血圧が気になるかたなら、ACE阻害薬というのを聞いたことがあるでしょう。高血圧の患者さんに降圧剤として使われる薬です。甘酒には、ACEの働きを抑えるという点で、薬と同じ作用があります。ココアにも、血圧降下作用があるカカオポリフェノールがたっぷり入っています。ココア甘酒でダブルの血圧降下作用が得られるというわけです。【解説】渡辺尚彦(日本歯科大学附属病院内科医師・臨床教授)

解説者のプロフィール

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渡辺尚彦(わたなべ・よしひこ)

日本歯科大学附属病院内科医師・臨床教授。1978年、聖マリアンナ医科大学医学部卒業。84年同大学院博士課程修了。医学博士。前東京女子医科大学東医療センター内科教授、愛知医科大学客員教授、早稲田大学客員教授。専門は高血圧を中心とした循環器病。87年8月から連続携帯型血圧計を装着し、以来365日24時間血圧を測定。現在も継続記録更新中。近著に『血圧を下げる最強の方法』(アスコム)がある。
▼日本歯科大学附属病院(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

甘酒に含まれるポリペプチドの降圧作用とは

私は30年以上、24時間血圧計を腕に巻き、自分の血圧を記録し続けています。血圧が上がるタイミングや、どうしたら血圧が下がるのかを考察し、これまでに数多くのセルフケアを紹介してきました。

セルフケアというものは、毎日手軽にできる方法でないと続きません。それが食品であれば食べやすくておいしいというのも、重要なポイントでしょう。

今回は、食べ物によるセルフケアをお教えします。それが、「ココア甘酒」です(作り方は下項を参照)。

温かくて甘いココアは、おいしいものです。甘酒もしかり。「そんな組み合わせで、血圧が下がるなんて」と思われるかもしれませんが、れっきとした根拠があります。

まず、甘酒の降圧作用についてお話ししましょう。

甘酒は、栄養成分の構成が点滴に近いため「飲む点滴」と称されます。それほど栄養価が高く、病後の滋養強壮や夏バテ対策に向く飲み物です。

甘酒の成分のうち、その降圧作用が最も注目されているのはアミノ酸の仲間である、ポリペプチドです。

体内で生成される、アンジオテンシンⅠという物質があります。これは血圧になんら関与しませんが、アンジオテンシン変換酵素(ACE)という酵素の作用で、アンジオテンシンⅡというホルモンに変わると、強力な作用で血圧を上昇させます。

甘酒のポリペプチドには、アンジオテンシンⅠがⅡに変わるのを抑える作用があります。これが結果として血管を拡張させ血圧を下げるのです。

血圧が気になるかたなら、ACE阻害薬というのを聞いたことがあるでしょう。高血圧の患者さんに降圧剤として使われる薬です。甘酒には、ACEの働きを抑えるという点で、薬と同じ作用があります。

実際、私の患者さんにも、甘酒で血圧を下げた人がいます。生活習慣の改善でだいぶ下がったのですが、あとひと息といったときに、甘酒が好きだというので勧めてみたのです。

すると、なかなか下がらなかった最小血圧が、開始後3ヵ月で徐々に下がってきました。おいしく無理なく降圧でき、喜んでいらっしゃいます。

カカオポリフェノールが血管の炎症を抑制

かたやココアの降圧効果といえば、近年よく知られるようになった、カカオポリフェノールの作用です。

カカオポリフェノールの主要成分であるエピカテキンは、消化されると小腸で吸収され、血液に乗り全身に送り出されます。これが血管内部に定着し活性化すると、血管の炎症が抑えられ血流がよくなります。そのため血圧が下がるのです。

ココアではありませんが、同じカカオポリフェノールについての研究があります。愛知県で行われた「蒲郡スタディ」と呼ばれる大規模調査です。

それによると、カカオポリフェノールを70%以上含有する、いわゆる高カカオチョコレートに血圧降下作用があるとがわかっています。食べる量は1日に25gと少量で効果がありました。

ほんの少量でいいというのは、それだけ血圧を下げる作用が高いということ。もちろんチョコでもいいのですが、ココアにもカカオポリフェノールがたっぷり入っています。

そこでお勧めなのが、ココア甘酒です。甘酒とココアパウダーをいっしょにとれば、1杯でダブルの血圧降下作用が得られるというわけです。

ココアパウダーは、砂糖や粉乳があらかじめ添加されている商品ではなく、カカオ100%のピュアココアを選んでください。牛乳や豆乳などで溶いてココアを作る際、甘酒を加えてもいいですし、もっと簡単に、甘酒にココアパウダーを加えて混ぜるだけでもいいでしょう。

甘酒が、ぽってりした濃縮タイプか、そのままドリンクとして飲めるストレートタイプかによって、1日にとる適量が違ってきます。いずれにせよ、糖分が多いので、とり過ぎないよう注意してください。ホットで飲む場合は、甘酒の発酵食品としての機能を生かすよう、軽く温める程度にしましょう。

私は幼いころから、母が作ってくれる甘酒が好きでした。今は市販の甘酒を飲んでいます。先述した患者さんも、市販品を利用していました。続けることが肝心ですから、無理のない形で実践してください。

ココア甘酒の作り方

画像: ココア甘酒の作り方

材料(分量は好みで調整)
甘酒…50~100g
ピュアココアパウダー(無糖)…小さじ1
牛乳または豆乳(好みで)…適宜

作り方
牛乳や豆乳にココアパウダーを溶いてココアを作り、甘酒を加えて飲む。または、甘酒にココアパウダーを入れて混ぜ、スプーンですくっていただく。

甘酒の作り方

画像1: 甘酒の作り方

材料(出来上がり目安量=850g)
米…1合(150g)
こうじ(乾燥)…200g(手でよくほぐしておく)
水…500ml

画像2: 甘酒の作り方

米をとぎ、炊飯器の内釜に入れ、分量の水のうち300mlを注ぎ、30分ほど浸水させる。米が水を吸って白くなったら、炊飯器の「おかゆモード」でおかゆを炊く(鍋で炊いても可)。

画像3: 甘酒の作り方

①が炊き上がったら、残りの水200mlを加えて混ぜる。これで発酵に適した温度に下がる。こうじを加え、さらによく混ぜる。

画像4: 甘酒の作り方

内釜の上にふきんをかけ、炊飯器のふたは開けたまま、「保温モード」で発酵させる。ムラなく仕上がるよう、約3時間ごとに混ぜ返す。8~10時間おいたら出来上がり。

画像: エネルギー:1109kcal 糖質:231.2g(全量) このまま食べてもおいしい!

エネルギー:1109kcal 糖質:231.2g(全量)
このまま食べてもおいしい!

とり方
そのまま食べる。ドリンクとして飲む場合、このままでは固形に近く飲みづらいので、水や好みの飲料で2~3倍に薄めるとよい。
料理には、砂糖のかわりに調味料として使える。発酵の力で旨みが加わるうえ、肉や魚の漬け込みに使うと、たんぱく質が分解されてやわらかくなる。

画像5: 甘酒の作り方

保存について
完成後は清潔なふたつきの容器やチャックつき袋に入れ、冷蔵庫で保存。2週間ほど日もちする。冷凍の場合は1ヵ月ほど保存可能。

画像: この記事は『壮快』2022年1月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年1月号に掲載されています。

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