輪ゴムを手や指に巻くと皮膚、筋肉、腱などが圧迫されます。すると、そこに分布する神経受容器が刺激され、自律神経の中枢に伝わります。交感神経の活動が抑制され、毛細血管内の血液の流れがよくなり、緊張していた筋肉も弛緩するため、手のひらや指のむくみが解消され、指を深く曲げられるようになるのです。【解説】原幸夫(いいだ整骨院院長)

解説者のプロフィール

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原幸夫(はら・ゆきお)

いいだ整骨院・鍼灸院/いいだカイロプラクティック院長。むくみを関節拘縮の主因と捉えて研究している。アキレス腱断裂保存歩行療法(手術せず歩行しながら短期固定で治す治療)を行っている。著書に『ねこ背がスッキリ治る本』(中経出版)、『硬い体が驚くほどやわらかくなるストレッチ』、『図解正しい整体治療』、『ねこ背をぐんぐん治す!200%の基本ワザ』(いずれも日東書院)ほか。
▼いいだ整骨院・鍼灸院/いいだカイロプラクティック(公式サイト)

3分だけ圧迫してむくみを解消するセルフケア

私が「3分チャーシュー巻き」を考案したのは、5年ほど前のこと。最初のきっかけは、ある一人の患者さんです。

それは、40代の男性で、工作機械に手が巻き込まれ、3ヵ所の指の骨折があり、手のひらの表皮が大きくはがれてしまったかたでした。

私のところにやってきたときは、外科的な治療はひと区切りついたあと。しかし、男性の手の状態は完治とはほど遠いものでした。手のひらや指のむくみがひどく、指が動かないという症状に悩んでいたのです。

そこで役に立ったのが、今回ご紹介する、輪ゴムを用いる3分チャーシュー巻きです。

この方法を試したところ、手のひらや指のむくみが解消され、指を深く曲げられるようになりました。その後、手指の悩みを抱える人たちにこの方法をお勧めしています。その結果、多くのケースで効果が上がることを確認できました。

それでは、輪ゴムを巻く前に、指の状態を確認しておきましょう。

まず、人差し指と中指でVサインを作って、指と指の開き具合を確認してください。

次に、指を折り畳むように、第1関節と第2関節を曲げて指を握ってみましょう。指に腫れや変形がなければ、指の腹部分に空間が開かないはずです。

これらをチェックしたうえで、指に輪ゴムを巻いてみましょう。具体的なやり方は、下項を参照してください。

輪ゴムを巻いて、3分程度そのままにしてください。動かすのに問題がなければ、家事などの作業を行ってもかまいません。

3分経ったら、輪ゴムを外します。そして、事前にチェックした動作を再度行ってみてください。すると、指の動きがよくなっているはずです。指が細くなり、握る動作が行いやすくなっているでしょう。

3分チャーシュー巻きは、少なくとも朝晩2回行いましょう。時間に余裕があれば、もっと頻繁に行ってもかまいません。毎日、これをくり返せば、動かなかった指が動くようになり、痛みなども軽快していくでしょう。

3分チャーシュー巻きのやり方

指の炎症がひどい場合は行わない。
うっ血に注意する。
朝晩1回ずつ行うのがお勧め。もっと行ってもかまわない。
逆の手にも症状があれば、同様に行う。

【用意するもの】
・輪ゴム10本

輪ゴムを5本用意し、症状があるほうの手の手首から5本それぞれの指に、1回交差させながら1本ずつ輪ゴムを巻く。

画像1: 3分チャーシュー巻きのやり方
画像2: 3分チャーシュー巻きのやり方

残った輪ゴム5本をそれぞれの指に、2回交差させながら巻く。3分巻いたままにしたあと、輪ゴムを取る。

画像3: 3分チャーシュー巻きのやり方
画像4: 3分チャーシュー巻きのやり方

「痛気持ちいい」程度に巻くことが大事

なぜ、指のチャーシュー巻きでむくみが取れて、指が細くなり、指が握れるようになったり、手が軽いと感じたりするのでしょうか。

輪ゴムを、手や指に巻くと皮膚、筋肉、腱などが圧迫されます。すると、そこに分布する神経受容器が刺激され、上行性神経を介して脳の自律神経の中枢に伝わります。

自律神経とは、私たちの意志とは無関係に働き、血管や内臓をコントロールしている神経です。主に日中、活動的なときは交換神経が優位に働き、主に夜間、休息時には副交感神経が優位に働きます。

輪ゴムを巻くことによって、交感神経の活動が抑制されます。その活動低下により、いちばん細い細動脈(毛細血管へ繋がる動脈)の血管が拡張。毛細血管内の血液の流れがよくなり、指にたまっていた老廃物が流れ出ていきます。

また、交感神経の活動低下は緊張していた筋肉を弛緩させます。筋肉による血管の圧迫がなくなることでも、血液が流れやすくなります。

これらの効果により、むくみが解消し、指が細くなるのです。筋肉が緩むと指の関節の動きが滑らかになります。

むくみがあると指が曲がりにくいのは、水が大量に入ったビニール袋を折りたためないのと同じ理屈です。指を動かすためには、まずむくみを取ることが重要なのです。

ちなみに、指だけでなく、前腕にも輪ゴムを巻くとなお効果が高まります。腕の太さや長さにもよりますが、2~4本程度を3ヵ所に分けて巻きましょう。こちらは10分程度巻いたままにしておくのがお勧めです。

なお、指の炎症がひどいときは、輪ゴムを巻くことを控えてください。また、うっ血などには十分気をつけましょう。痛気持ちいと感じる程度の強さで巻くのが肝心です。

画像: この記事は『壮快』2022年1月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年1月号に掲載されています。

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