壊れて、細胞の中から抗酸化物質が煮汁に溶け出します。

前田先生の実験では、生野菜と加熱した野菜を比較すると加熱した野菜は10~100倍抗酸化力が強くなることがわかりました。

画像: 野菜の抗酸化力の強さ『最強の野菜スープ』(前田浩著/マキノ出版)より ※野菜の生の冷水抽出成分と、5分煮沸したあとの熱水抽出成分で、脂質ラジカルに対する抗酸化力を調べた。 ※数字が高いほど活性が強い。ほとんどの野菜は煮沸後にスープの抗酸化力の値が上昇する。

野菜の抗酸化力の強さ『最強の野菜スープ』(前田浩著/マキノ出版)より
※野菜の生の冷水抽出成分と、5分煮沸したあとの熱水抽出成分で、脂質ラジカルに対する抗酸化力を調べた。
※数字が高いほど活性が強い。ほとんどの野菜は煮沸後にスープの抗酸化力の値が上昇する。

また、野菜を煮込んでもビタミンCは壊れず、スープに溶け出すことも証明されています。スープにはこれらの有効成分がたっぷり含まれているというわけです。

患者さんに野菜スープを飲むことを勧めている堂園先生は、アトピーなどの皮膚炎や慢性疲労など、多くの症状が改善することを確認しています。スープの有効成分が、奏功したのかもしれません。

朝食を野菜スープにしたら便秘がすっかり解消

私自身も、野菜スープを作るようになって、かれこれ2年以上になります。

私はできるだけ農薬を使わず作られた有機野菜をとることにしています。昔に比べれば有機野菜は手に入りやすくなりました。近所の農家で分けてもらうという方法もあります。

価格が高いと思うかもしれませんが、毎朝の野菜スープ1杯分くらいなら、負担はさほど大きくないはずです。健康のためにはできるだけ農薬を避けることが賢明です。

スープは週に1度、まとめて作ります。そのときどきで手に入った数種類の野菜を刻み、30分ほど煮るだけです。朝食で食物繊維が豊富なスープを食べ始めてから、便秘がすっかり解消しました。

野菜スープについては近年、私も週刊誌などで何度か記事を執筆しました。前田先生や堂園先生の取り組みを通して、野菜スープの健康効果を紹介する内容でしたが、毎回話題になりました。野菜スープへの、読者の関心の高さ、期待を感じています。

野菜スープは、野菜を煮るだけでできる簡単な料理ですが、万病のもとである活性酸素から身を守り、健康維持に役立つ栄養が詰まっています。ぜひ一度、試してみてはいかがでしょうか。

[別記事:基本の「野菜スープ」の作り方&アレンジレシピ→

画像: この記事は『壮快』2022年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年2月号に掲載されています。

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