冷え症タイプの方は、とにかく体を温めないと、痛みは取れません。ショウガに含まれる辛味成分のジンゲロールや、それを加熱したときに増えるショウガオールには、体を温めて血管を広げる作用があります。それによって発痛物質プロスタグランジンの産生が抑えられ、痛みが軽減するのです。【解説】石原新菜(イシハラクリニック副院長)

解説者のプロフィール

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石原新菜(いしはら・にいな)

イシハラクリニック副院長。医師。帝京大学医学部卒業後、大学病院での研修を経て、現在、自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實氏が院長を務めるイシハラクリニックで、漢方医学、自然療法、食事療法により、さまざまな病気の治療にあたっている。『女のキレイは30分で作れる』(マキノ出版)、『酢ショウガで体すっきり!ずっと健康!』(宝島社)など、ショウガや健康に関する著書、監修書多数。テレビやラジオなどのメディアへの登場も多い。
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血管を広げて痛み物質を減らす

ひざ痛、腰痛、生理痛……。こうした治りにくい慢性的な痛みは、ほとんどが「冷え」からきています。

体が冷えると血管が収縮して、血流が悪くなります。すると、血管の内側の細胞は「プロスタグランジン」という物質を出して、血管を広げようとします。それによって血管は広がりますが、同時に痛みが出ます。プロスタグランジンは、痛みを感じさせる発痛物質でもあるのです。

痛みは、体が血管を広げようとがんばっている証なのですが、そもそも最初から血管を広げる物をとっていれば、プロスタグランジンが出ることもありません。そうすれば、痛みを感じることもないのです。

そこで私がお勧めしたいのが「ショウガ」です。ショウガは体を温める最強の食品で、痛みを取る漢方薬のほとんどにショウガ(生姜)が配合されています。

ショウガに含まれる辛味成分のジンゲロールや、それを加熱したときに増えるショウガオールには、体を温めて血管を広げる作用があります。それによってプロスタグランジンの産生が抑えられ、痛みが軽減するのです。

また、1日40gのショウガをとると、関節リウマチの痛みが和らぐという報告があります。ですから私は、リウマチの患者さんには、必ずショウガを勧めています。

その1人、Aさん(40代女性)は、リウマチの薬(ステロイド剤や免疫抑制剤など)を飲み続けることに不安を感じて来院。手首や足首などの関節に、激しい痛みがありました。

色白で冷え症タイプのAさんに、私は「桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)」という漢方薬を処方しました。同時に、手浴、足浴、腹巻きを勧め、ショウガをたくさんとるようにアドバイスしました。

その生活を続けるうちに、Aさんは薬をかなり減らすことができ、痛みも取れて安定するようになりました。ショウガのジンゲロールには免疫(体の防衛機構)を調整する作用もあるのですが、それもリウマチにはよかったと思います。

Aさんのような冷え症タイプの方は、とにかく体を温めないと、痛みは取れません。そういう方にぜひ試していただきたいのが、「ショウガスープ」です。

温かいスープを飲むと、それだけで体が温まります。また、ショウガの辛味成分のジンゲロールは、加熱によって、より温め効果の強いショウガオールに変わるので、効果がよりアップするのです。

野菜やキノコ、海藻などを加えてもOK

ショウガスープの作り方は、下項の通りです。とても簡単に作れますが、ここに具を加えたり、味を変えたりすることで、いろいろに楽しめます。

私がお勧めしたいのが、クズ粉でとろみをつけるスープです。とろみがつくと温かさが持続し、おなかが長く温まって、胃腸の働きもよくなります。

クズはカゼ薬として知られる葛根湯の主成分で、体を温め、血行を促す作用があります。特に上半身の血流をよくするので、上半身の痛みによく効きます。

また、タマネギやネギを入れれば、アリシンの効果が加わって、抗酸化作用や抗炎症作用が得られます。他にも、野菜やキノコ、海藻、卵など、どんな具材にも合います。

ただし、ショウガの効能は長く続かない(3~4時間程度)ので、こまめにとってください。1日にとる量の目安は親指2本分(約20g)、粉末タイプならその10分の1(2g)です。ショウガスープでとるなら、1日4杯くらいが目安になります。

ショウガスープは、いつ飲んでも構いません。食事のとき以外に、痛みの強いときや元気が出ないとき、夜寝つけないときなどに飲むといいでしょう。

私はショウガが大好きで、ニンジンジュースや紅茶に入れたり、ショウガの酢漬け、みそ漬けなどにしたりして、1日100gくらいはとっています。カゼをひいたときは、みそ汁にたっぷりのショウガを入れると、翌朝には治っています。

ショウガは、ドリンクにもスイーツにも合うので、スープ以外にもいろいろ使ってみてください。

なお、ショウガは、FDA(アメリカ食品医薬品局)によって、副作用のないハーブだとお墨付きがついています。ですから、とり過ぎの害はありませんが、ドキドキしたり、汗が出て不快になったりしたら、量を控えてください。

また、ショウガには健胃作用がありますから、胃の弱い人でも、安心してとっていただけます。

なお、痛みのある人は、普段から体を温め、水分をとり過ぎないようにすることも大事です。このことに留意しつつ、ショウガスープで体を温めて、痛みの改善にお役立てください。

ショウガスープの作り方

画像: ショウガスープの作り方

材料(1杯分)
ショウガ……5g
水……200ml
鶏ガラスープの素……小さじ1/2
塩……ひとつまみ
コショウ……適宜

作り方
ショウガは洗って皮付きのままみじん切りにする(すりおろしても可)。
鍋に①と水、鶏ガラスープの素を入れて火にかける。
沸騰したら2~3分そのまま煮て、火を止め、塩で味を調える。好みでコショウを振る。
※電子レンジで作る場合は、電子レンジ対応の器に①と水、鶏ガラスープの素を入れ、ラップをせずにそのまま3分加熱する(500Wの場合)。その後、塩で味を調える。

基本のとり方
特に決まりはなく、いつとってもよい。1日1~4杯程度が目安。

■調理・スタイリング/古澤靖子

画像: この記事は『安心』2021年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年12月号に掲載されています。

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