植物には「ファイトケミカル」という化学物質が含まれています。これは、植物の色や香り、渋味、辛味などの成分で、それぞれ抗酸化作用、免疫増強作用、解毒作用など多様な作用を持っています。ですから野菜をたくさんとれば、多方面からがんにアプローチできるのですが、それを簡単にするのが「野菜スープ」です。【解説】済陽高穂(西台クリニック理事長)

解説者のプロフィール

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済陽高穂(わたよう・たかほ)

西台クリニック理事長。1945年宮崎県生まれ。千葉大学医学部卒業後、東京女子医科大学消化器病センターに入局。米国テキサス大学にて消化管ホルモンの研究を行う。帰国後、東京女子医科大学助教授などを歴任し、2008年より西台クリニック院長。2018年より現職。『今あるガンが消えていく食事』(マキノ出版)をはじめ、がん治療や健康維持のための食事療法をまとめた著書多数。明朝時代に中国から渡来し、九州・都城の島津氏に仕えた薬師を先祖に持つ。

野菜をスープにすると抗酸化作用が高まる

私は外科医でありながら、25年以上にわたってがんの食事療法に取り組んできました。これまで、従来の標準治療(手術、抗がん剤、放射線療法)だけでは改善が望めない多くの患者さんに済陽式食事療法を勧め、良好な結果を得ています。

それを示すのが、2017年に行った統計調査です。進行がんや再発・転移がんなど、主にステージⅢ〜Ⅳの患者さん505例を対象に、平均5年間観察したところ、がんの完治(完全寛解)、縮小を合わせて、60.6%の有効率がありました。

済陽式食事療法の原則の一つが、「大量の野菜・果物をとる」ことです。それが簡単にできるのが、「野菜スープ」です。

植物には、「ファイトケミカル」という化学物質が含まれています。これは、植物の色や香り、渋味、辛味などの成分で、従来の栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質など)にはない機能を持ちます。活性酸素を無毒化する「抗酸化作用」です。

活性酸素は、生体組織を酸化したり、細胞のDNAを傷つけたりする猛毒で、がんの発症に深く関わっています。その毒消しをするのが、ファイトケミカルです。がんの発生から増殖まで、全ての段階でがんを抑え込む作用があるのです。

ファイトケミカルは、現在、わかっているだけでも3000種類ほどあります。それらは6タイプに分類され、それぞれ抗酸化作用、免疫増強作用、解毒作用など多様な作用を持っています。ですから、野菜をたくさんとれば、多方面からがんにアプローチできるのです。

野菜をスープで食べると、たくさんの野菜を一度にとれて、水溶性の成分も余すところなく摂取できます。中には、酵素のように加熱によって失われる成分もあります。しかしファイトケミカルは、逆に加熱によってスープに溶け出しやすくなり、抗酸化作用が強くなるというデータもあります。

また、野菜スープには、抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンA・C・E(エースと呼称される)も含まれています。これらが相乗的に働くと、抗酸化力がより強くなり、免疫力(病気に対する抵抗力)も増強します。

野菜スープは、野菜を刻んで、水で煮込むだけ。簡単なので続けやすく、作りおきもできるので、便利です。

野菜のうま味が凝縮!減塩にも役立つ

私が勧める基本の野菜スープは、「医学の祖」と呼ばれる古代ギリシャの医師、ヒポクラテスが考案したという「ヒポクラテススープ」を、作りやすくアレンジしたものです。作り方は下項にありますが、これに季節の野菜やキノコ、海藻類などを加えてもいいでしょう。

このスープの特徴は、調味料を一切使用せず、野菜と少量の水だけで作ること。野菜のうま味が凝縮しているので、十分おいしく摂取できます。また、食べ続けているうちに薄味に慣れて、自然に減塩になっていきます。

なお、がん予防や健康維持のために食べるなら、少量の塩(ティースプーン1/2程度)を加えても構いません。

1日1〜2杯、このスープをとってください。同時に、食品添加物の多い加工食品など、体にリスクになるものは、なるべく控えたほうがいいでしょう。

このスープをとると免疫力が上がるので、未だに予断を許さない新型コロナや、これから流行が危惧されるインフルエンザなどの感染予防になります。

また、免疫力を高めるためには、日頃から適度な運動をし、十分な睡眠をとることも大事です。9時間の睡眠で、免疫の要であるリンパ球(白血球の一つ)が増えることがわかっています。

ファイトケミカルの種類と主な効用

ポリフェノール
アントシアニン(ブルーベリー)、ケルセチン(タマネギ)、ジンゲロール(ショウガ)など。強い抗酸化作用がある。

糖関連物質
β‐グルカン(キノコ類)、フコイダン(コンブ)、ペクチン(リンゴ)など。免疫力向上、がん抑制の作用がある。

硫黄化合物
イソチオシアネート(ブロッコリー)、アリイン(ニンニク)など。強い殺菌・解毒作用がある。

アミノ酸類
グルタチオン(アスパラガス)、タウリン(イカ・タコ)など。心臓の機能向上、肝臓の解毒機能向上に役立つ。

カロテノイド
β‐カロテン(ニンジン)、アスタキサンチン(サケ)、リコピン(トマト)など。免疫力を高める作用がある。

香気成分
リモネン(かんきつ類)など。ハーブやかんきつ類などの香りや苦み成分。精神を落ち着かせる作用がある。

免疫力アップ・がん予防・感染症予防に!
野菜スープの作り方

画像: 免疫力アップ・がん予防・感染症予防に! 野菜スープの作り方

材料(5~6食分)
セロリ……1本
パセリ……1本
ニンニク……2片
長ネギ……2本
タマネギ……2個
ジャガイモ……中2個
トマト……中3個
ニンジン……2本
水……2カップ

作り方
野菜は水洗いし、できるだけ皮ごと1.5cm角の大きさにそろえて切る。ニンニクはみじん切りにし、パセリはちぎる。
鍋の底にトマトとタマネギを敷き詰めるように入れる。
②の上に他の野菜を入れ(ニンジンとジャガイモは最後)、水を加える。
ふたをして弱火にかけ、1時間~1時間半ほど煮込む。
※冷蔵庫で2~3日保存可能。冷凍保存は、ジャガイモの食感が変わってしまうので避ける。

基本のとり方
1日に1~2杯を、温めてから食べる。

■調理・スタイリング/古澤靖子

画像: この記事は『安心』2021年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年12月号に掲載されています。

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