解説者のプロフィール

藤原英祐(ふじわら・えいすけ)
ふじわら医院院長。日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医。医学博士。1979年広島大学医学部卒業。県立広島病院、広島大学病院など多数の病院勤務を経て、1997年にふじわら医院を開院。自身が専門とする泌尿器科や内科のほか、ストレス性疾患や、原因不明の愁訴に対して統合医学的アプローチを実践。
▼ふじわら医院(公式サイト)
薬と「指しゃぶり」で血圧をコントロール
医師である私は、広島で、泌尿器科・内科のほか、原因不明の愁訴に対して統合医学的アプローチを実践する医院を開業しています。
患者さんの治療にあたる一方で、忙しくなると、自分の体が緊張状態になり、交感神経が過剰に働いていると感じることがあります。そういうときに血圧を測ると、たいてい高くなっているものです。
2021年の5月にも血圧が高くなったことがあり、私はあるセルフケアを試しました。それが、柔道整復師の金谷康弘先生が考案した「指しゃぶり」です(やり方は金谷先生の記事参照)。
[別記事:【高血圧のセルフケア】上あごを刺激し自律神経を整える「指しゃぶり」→]
金谷先生には月に1回、当院で患者さんを治療していただいています。そのとき「高血圧に指しゃぶりが効くようだ」という話を聞き、私は自身で試すことにしたのです。すると、指しゃぶりを1回やっただけで、高かった血圧がストンと下がりました。
ところが、6月になると忙しさが増し、睡眠時間も短くなって、私は体のしんどさとともに、のぼせたような感覚を覚えるようになりました。そこで血圧を測ってみると、最大血圧は200mmHg近く、最小血圧も100mmHgを超えていたのです。脈拍は100回/分以上ありました。脈拍の基準値は60〜100回/分とされていますので、この数値は基準値をややオーバーしています。
すぐさま指しゃぶりを行うと、そのときも血圧は最大値が140mmHg、最小値が80mmHgに下がり、脈拍も80回/分に落ち着きました。
とりあえず落ち着いたものの、指しゃぶりに頼りきってしまってよいものなのか……。悩んだ結果、私は軽い降圧剤を飲むことにしました。
薬を飲んでいても、忙しかったり緊張したりすると、最大血圧が150mmHgくらいに上がることがあります。そのときは指しゃぶりをすると、すぐに下がるので、とても助かっています。こうして現在まで、薬と指しゃぶりを併用しながら、血圧をコントロールしています。
指しゃぶりは、上あごのかたい部分とやわらかい部分の境目辺りに親指の腹を当てます。何回かチュパチュパ吸って刺激を与えたあとで、親指の腹を30秒間当てておくというものです。ここには左右に口蓋骨という骨があるので、右側・左側それぞれを刺激します。

あまり奥まで入れると、えずいてしまうので注意が必要です。また、口に指を入れるので、手はきれいに洗って行います。
血圧とともに脈拍も落ち着いた
金谷先生によると、口蓋骨を刺激することで、自律神経(私たちの意志とは無関係に働き、内臓や血管をコントロールする神経)が調整されるとのこと。確かに、指しゃぶりを行うとリラックスするように感じます。
参考までに、自動血圧計で記録した私の直近の血圧データを紹介します。
この日も朝からバタバタしていて、昼の12時17分時点で血圧は最大値が143mmHg、最小値が87mmHg、脈拍は86回/分ありました。そこで指しゃぶりを行いました。
左の口蓋骨を刺激した直後、12時20分の血圧は最大値が145mmHg、最小値が87mmHg、脈拍は90回/分でした。そして、右側も同様に行った12時24分、血圧は最大値が123mmHg、最小値が69mmHg、脈拍は63回/分になりました。

左側の指しゃぶりを行ったあと血圧が下がらなかったのは、片側だけでは効果がないのか、あるいは指しゃぶりを行ってから効果が現れるまでにタイムラグがあったのか、はっきりしたことはわかりません。ただ、両方行ったあとは、みごとに血圧が下がりました。
医師としては、血圧だけでなく脈拍が下がったことにも、大きな意義があると感じています。交感神経の緊張が落ち着き、自律神経のバランスが整った証といえるのではないでしょうか。
当院では、鼻づまりの患者さんに指しゃぶりを勧めたところ、「鼻が通った」と喜ばれました。気持ちが落ち着かないときなど、心の安定にも指しゃぶりは役立つと思います。
現在は、高血圧の患者さんにも指しゃぶりを試していただき、効果を確認しているところです。今のところ好感触なので、今後は私自身の血圧コントロールはもちろん、患者さんにも本格的に指しゃぶりを活用してもらうべく、勧めていきたいと考えています。

この記事は『壮快』2021年12月号に掲載されています。
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