合成界面活性剤は、肌の皮脂や皮脂膜はもちろん、角質層にある保湿成分も洗い落としてしまいます。そのため、体が不足分を補うために皮脂をたくさん分泌し、かえって肌がベタベタするなどの悪循環も生まれます。そもそも何もつけなければ、本来の天然保湿因子が作用して健やかな肌になるのです。【解説】山口麻子(白金ビューティフルエイジングクリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

山口麻子(やまぐち・あさこ)

1997年、日本大学医学部卒業。日赤医療センターにて研修を受け、2000年より北里研究所病院美容医学センターに着任。臨床経験を積み06年に白金ビューティフルエイジングクリニック開院。シミ・シワ治療と、化粧品に頼らない素肌づくりに定評がある。日本美容外科学会、日本美容皮膚科学会などに所属。著書に『化粧品に頼らない素肌美人のつくりかた』(主婦と生活社)がある。
▼白金ビューティフルエイジングクリニック(公式サイト)

塩には殺菌作用や抗菌作用がある

※塩を肌に塗る際は、必ずパッチテストをしてください。少量を塗ってしばらく時間をおき、様子を見て、赤みやかゆみなどの異常が現れたら、直ちに中止してください。

私のクリニックでは、化粧品を使わず、肌本来の健康と美を手に入れるためのプログラムを提唱しています。

まず、入浴時に髪を洗う際、シャンプーやリンスなどは使いません。私自身は、2010年にシャンプーをやめることを決意しました。完全にやめるまでには時間がかかりましたが、それでもここ6年はずっと、お湯で洗うだけの「湯シャン」生活。髪の状態はとても良好です。

顔には、ファンデーションはもちろん、マスカラやアイブロウ、化粧水やクリームなどの基礎化粧品も使いません。もう20年近く、基本的には常に「すっぴん」です。洗顔もせっけんは使わず、水で流すだけです。

このようなスキンケアを勧めるようになった経緯は後述しますが、まずは「塩で髪や体を洗う」ことについて、考えてみましょう。

塩は、私たち人類が体機能を維持するために、なくてはならない成分です。塩化物イオンやナトリウムイオンといった形で体内に存在し、それらイオン総濃度の浸透圧は、0.9%の食塩水、つまり生理食塩水に匹敵します。

生理食塩水は人体に入っても安全なため、点滴や注射に使う薬剤の希釈、傷の洗浄にも使われます。

実際、ケガをしたら生理食塩水で傷口を洗浄したうえで、生理食塩水を染み込ませたガーゼを患部に貼っておくと治りが早いというのは、いまや創傷治癒の常識です。ひと昔前のように消毒液を使うと、細胞の機能を損なうことがわかっています。

さらに、塩には殺菌作用や抗菌作用があります。梅干しなどの保存食作りに塩が使われるゆえんです。

ミネラルによる保湿作用も髪や肌に好影響

塩を活用し、薄毛や白髪が改善した、美肌になった、といった効果を得た人も実際にいらっしゃいます。海水と同じ濃度の塩水を使った治療法が、アトピー性皮膚炎に有効という論文も発表されています。

ミネラルを多く含む塩であれば、それらによる保湿作用なども加わり、髪や体に好影響を与えることは十分に考えられるでしょう。

塩で髪や体を洗う「塩洗い」に期待できることが、もう一つあります。それは、塩洗いが、湯シャンや湯洗いなど「何もしない」ヘアケア・スキンケアに進むための、ワンステップになるという側面です。

私は駆け出しのころ、形成外科の医師である宇津木龍一先生の下で学んでいました。宇津木先生は、化粧品を使わないスキンケアの第一人者です。

勤務先の病院内には、当時としては画期的な「美容ドック」があり、美容意識の高い女性がおおぜい訪れていました。

患者さんはたいてい、高級な化粧品でメイクを施しており、来院する前から、すでにキレイな見た目の女性です。けれどもマイクロスコープで肌を診るとボロボロに荒れています。

聞けば、しっかりメイクをしているので、落とすのにクレンジング剤を使っているといいます。そうした洗浄剤こそが、肌荒れの原因です。

化学的な洗浄剤に含まれる合成界面活性剤は、肌の皮脂や皮脂膜はもちろん、角質層にある保湿成分も洗い落としてしまいます。使えば使うほど、肌の水分や油分は失われるのです。

体は、不足分を補うために皮脂をたくさん分泌します。そのため、かえって肌がベタベタするなどの悪循環も生まれます。そもそも何もつけなければ、化学的な洗浄剤をやめることができ、本来の天然保湿因子が作用して健やかな肌になるのです。

画像: ミネラルによる保湿作用も髪や肌に好影響

ちなみに、80代・男性の患者さんは、先日すんなりと湯シャンに切り替えられました。高齢なほど皮脂が出にくいので、うまくいったのかもしれません。

けれども普通は、シャンプーや洗顔料、ボディーソープをいきなりやめるのは、難しいものです。当院のスタッフは皆、今でこそすっぴんで湯シャン派ですが、簡単にはいきません。

まずは、洗浄力の弱いアミノ酸系の洗浄剤や、無添加のせっけんに切り替えるのも手。そうした選択肢のなかで、湯洗いに最も近いところにあるのが、塩洗いだと思います。

自然の産物とはいえ、染みるときはやめる、強くこすらない、炎症がある部位は避ける、などの注意は必要です。肌に合うようであれば、塩洗いは、清潔を保ちながら化学物質の害を遠ざける助けとなるでしょう。

画像: この記事は『壮快』2021年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年12月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.