解説者のプロフィール

駒形依子(こまがた・よりこ)
こまがた医院院長。東京女子医科大学医学部卒業。米沢市立病院、東京女子医科大学病院産婦人科などを経て、2018年、山形県米沢市に婦人科・漢方内科のこまがた医院を開業。自称「子宮が大好きすぎる産婦人科医」として、西洋医学・東洋医学の双方の視点から診療を行う他、患者が自分で自身を治せる「グレない子宮の作り方」を数多く提案している。『子宮内膜症は自分で治せる』、『子宮筋腫は自分で治せる』(ともにマキノ出版)、『膣の女子力 女医が教える「人には聞けない不調」の治し方』(KADOKAWA)など、著書多数。
▼こまがた医院(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)
臓器を効率的に温める「おまたカイロ」
「冬になると、トイレが近くなって困る……」。そんな女性にぜひ試してもらいたいのが「おまたカイロ」です。これは文字通り、下着とズボンの間にミニカイロを挟む方法で、股間から体を温めることができます。
多くの人は、体を温めるときおなかにカイロをはると思います。しかし実は、おなかには脂肪が多く、それが断熱材のようになってしまうため、内側にある臓器に熱が届きにくいという難点があります。
しかし、股間の場合は、すぐ上に粘膜があります。そのため、膀胱や子宮、腸などの骨盤内にある臓器に、効率よく熱を伝えることができるのです。
「冷えは万病のもと」といわれますが、これらの臓器にも、冷えは大敵。骨盤内の臓器が冷えると、血流が悪化して、細胞の機能が低下する上に、臓器の筋肉も硬くなってしまいます。
すると、その臓器本来の機能が十分に果たせなくなり、頻尿や生理痛、生理不順、便秘、腰痛などの症状が現れるのです。
おまたカイロは、こういった冷えがもとで生じている症状に、本当によく効きます。私自身も、長年の体の悩みの改善におまたカイロが役立ちました。
私は、10代の頃から過多月経(経血の量が異常に多い状態)や、ひどい生理痛に悩まされてきました。婦人科に通い、薬も服用しましたが、効果は見られず。生理時は1日に4回も鎮痛薬を飲んで、どうにかしのいでいたのです。
そこで、産婦人科医になってからは、西洋医学だけでなく、東洋医学も本格的に学びました。そして、自身の体で、さまざまな治療法やセルフケアを試すようになったのです。
その中で考案したケアの一つが、おまたカイロ。さっそく他のケアとともにこれを実践したところ、20代後半の頃に、とうとう生理時のつらい症状と決別できました。
私自身が効果を確信してからは、患者さんにもおまたカイロをお勧めしています。その中で、頻尿に効果があった例をご紹介しましょう。
Aさん(40代女性)は、初診時の問診票に、「1日の排尿回数は20回」と記入されました。下半身の冷えがひどく、筋力も低下していたので、漢方薬だけでは改善に時間がかかることが予想されました。
そこで、おまたカイロを実践してもらったところ、3週間後の再診時には、排尿回数が12~13回までに減っていたのです。「前は、今すぐトイレに行きたいという切迫感にしょっちゅう駆られていたけど、それがなくなり残尿感も減った」と、喜ばれていました。
電気毛布やこたつとの併用はしない

おまたカイロのやり方は、下項を参考にしてください。
おまたカイロは、冷えがひどい人ほど熱さを感じないのが特徴です。 「温かくて気持ちいい」と感じるようになったら、冷えが取れてきたサイン。カイロを熱く感じるようになってきたら、無理せず外しましょう。
また、おまたカイロを行うと、逆にトイレが近くなる人もいます。これは、冷えで鈍くなっていた膀胱の働きが回復し、本来の排泄機能が高まったからこそ起こることです。一時的なものなので心配はいりません。
注意が必要なのは、トイレなどの際に油断していると、おまたカイロが落ちる可能性があることです。まずは自宅で実践して扱いに慣れてから、外出時などに活用するといいでしょう。
また、電気毛布やこたつなどの、局所的に体を温める暖房器具と併用すると、低温やけどにつながることがあります。これらを使用する際は、おまたカイロを外してください。
おまたカイロで下半身の冷えが取れれば、ホットフラッシュやのぼせの改善にもつながります。また、おなか周りの脂肪も落ちやすくなり、自然にやせやすくなります。そういったお悩みをお持ちの人も、ぜひお試しください。
おまたカイロのやり方
用意するもの
ハンカチタオル(使い古したものでよい)…1枚
はるタイプの使い捨てミニカイロ…1枚

①ハンカチタオルを広げて、左のイラストの位置に、使い捨てカイロをはる。

②カイロを包むようにして、ハンカチタオルを3等分に折る。

③②を、下着とズボンの間に挟む。
●熱いと感じてきたら、ハンカチタオルを後ろに引っ張ってお尻に当てる(仙骨カイロ)。それでも熱く感じる場合は、はがして腰にはり直すか、諦めてカイロを捨てる。
●トイレに行く際などに、おまたカイロが落ちる可能性がある。下着を脱ぐときには、十分気をつける。
※下のような布ナプキンに挟めば、落ちる可能性はなくなるが、熱くなった際にずらすことができないので注意。

●ゆったりとしたズボンをはいていると、おまたカイロが固定されずに落ちることがある。パンツにとめられる布ナプキンを使う、ガードルをはくなどして対応する。
※スキニージーンズなどのぴったりとしたズボンの場合は、人によってはシルエットが浮き出ることがある。気になる人は、事前に鏡などで確認するとよい。
●電気毛布やこたつなど、局所的に体を温める暖房器具との併用は、低温やけどにつながることがあるので避ける。寝ている際におまたカイロをつけても問題はないが、低温やけどには十分気をつける。

この記事は『安心』2022年1月号に掲載されています。
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