くしゃみやセキなどで尿がもれる「腹圧性尿失禁」に対して、とても手軽にできて効果的なセルフケアがあります。やり方はいたって簡単。1分間に10回しゃがむだけの「1分しゃがみ」です。頻尿の方は、陰部と肛門の間(会陰部)を、ゆっくりそっとさする「骨盤底さすり」を続けると、次第に排尿の間隔が長くなり、特に夜間頻尿が改善されてきます。【解説】窪田徹矢(くぼたクリニック院長)

解説者のプロフィール

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窪田徹矢(くぼた・てつや)

くぼたクリニック院長。平成15年獨協医科大学卒業。その後千葉医療センター、成田赤十字病院で研修。平成20年国保松戸市立病院泌尿器科医員、平成21年千葉西総合病院泌尿器科医員、平成23年千葉西総合病院泌尿器科医長、平成27年千葉西総合病院泌尿器科部長を経て、平成29年くぼたクリニック開設。地域に根ざした思いやりのある医療をモットーに、日々診療にあたっている。「筋トレドクター」「バナナ先生」として、YouTubeでも活動中。
▼くぼたクリニック(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

くしゃみやセキで尿が漏れる「腹圧性尿失禁」に有効

中高年になると、尿失禁に悩む人が増えてきます。中でも女性に多くみられるのが、くしゃみやセキなどで尿がもれる「腹圧性尿失禁」です。

この腹圧性尿失禁に対して、とても手軽にできて効果的なセルフケアがあります。それは「1分しゃがみ」という方法です。やり方はいたって簡単。1分間に10回しゃがむだけです。

腹圧性尿失禁の原因は、加齢や出産の影響などで、下腹部にある臓器を下から支えている、骨盤底筋という筋肉が衰えることです。しゃがむ動作をすると、それだけで骨盤底筋を強化する効果が得られます。しゃがんで立ち上がるときに、肛門や膣を締めながら立ち上がると、より効果的です。

しゃがむ動作は、腹筋や下半身の筋力を鍛えるのにも役立ちます。すると、連動して骨盤底筋も鍛えられるので、その意味でも腹圧性尿失禁の改善につながります。

当院では、腹圧性尿失禁に悩む患者さんに、よく1分しゃがみを勧めています。無理のない範囲で行っているだけで、「セキやくしゃみをしても、だんだん尿がもれにくくなる」と、とても喜ばれています。

昔の日本では、和式トイレを使っていたので、しゃがむ動作をひんぱんに行っていました。そのことが、実は骨盤底筋の維持・強化と腹圧性尿失禁の予防に役立っていたのです。

ほとんどのトイレが洋式になり、しゃがむ動作が少なくなった現代は、昔の日本人より腹圧性尿失禁を起こしやすい状態にあるといえます。その分、セルフケアとして「1分しゃがみ」を行うことは非常に大切です。ぜひ取り入れてみてください。

1分しゃがみのやり方

足を肩幅くらいに開いて立ち、しゃがんで立ち上がることをくり返す(1分間かけて10回行うのが目安)。

立つときに、肛門や腟を締めるように意識するとより効果的(尿や便を我慢するときのような感覚)。
ふらつくときは、安定したいすやテーブル、壁などに手をついて行う。
ひざなどが痛くてしゃがめない場合は、痛くない範囲で行うとよい。

画像: 1分しゃがみのやり方

夜間頻尿におすすめのセルフケア

日常的な排尿関係の悩みとして、尿もれと並んで多いのが、頻尿です。特に夜間頻尿に悩んでいる患者さんは多く、当院にもよくいらっしゃいます。

当院で、そんな患者さんたちに勧めているのが「骨盤底さすり」というセルフケアです。こちらもとても簡単な方法で、陰部と肛門の間(会陰部)を、ゆっくりそっとさするだけです。それを続けているだけで、次第に排尿の間隔が長くなり、特に夜間頻尿が改善されてきます。

頻尿の原因として、最も多いのは膀胱が過敏になる「過活動膀胱」です。過活動膀胱になると、膀胱が、本来はもっと尿をためられる状態なのに、不必要に収縮して、頻尿になってしまうのです。

男性の場合は、前立腺肥大症も大きな原因になりますが、その場合も膀胱が過敏になっているのは同じです。

膀胱が過敏になっているときは、自律神経のうち、心身の緊張状態を作り出す交感神経の働きが過剰になっています。

会陰部を優しくそっとさすると、交感神経の過剰な働きを抑えて、代わりに、リラックス状態を作り出す副交感神経の働きを高めることができます。これを習慣的に続けることで、不必要に起こる膀胱の緊張をゆるめ、頻尿を改善できるのです。

どれくらいで頻尿が改善してくるかは個人差が大きいのですが、私は頻尿に悩む患者さんたちには、「まずは1週間続けてみてください」とお話ししています。すると、多くの場合、完全ではなくても排尿回数が減ってくるので、モチベーションが高まり、さらに続けてくれます。

そして1ヵ月ほど続けていると、大部分の患者さんは、日常的に困らないレベルの排尿回数になっていきます。特に「夜間頻尿が改善されて、よく眠れるようになった」と喜ぶ人が多いのです。

骨盤底さすりは、基本的には入浴中に行うことをお勧めしています。お風呂で体を洗うときに、ついでに行うとやりやすいでしょう。

行う際は、決して強く押したり、こすったりしないでください。特に男性は、会陰部を強く圧迫すると、前立腺炎を招くことがあります。そうなると、かえって頻尿を悪化させる場合もあるので、要注意です。

骨盤底さすりのやり方

会陰部(陰部と肛門の間)に人さし指の腹を当て、左右(横方向)に、片道3秒、往復6秒かけて、ゆっくりそっとさする。往復10回行う。

入浴中、体を洗うときなどに行うのがお勧め。ローラー式の専用の器具もある(商品名:ソマプレーン)。
強く押したり、こすったりしないこと。あくまでも優しく行う。

画像: 骨盤底さすりのやり方
画像: この記事は『安心』2022年1月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2022年1月号に掲載されています。

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