「ファイトケミカル」は、野菜の有効成分の一つで、病気や老化のもとになる活性酸素を消去する強力な抗酸化力があります。そのため、がんや生活習慣病をはじめとするさまざまな病気を予防してくれるのです。野菜スープにしてとれば抗酸化力が高まるうえ、油も控えられます。調理が簡単で続けやすい点も大きなメリットです。【解説】堂園晴彦(堂園メディカルハウス院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

堂園晴彦(どうぞの・はるひこ)

堂園メディカルハウス院長。1952年、鹿児島県生まれ。医学博士。東京慈恵会医科大学卒業。学生時代に寺山修司の演劇実験室「天井桟敷」に在籍。国立がんセンターレジデント、鹿児島大学医学部講師などを経て、96年、堂園メディカルハウス設立。日本初の有床診療所でのホスピス医療を開始。日本の緩和医療のトップランナーとして活躍。2015年、外来診察に特化した診療所に移行。「患者さんが主役の医療」を目指し治療に当たっている。
▼堂園メディカルハウス
▼専門分野と研究論文(CiNii)

ファイトケミカルが病気や老化のもとを消去

私が院長を務める診療所では、生活習慣病やアトピー、がん、心身症などの慢性疾患を、できるだけ化学的薬物を使わず治療することを目指しています。

重要なのは、患者さんの自然治癒力を高めることです。そのためのカギとなるのが、食事指導です。私は通常、「野菜スープ(ファイトケミカルスープ)」を勧めています。

なぜ、野菜スープがよいのでしょうか。詳しくご説明しましょう。

ファイトケミカルが効果的にとれる

「ファイトケミカル」は、野菜の有効成分の一つで、植物の色や香り、苦みのもとです。ファイトケミカルには、病気や老化のもとになる活性酸素を消去する、強力な抗酸化力があります。そのため、がんや生活習慣病をはじめとするさまざまな病気を予防してくれるのです。

ところが、このファイトケミカルは、生野菜ではあまり摂取ができません。そのことは、抗がん剤研究の第一人者、故・前田浩先生(熊本大学名誉教授)の研究でも示されています。

先生の実験により、生よりも、ゆで汁(スープ)のほうが、野菜の抗酸化力が高まることが明らかになったのです。前田先生は、著書においても「がんの予防には、野菜スープがいちばん」と書いています。

画像: 野菜の抗酸化力の強さ『最強の野菜スープ』(前田浩著/マキノ出版)より ※野菜の生の冷水抽出成分と、5分煮沸したあとの熱水抽出成分で、脂質ラジカルに対する抗酸化力を調べた。 ※数字が高いほど活性が強い。ほとんどの野菜は煮沸後にスープの抗酸化力の値が上昇する。

野菜の抗酸化力の強さ『最強の野菜スープ』(前田浩著/マキノ出版)より
※野菜の生の冷水抽出成分と、5分煮沸したあとの熱水抽出成分で、脂質ラジカルに対する抗酸化力を調べた。
※数字が高いほど活性が強い。ほとんどの野菜は煮沸後にスープの抗酸化力の値が上昇する。

ビタミンCがとれる

ビタミンCにも、活性酸素を消去する働き(抗酸化力)が豊富です。そのため、不足すれば、慢性疾患を引き起こす恐れがあります。

また、ビタミンCは抗ストレスビタミンとも呼ばれ、脳の働きを助ける作用があります。

近年増加している慢性疲労症候群や心身症は、脳がビタミンC不足に陥り、活性酸素に攻撃されて機能が低下している状態だと考えられているのです。

野菜スープには、ビタミンCが豊富に含まれています。また、前田先生の研究では、野菜を加熱してもビタミンCはほとんど壊れず、スープに溶け出すことも証明されています。

有効成分が吸収されやすく腸内環境も整う

油を控えられる

揚げ物、炒め物に多用されているサラダ油(菜種油など)の主成分は、リノール酸(オメガ6系脂肪酸)です。

このリノール酸が変化して作られるアラキドン酸は、プロスタグランジンという炎症を起こす物質を産生します。そのため取り過ぎると体に炎症を起こしやすく、慢性疾患の原因になるといわれています。脳梗塞や心筋梗塞、アレルギー疾患・膠原病の発症などを誘発する恐れも指摘されています。 

また、油料理(フライパン料理)が多い食卓では、魚より肉をとることが多くなります。肉には、アラキドン酸が多く含まれています。過剰な肉食は、腸内に悪玉菌を増やし、腸内環境を悪化させます。

