解説者のプロフィール

廣田百恵(ひろた・ももえ)
1981年、兵庫県生まれ。ブライダルモデルとして活動後、関東・関西を中心にモデル・タレント活動を行う。ヨガ講師としても活躍し、10年間で延べ5万人を指導。運動が苦手な人や、時間がない人向けに、手軽で効果の高いヨガ指導を行う。ヨガ・ピラティス・バレエストレッチを融合させた、「ハンモックエアー」を開発。神戸ハンモックエアースタジオAmaranth代表として、ハンモックエアーの普及を行っている。
▼Moeチャンネル(YouTube)(登録者数12.2万人※2021年10月現在)
つま先立ちをすると重心が整う
私は、幼い頃にクラシックバレエを習っていました。当時は、バレエの練習を長く休むとなぜか脚がひどくむくんで、足首がゾウのようになったものです。しかし、練習を再開すると脚は元に戻ります。
この経験から、バレエの基本姿勢である「つま先立ち」と脚の状態には、何か関係があるのではないかと感じていました。
その後、私はバレエをやめて和装モデルの仕事を始めました。このとき困ったのが、脚のゆがみです。
和装モデルをすると、当然、正座をする機会も増えます。正座は、左右の足の親指を重ねてその上にお尻を乗せるので、脚の内側の筋肉がゆるみ、外側の筋肉ばかりを使う姿勢になってしまいます。
それが影響したのか、この仕事を始めてから、ひどいO脚になってしまったのです。
靴の裏を見てみると、靴の外側だけがすり減っています。そこで、試しにつま先立ちを行ったところ、小指に重心が乗っていることに気がつきました。
「昔のようにつま先立ちを行えば、体の重心が元に戻るかもしれない」と思った私は、これを機に、つま先立ちを再開。すると、重心は足の全ての指に乗るようになり、たちまちO脚が改善したのです。靴の裏も、均等にすり減るようになりました。
このO脚は、15年前の出産後にも悪化しましたが、骨盤ケアと並行してつま先立ちを続けたところ、すぐに脚のラインが整いました。
今でも和装の仕事が続くと、どうしてもO脚になってしまいます。しかし、1週間ほどつま先立ちを続けるだけで、脚のラインはまっすぐに戻るのです。
そんな1週間で変わる脚の変化が面白かったので、動画サイトのTouTubeで、自分の脚の変化を紹介したところ、大きな反響がありました。握りこぶし二つ分ほども開いていた両ひざの隙間が数cmほどになった写真を見た視聴者からは、驚きの声が寄せられました。
そんな経験もあったので、現在は自分のスタジオでも、つま先立ちを紹介しています。

こぶし2つ分ほどの隙間があったO脚が改善し、まっすぐになった!
ヒップや下腹部の引き締め効果も
つま先立ちを習慣にすると、O脚だけでなく、下半身のラインも美しくなります。どういうことか、簡単に説明しましょう。
つま先立ちをすることで、足の外側に偏っていた重心が内側に戻ります。この状態になれば、脚の筋肉を均等に使えるようになるので、脚のラインが整うことにつながります。
さらに、重心の位置が中心に戻れば、外側にくずれていた体のバランスも整います。そのため、足首をキュッと締めたりヒップラインや下腹部を引き締めたりする効果も期待できます。
実際、スタジオの生徒さんの中には、「体重は変わらないのに脚がやせた」「閉まらなかったスキニーパンツのチャックが閉まった」という人もいました。
ある生徒さんは、股関節の大転子(大腿骨の上の外側にある出っ張り)が、外側に大きく張り出していました。それが、つま先立ちを行っただけで、出っ張りが消えてボディラインが整ったのです。
実は、O脚の人の場合、脚の内側の筋肉が衰えることで、大転子が外側に張り出すケースが珍しくありません。つま先立ちは、そんな骨盤周りのラインを整えるのにも役立ちます。
つま先立ちの効果は、他にもあります。
①腰痛
私は、和装の仕事を始めてから、腰痛にも悩まされていました。同じ姿勢を続けるため、腰が痛くなってくるのです。
もしかすると、O脚で体を支える脚が不安定になり、骨盤がゆがんだことも関係しているのかもしれません。
この腰痛も、他のエクササイズと並行してつま先立ちを続けた結果、今は改善しています。
②冷え症
私は足先の冷えがひどく、冬になると、モコモコの厚い靴下が手放せませんでした。
しかし、つま先立ちを始めてから、この冷えが解消。室内であれば、冬でもはだしで過ごせるようになりました。
さて、つま先立ちのやり方ですが、私自身は、バレエの基本姿勢である「ルルベ」を行っています。これは、つま先を外側にやや開いてお尻を締め、左右のかかととひざの間が開かないようにしながらかかとを浮かせるというものです。
しかし、ルルベはバランスを取るのが難しいため、脚のゆがみのひどい人や高齢の人には、あまりお勧めできません。
そんな人でもらくに行えるとして、私がスタジオでお勧めしているのが、いすに座って行うつま先立ちです。
これは、いすに浅く腰かけた状態で、かかととひざをくっつけながら、かかとを10秒間浮かせるというものです(具体的なやり方は下項を参照)。
この方法なら、腰痛やひざ痛がある人でもらくに行えます。もし、ひざがどうしても開いてしまう場合は、ひざとかかとの間に、タオルや本を挟みながら行うといいでしょう。
座って行うつま先立ちのやり方
・行うタイミングや回数に指定はない。毎日続けやすいよう、調整しながら行う。
・ひざがどうしても開いてしまう場合は、隙間と同じ幅の本やタオルを挟む。
・つま先はやや外側に開く。バレエの「ルルベ(つま先立ち)」のイメージで行うとよい。
・指先の感覚がつかみやすいよう、はだしか5本指靴下で行う。

❶いすに浅く座った状態で、かかととひざをくっつける。
❷ひざとかかとをつけたまま、5本の指全てを使うイメージで、かかとをゆっくりと浮かせて10秒間キープする。
❸かかとをゆっくり下ろす。
脚のラインがゆがんでいる人の中には、ひざ痛に悩まされている人も多いようです。
Aさん(50代女性)も、右ひざの痛みに悩んでいました。この人はXO脚(太ももやひざが付く一方ひざから下が外側に曲がっている状態)で、右脚が特に大きく曲がっていました。
そこで、いすに座ってつま先立ちを行ってもらったところ、ひざの痛みは徐々に軽減。3ヵ月後には、立った状態でつま先立ちができるようになりました。さらに半年後には、ひざの痛みも消え、脚のラインもまっすぐに整いました。
いすに腰かけて行うつま先立ちは、転倒の心配がないため、高齢者の脚の筋肉の強化やリハビリ後のトレーニングにもお勧めです。4年前に右大腿骨を骨折した私の母も、治療を終えた後に、つま先立ちを含めたトレーニングを続けています。
痛み知らずのきれいで健康な脚を維持するために、ぜひつま先立ちをお試しください。

この記事は『安心』2021年12月号に掲載されています。
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