解説者のプロフィール

平田真知子(ひらた・まちこ)
昭和45年より独学で薬草の研究を始め、その後、長崎市の植物学者・高橋貞夫先生に師事し、薬草研究を行う。昭和60年より各地の薬草会の指導を始め、自治体の健康づくり大会で健康相談や、保健所、公民館、老人会や農協などで講演などを行う。主宰する「薬草の会」には数百名もの会員が40~100歳という幅広い年齢で在籍している。会員は皆、声にハリがあって大きく、肌ツヤよく、認知症やがんとは無縁で過ごしている。
▼マチコばあちゃんの薬草歳時記(You Tube)
今が摘みどき、作りどき!
「竹」
【効果・効能】疲労回復、健胃、整腸
中国では古くより薬として使われてきた
2021年も、新型コロナウイルスに明け暮れた1年でした。未だ収束には至らず、私が主宰する薬草の会でも、薬草取りに出かけたり、食事を共にしたりすることは、ほとんどなくなりました。マスクをしないで会話をしていたのが、遠い昔のようです。
ごく当たり前の日常がどれほどありがたいものであったか、改めて気づかされますね。けれども、今だからこそ、できることもあると私は思います。せっかくめったにない体験をしているのですから、私も自分の体を使って、いろいろなことを試しています。
その中で、「これはなかなかいい」と今さらながら思うものに「竹」があります。
近頃は荒れた竹林が増え、邪魔者扱いされていますが、日本では昔から、物干しざおやかご、うちわを作る際に使用したり、おむすびを竹の皮で包んだりなど、生活のあらゆる場面で竹が使われてきました。最近は、竹の持つ抗菌性や抗ウイルス性、殺虫性なども注目されているようです。
イネ科タケ亜科に属する竹は、種類がとても多く、マダケ、モウソウチク、ハチク、ケイチク、クロチクなどが有名です。日本国内だけでも、600種類以上もあるというからびっくりです。
春一番に頭を出すタケノコは、食物繊維が豊富で、腸内環境を整える効果があります。また、竹の葉には、血をきれいにする働きがあるとされ、中国では古来生薬(漢方薬の原材料)として使われてきました。
体力を回復させ、不老長寿にもつながるということで、薬草の会の皆さんは、もっぱら薬草茶や薬酒にして飲んでいます。そのおかげか、200人ほどいる薬草の会の会員には、大病を患ったり、認知症になったりする人は1人も出ていません。
薬草茶や薬酒にして飲むのがおすすめ
さて、年中手に入る竹の葉ですが、春から初夏にかけての竹は、タケノコに栄養をとられるので、葉が黄変します。そして、一般的な木々が紅葉し始める秋から冬にかけてが、実は竹の成長期です。俳句でも、「竹の秋」は春の季語、「竹の春」は秋の季語として用いられます。
そんなわけで、竹の葉はまさに今が摘みどきです。
薬草茶に用いるには、採取した竹の葉をきれいに洗って乾燥させ、ミキサーで粉状にします。私たちが薬草茶として飲むときは、竹単独ではなく、数種類の薬草をブレンドします。麦茶を少し入れると草臭さが消えるので、ぜひ足してみてください。
薬草にお湯を注ぐだけでは成分が出にくいので、3〜4Lの水を入れたやかんに、竹と他の薬草10〜20gほどを入れ、一度沸騰してから5分ほど中火にかけておくと、薬草茶の完成です。
これは、煎液のように成分が濃くないので、好きなときに何杯飲んでも結構です。
薬酒にするのもお勧めです。これも作り方は簡単です。きれいな瓶を用意し、枝から外した葉を底から1/3くらいにまで入れます。抽出される有効成分を増やすために、竹の葉は、上からぎゅっと押さえて、隙間がないように詰めてください。
瓶の底から1/3くらいの高さまで葉を詰めたら、アルコール度数35%以上の酒を、瓶の口元まで注ぎます。
口元ぎりぎりまで注ぐのは、瓶の中に空間があると酸化しやすいからです。さらに、ビタミンC(アスコルビン酸)の原末を酸化防止剤としてそこに加えます。1Lにつき、5〜10g入れるとよいでしょう。これを、そのまま冷暗所に3ヵ月ほど置けば出来上がりです。
なお、葉を洗わないで作った場合は、3ヵ月ほどたったら、さらしできれいにこして、液体のみを保存するようにしてください。
お酒が好きな人はそのまま、アルコールが苦手な人は、一度アルコールを煮切ったものを、1日にさかずき1杯ほど飲みましょう。
1日に数十cmも成長する竹は、たくましい生命力の象徴です。また、お正月の門松にも使われる縁起物でもあります。大いに活用して、来年もコロナに負けない元気な体をつくっていきましょう。
体力を回復させる竹の葉の薬酒
用意するもの
容量2Lの保存瓶
竹の葉……適宜
酒(アルコール度数35%以上)……2L
ビタミンC(アスコルビン酸)……10~20g

作り方
❶竹の葉を枝から外す。
❷保存容器の1/3くらいまで竹の葉を入れ、酒を瓶の口元ぎりぎりまで注ぐ。
❸3ヵ月ほど冷暗所に寝かせたら出来上がり。

※1日さかずき1杯を、寝る前に飲む。アルコールを飛ばしたものは、いつ飲んでもよい。
※酒は焼酎、ホワイトリカー、ブランデー、泡盛など。アルコール度数が35%以上のものを使用する。

この記事は『安心』2021年12月号に掲載されています。
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