解説者のプロフィール

松岡佳余子(まつおか・かよこ)
アジアンハンドセラピー協会理事・鍼灸師。医師の中谷義雄博士の住み込み内弟子として鍼灸修行を始め、中国各地の中医薬大学、中医学院にて研修を行う。高麗手指鍼と出合って以来は、手に特化した鍼灸で効果を上げている。『指をもむと病気が治る! 痛みが消える!』(マキノ出版)など著書多数。
▼アジアンハンドセラピー協会(公式サイト)
手の指の関節部分を8の字形にこすっていく
首や肩、足腰の痛みやしびれなどの症状は、たいてい骨格や筋肉などの体のバランスがくずれていることから生じます。
そんな体のバランスを徐々に整え、症状を改善できるのが、今回ご紹介する「8の字整体」。これは、いろいろな方向から8の字形に手の甲をマッサージするというハンドケアです。
手は全身の縮図になっており、それぞれ全身に対応する反射区(全身の臓器や器官に対応する部位)があります。不調を起こしている場所を直接刺激しなくても、対応する手の反射区を刺激することで、不調のある部位を活性化したり、血流をよくしたりできるのです。
8の字を描いてマッサージするのには、理由があります。8の字は、左右・上下が対称になっている図形であり、この形でマッサージすると、反射区がまんべんなく刺激されて体の自然治癒力が働き、バランスが調整され、弱い部分が修復されるのです。
マッサージは、主に手の関節部分を中心に行います。
例えば、頭痛があるときには、頭に対応する反射区となる中指の第一関節から先を中心にマッサージします。この部分を、縦・横など、いろいろな方向から8の字になるようにこすっていくのです。1ヵ所につき、左回りに10回、右回りに10回、8の字を描くといいでしょう。
また、首や肩こりの場合は、中指の第二関節に交点がくるように第一関節から指の付け根の範囲で8の字にこすります。このように、症状がある部位に対応する手の反射区をマッサージするのです。
できるだけ優しく刺激する方がいい
ところで、反射区は両手に存在しますが、基本的に、痛みが現れている側の手の甲をマッサージします。
例えば、右足のひざが痛い場合は右手の小指に8の字を描きます。左右の手で対応する部位が変わるので、下の「手の甲と全身の対応図」を見て、確認してください。
腰椎の反射区となっているのは、手の甲の中心部分です。腰痛の場合は、どちら側が痛いのかわからないことがよくあります。その場合には、両手の甲の中心部分をそれぞれこぶしで強くたたいてみて、より痛みを感じた方の手に、大きく8の字を描くようにします。
もし、どちらの手にマッサージしたらいいのかわからないときは、利き手でない側の手の甲に8の字を描きましょう。右利きの人なら、右手の親指で左手の甲を刺激するわけです。
●手の甲と全身の対応図

マッサージは、あまり強くやる必要はありません。むしろ、できるだけソフトに、優しく刺激を与えた方が効果が出るケースが多いのです。
私たちは洋服を買うとき、生地の具合を見るためにそっと優しく指先で触れますね。それでも、どんな生地なのかすぐさま把握できます。このことからもわかるように、ごく弱い刺激でも、指の刺激は脳がキャッチしやすいのです。
8の字整体は、ピンポイントでツボを刺激するわけではなく、あくまでも面で反射区を刺激します。これにより皮膚の表面の受容器に刺激が送られ、反射区に対応する体の部位を修復するように脳が働き始めるというわけです。
上の対応図を見るとわかるように、手の甲は全身の骨格や関節を反映しているため、8の字整体は全身に効果があります。前述したひざ痛や腰痛のほか、頭痛、首の痛み、股関節の痛みに効くやり方を次項に載せてあります。
8の字整体のいいところは、副作用がなく、安全に、いつでもどこでもできるところです。みなさんも、体に不調を感じるときは、ぜひ試してみてください。
8の字整体のやり方
基本的なやり方
●痛みがある側の手の甲を、反対側の手でマッサージするのが基本。
●力を入れず、親指でなでるように8の字を描く。左回りに10回ほどマッサージした後、右回りに10回ほどマッサージを行う。
●8の字を描く前と後に首や肩を動かし、動きがよくなっていることを確認すること。



左回りと右回りの両方を行うことで、8の字の中心となるポイントをたくさん刺激することができる。
頭痛があるとき
中指の第一関節より先を、8の字を描くようにマッサージする。爪の上からスタートし、爪の回りを1周してから下の円を作るようにするといい。左回りに10回、右回りに10回行う。

首~肩が痛いとき
中指の第一関節と指の付け根の間を、8の字を描くようにマッサージする。左回りに10回、右回りに10回行う。

ひざが痛いとき
小指の第二関節で交差するように、第一関節と小指の付け根との間で8の字を描く。左ひざが痛むときは左手の小指、右ひざが痛むときは右手の小指に行う。左回りに10回、右回りに10回行う。

ひざの内側が痛むなら、痛む方の側の手(右ひざなら右手、左ひざなら左手)の小指の内側に行う。小指の第二関節を中心に8の字を描く。左回りに10回、右回りに10回行う。

腰が痛いとき
腰の右側の痛みなら右手、腰の左側の痛みなら左手の甲の中心部をマッサージ(※)。中指の付け根から手首付近まで大きな8の字を描く。左回りに10回、右回りに10回行う。
※左右どちらの腰が痛いのかわからない場合、左手および右手の甲の中心部をそれぞれこぶしでたたき、より痛みを感じた方に行う。

股関節が痛いとき
薬指と小指の付け根の間を中心に8の字を描く。左の股関節に痛みがあるなら左手、右の股関節に痛みがあるなら右手に行う。左回りに10回、右回りに10回行う。


この記事は『安心』2022年1月号に掲載されています。
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