さすがに「ダンスを踊れ」といわれたら、現役のようにはできません。でも、日常生活を問題なく送るためのバランス感覚や足の筋力が維持できているのは、日ごろの「ながらつま先立ち」が少なからず役立っていると感じています。宝塚時代と服のサイズは変わっていないので、スタイルも維持できているのではないでしょうか。【体験談】山本清美(元宝塚歌劇団星組・株式会社富士山靜養園代表取締役)

プロフィール

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山本清美(やまもと・きよみ)

元宝塚歌劇団星組在籍。主な役柄は『ベルサイユのばら』ロザリー役など。退団後、NHKドラマ『二本の桜』(文化庁芸術作品賞受賞作品)やNHK朝の連続テレビ小説『ええにょぼ』などに出演。現在は静岡県朝霧高原にて「朝霧高原診療所」をサポートしながら、株式会社富士山靜養園として滞在施設「日月倶楽部」を運営している。日本舞踊花柳流専門部名取。

バランスが取れて体幹が鍛えられていると実感

私は、平成元年まで宝塚歌劇団・星組に在籍し、娘役として数々の舞台に出演しました。

退団後は、NHKのドラマ出演などを経験したあと、一般企業に就職。後に、コンサルティング会社を立ち上げました。

43歳で結婚を機に退任。医師である夫が富士山麓の朝霧高原(静岡県富士宮市)に診療所を開院したことに伴い、当地に移住しました。そこで、滞在施設「日月倶楽部」を設立し、私が代表を務めることになりました。

現在は、宿泊客に料理を提供し、自然の中での体験プログラムの企画・コーディネートを行っています。

まさかこんな山の中で、自然を相手に油圧ショベルを動かしたり、チェーンソーを使ったりするとは、私自身、想像していませんでした。元タカラジェンヌでも、こんな転身は珍しいのではないでしょうか。

今の生活を始めて感じたことは、労働と運動は違うということです。

宝塚時代はもちろん運動をしていましたし、私は退団後も日本舞踊を続けて名取(師範)を取得しています。数年前までは、日本舞踊の要素を取り入れた、足腰を鍛える「和体操」を考案し、若い人に教えたりもしていました。

宝塚での活動や日本舞踊を続けているうちに、知らず知らずのうちに体幹が鍛えられていたのでしょう。ほかのかたができないような動きも、私は楽々できることも多く、体力や、筋力には自信がありました。

ところが、旅館業が忙しくなり、和体操ができなくなると、とたんに衰えを感じました。訪れたかたを山へ案内したとき、「こんなにしんどかったっけ?」と思ったのです。ふだん、労働で体を動かしているとはいえ、それは筋肉にアプローチする運動にはなっていなかったことを痛感しました。

「なんとかしなければ」と思ったものの、忙しく、運動に時間を割く余裕はありません。そこで思いついたのが、すき間時間を利用することです。

そこで私は、歯を磨いているときになんとなくつま先立ちをしてみました。すると、最初はグラグラしていたのが、続けるうちにバランスが取れるようになり、体幹が鍛えられていることがわかりました。

以来、もう5年間、歯磨きのときとドライヤーで髪を乾かすときは、欠かさずつま先立ちをしています。

お尻とおなかを締めると体がぐらつかない

画像: つま先立ちをする山本さん

つま先立ちをする山本さん

私がつま先立ちをするときに意識しているのは、小指(第5趾)側に重心をかけるのではなく、足の内側に力を入れて、5本の指にバランスよく体重をのせて立つこと。そうすることで、腰から太もも、ふくらはぎの裏側が引き締まる感じがします。

バランスを取るために、つま先立ちのまま何歩か歩くこともあります。

足を肩幅くらいに開いて立ち、つま先は軽く「逆ハの字」に開いた状態でつま先立ちをすると、バランスが取りやすいと思います。お尻とおなかをキュッと締めると上半身が安定して、ドライヤーをかけるのに手を動かしても、体はぐらつきません。

よく、年齢を重ねると、片足立ちで靴下をはくのが難しくなるという声を耳にします。私は57歳の現在、目をつぶって片足立ちもできますし、どこにもつかまらず靴下がはけます。

さすがに「ダンスを踊れ」といわれたら、現役のプロのように高く足を上げたりすることはできません。でも、日常生活を問題なく送るためのバランス感覚や足の筋力が維持できているのは、日ごろの「ながらつま先立ち」が少なからず役立っていると感じています。

宝塚時代と服のサイズは変わっていないので、スタイルも維持できているのではないでしょうか。姿勢もいいといわれます。

目標は、いつまでも自分の足でちゃんと歩くこと。どんな健康法を取り入れるにしても、健康になることが最終目標になるのは違うと思っています。

健康とは、自分のやりたいことをやるために必要なもの。そのためにつま先立ちやつま先歩きが役立つのであれば、これからも続けていこうと思います。

体の表層から深部までくまなく筋肉を強化
佐藤診療所所長 佐藤周三

つま先で立ったり歩いたりすると、お尻の大殿筋や、太ももの裏側のハムストリングス、腹筋などの表層筋のほか、インナーマッスル(体の深部にある筋肉)も使います。

山本さんは長年つま先立ちやつま先歩きを続けているとのこと。毎日継続することで、表層筋から体の深部の細かい筋肉に至るまで、くまなく鍛えることができているのでしょう。

[別記事:筋肉と脳が鍛えられフレイルを予防 脳神経外科医がすすめる「つま先歩き」→

画像: この記事は『壮快』2022年1月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2022年1月号に掲載されています。

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