油の多い食事をとると、体内にコレステロールや中性脂肪がたまります。それが活性酸素によって酸化されることで、過酸化脂質という物質に変化。細胞に障害を与えて発がんのリスクを高めたり、動脈硬化を促進したりします。

野菜スープの材料は野菜と水だけです。デメリットの多い油を控えることができます。

野菜がたくさんとれる

野菜は加熱することで細胞壁が壊れ、有効成分が体に吸収されやすくなります。また、加熱すれば、かさが減り、野菜をたくさん食べられるうえ、消化もよくなります。

腸内環境が整う

野菜スープは、腸にもやさしいメニューです。食物繊維を豊富に含むことから、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を改善します。それにより、腸に備わっている免疫システムも整い、糖尿病、高血圧といった生活習慣病や、がん、アトピーなどの慢性疾患の予防・改善にもなるのです。

これら①~⑤を踏まえて、私は患者さんの自然治癒力を上げるためには、野菜スープが最適だと考えているのです。次項ではそんな野菜スープのメリットを、別の角度から詳しく紹介しましょう。

簡単に作れてアレンジ自在で続けやすい

前項で解説したとおり、私は患者さんへの食事指導で、野菜スープを積極的に勧めています。私自身も3年以上にわたり野菜スープを飲み、その効果や便利さを実感しています。

もともと日本人は、野菜を生で食べる習慣はありませんでした。煮物、蒸し物、みそ汁、鍋など、いずれも加熱して食べていたのです。

海外もしかりです。サラダのような生野菜をとるようになったのは、ごく近年になってから。世界の伝統料理を思い浮かべてみれば、シチューやポトフ、ボルシチなど野菜を煮込んだ物ばかりです。

これら伝統的なスープや煮込み料理は、体が効率よく食物の栄養を吸収できるようにできているのです。そう考えると、野菜スープはまさに「温故知新」のメニューだといえます。

野菜スープのメリットは、前項で示した栄養面に加えて、調理が簡単であり、実践しやすく、続けやすい点にあると思います。

いくら体にいいからといっても、手間のかかる料理は長続きしません。「簡単に作れる」(Easy to make)が、私の食事指導のモットーです。

野菜スープの材料は水と野菜だけ。刻んだ野菜を煮込むだけでよいので、料理の手間は最小限で済みます。料理が苦手なかたや、忙しいかたでも簡単に作れます。

アレンジがきくのもよい点です。基本のスープを大量に作りおきして冷凍保存すれば、その日の気分でアレンジして、手早くメイン料理を作ることができます。

私はロールキャベツにアレンジしたり、みそ汁にしたりしています。冷凍のシーフードミックスか肉、カレールーを、スープに加えて10分ほど煮込むだけでカレーも出来上がります。

また、この野菜スープは、塩、コショウやスパイス、みそなど、さまざまな調味料で自在に味つけできます。味の変化が楽しめて、毎日とっても飽きません。

患者さんたちの話を聞くと、野菜スープは、3週間続けると「なんとなく体の調子がいい」と感じるようです。さらに続けると、よりはっきりした効果を実感するかたが増えてきます。

コンビニ弁当に添えれば栄養を補える

私自身は夕食に、野菜スープを積極的にとっています。スープはだいたい週に1度まとめて作ります。できるだけ有機野菜を選び、基本の野菜(別記事作り方参照)に加え、ジャガイモやシイタケなど、いろんな野菜を使います。

[別記事:基本の「野菜スープ」の作り方&アレンジレシピ→

旬の野菜には、抗酸化物質が豊富に含まれているうえ、栄養価も高く、なによりおいしいですから、意識的に加えます。

野菜スープをとる量は、自分にとって無理のないくらいでけっこうです。慣れてきたら、1回にスープカップで1杯(およそ250~300ml)ほどとるのがお勧めです。1日に数回飲んでもかまいません。

コンビニ弁当をよく食べるかたは、ぜひこのファイトケミカルたっぷりの野菜スープをいっしょにとってください。それだけで、栄養をしっかり補うことができるでしょう。

たとえ三日坊主になっても大丈夫です。また始めればいいのですから。なによりたいせつなのは続けることです。ぜひ継続的にとって、野菜スープを健康維持に役立ててください。

画像: この記事は『壮快』2022年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年2月号に掲載されています。

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