解説者のプロフィール

佐藤俊介(さとう・しゅんすけ)
アボカド料理専門店「マドッシュカフェ」オーナー・料理人。日本初のアボカド料理専門店マドッシュカフェを東京の渋谷2007年にオープン。おしゃれな盛り付けを求める女子や、量を求める中年男性まで幅広いお客さんに支持される。著書『365日アボカドの本』(PHP研究所)発売中。
アボカドはすき焼きやおでんの具にも最適
私は2007年に、日本で初めての「アボカド料理人」として活動を始め、アボカド料理専門店を営んできました。レシピ本を書いたり、テレビ番組に出演したりもして、アボカド料理の普及にも努めてきました。
最近は、アボカド人気が高まっているように感じます。実際、アボカドの輸入量は右肩上がりで、昨年は過去最高を記録しています。
また、東京五輪でスケートボード金メダリストとなった堀米雄斗選手も、アボカドをご飯に乗せ、バター、しょうゆ、塩コショウで味付けしたアボカド丼を「パワーの源」だとテレビ番組で紹介していました。
私がアボカド料理人になった当時は、一つの食材に的を絞った飲食店はまだ珍しい時代でした。
その頃、私はアボカドは魅力的な食材なのに、食べ方のバリエーションが少ないと感じていました。意外な食材と組み合わせたり、調理法を工夫したりして、新しい味の世界を作り出せるのではないかと、挑戦が始まったのです。
こうしてアボカド料理を研究して実感したのは、アボカドには「他の食材をおいしくする力がある」ということです。口の中でアボカドは、他の食材のおいしさを引き立てるのです。
アボカド自体の味は癖がなく、さほどインパクトはありません。ところが、しょうゆを少し垂らすだけで濃厚な味に一変。しょうゆの味まで引き立ててくれます。
そういう意味で、アボカドと白いご飯は似た存在かもしれません。何かをかけたり、乗せたりすることで双方の存在感が増し、主役級のおいしさになるのです。
意外に感じる人も多いと思いますが、アボカドは和食との相性も抜群です。納豆やみそ汁に入れるという人が増えていますが、すき焼きやおでんの具にしても非常においしく食べられます。実は、だしやみそといった日本古来の食材との相性がいいのです。
「健康にいい」というのも、アボカド人気の理由の一つのようです。
以前、私のお店に中年男性がいらっしゃって、「糖尿病があるから血糖値が上がらないように気をつけているけれど、その点、アボカドはいいよね。アボカドをつまみに飲めるのがありがたい」と話していて、とても印象に残っています。
アボカドは季節を問わずに食べられるのもよい点です。日本で流通しているアボカドは99%が輸入品で、そのほとんどがメキシコ産です。アボカドは寒暖差が大きい気候が栽培に適していますが、メキシコでは土地の標高差をうまく活かし、1年を通じて収穫できるようにしています。だから、おいしいアボカドが常に手に入るのです。
食べ頃の見分け方は「レモンの硬さ」
アボカドをおいしくいただく秘訣は、なんといっても適熟(ちょうどいい熟れ具合)のときに食べることです。
見た目でいうと、色つやがよく、実にハリがあり、皮がチョコレートのようなこげ茶色のときが食べ頃です。
手触りでいうと、持ったときに手にしっとりと吸い付くような感じがあり、アボカドがそっと押し返してくるような弾力があるときが食べ頃。わかりやすく表現すると、「レモンの硬さ」がOKで、「ミカンの硬さ」は熟し過ぎです。
最近はスーパーなどの売り場で、見るからに未熟な緑色のアボカドはあまり見かけなくなりました。流通や管理が進歩したおかげかもしれません。
最後に、私のお勧めレシピを紹介しましょう。アボカドと季節のフルーツで作るヘルシーデザートです。
日本では料理の具材のイメージが強いのですが、アボカドは果物に分類されます。実際、デザートとして食べる文化が根強い国もあります。
例えば、ベトナムでは日本でいう「あんみつ」のようなスイーツにアボカドを入れます。彼らからすると、「えっ、日本ではアボカドをしょっぱい味つけで食べるの?」と不思議なくらいでしょう。
普段とは違う感覚のアボカドのデザート。おいしいですから、ぜひお楽しみください。
アボカド入りフルーツポンチ「マチェドニア」

『365日アボカドの本』(PHP研究所)より。料理写真/小林キユウ
材料(4人分)
アボカド……1個
バナナ……1本
イチゴ……5個
キウイ……1個
グレープフルーツ……1/2個
ブドウ……10~15粒
ブルーベリー……適量
ハチミツ……大さじ3
レモン汁……大さじ2
炭酸飲料……適量
❶フルーツの皮を全てむいて、お好みの形と大きさに切る。
❷①にハチミツ、レモン汁を加えて、優しくあえたら食品用ラップをして冷蔵庫で冷やす。
❸器に盛り、食べる直前に炭酸飲料を器の半分くらいまで入れてさっと混ぜる。お好みでミントの葉(分量外)を飾る。

この記事は『安心』2021年12月号に掲載されています。
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