自律神経のバランスを整える頭蓋仙骨療法の一つに、「口蓋骨」を調整する手技があります。「指しゃぶりなんて恥ずかしい」と感じるかたもいるかもしれませんが、高血圧をはじめ、鼻が詰まって呼吸が苦しいときや、頭痛がつらいときにも、症状の緩和に役立ちます。【解説】金谷康弘(かなや整骨院院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

金谷康弘(かなた・やすひろ)

かなや整骨院院長。1961年生まれ。柔道整復師。学習塾講師、大学受験予備校講師を経て、関西医療学園専門学校卒業。1990年大阪市に「かなや整骨院」を開設。自院での施術のほかに、広島市「ふじわら医院」でも定期的に施術を行う。一般社団法人「日本頭蓋仙骨療法協会」代表理事。
▼かなや整骨院(公式サイト)

子供が指をしゃぶるのはストレスを感じたとき

血圧が高いときに行うと、その場で血圧がストンと下がるセルフケアがあります。それが、私が考案した「指しゃぶり」です。まずはこのセルフケアが生まれたいきさつから、お話ししましょう。

私は整骨院での施術に、頭に触れて自律神経(私たちの意志とは無関係に働き、内臓や血管をコントロールする神経)のバランスを整える「頭蓋仙骨療法」を取り入れています。その一つに、口蓋骨を調整する手技があります。

口蓋骨とは、上あごの奥のやわらかくなったところに、左右一つずつある骨のことです。

画像: 子供が指をしゃぶるのはストレスを感じたとき

口蓋骨を調整する手技は、主に鼻づまりや目の奥の痛み、頭痛などの症状に使います。なかには、蓄膿症の手術後、約半世紀にわたって悩まされた頭痛が、この手技ですぐに取れた人もいます。

以前、鍼灸の雑誌を読んでいるとき、花粉症の治療に「翼口蓋神経節」を刺激するという記事を見つけました。ここを刺激することで、自律神経の過緊張が緩和できるそうです。口蓋骨も解剖学的に翼口蓋神経節に近い位置にありますから、同じような効果があるのだな、と私は思いました。

あるとき、血圧が乱高下してフラフラしている患者さんに、この手技を試したところ、血圧がスッと安定しました。これだけ効くものならセルフケアに応用できないかな、と考えたときに思いついたのが指しゃぶりです。

指しゃぶりは、子供がよくするというイメージをお持ちではないでしょうか。子供は叱られたとき、何か不満があるときに、自分の指を口に入れます。つまり、なんらかのストレスを感じたときに指をしゃぶるのです。

考えてみると、指しゃぶりをするのは必ず親指です。親指を口に入れると、上あごに指の腹が当たります。つまり、ストレスを感じた子供は指しゃぶりをすることで本能的に口蓋骨を刺激して、自律神経を調整しているのかもしれません。

そこで、私は自身に頭痛が起こったとき、口蓋骨を刺激するつもりで指しゃぶりをしてみました。すると、みごとに頭痛が治まったではありませんか。

セルフケアとしての使い勝手はどうか、広島にあるふじわら医院の藤原英祐院長(次項参照)に協力していただき、来院される患者さんに試してもらいました。

結果は、「非常によく効く」とのこと。今回のテーマの高血圧についても、院長先生ご自身が一時的に血圧が上がったときに、指しゃぶりをするとその場で血圧と脈拍が落ち着き、たいへん驚かれたといいます。

頭痛や鼻づまり、眼精疲労にも

では、やり方を紹介しましょう。

まず、親指を口に入れ、上あごの奥にあるやわらかい部分に指の腹を当てます。口蓋骨は左右に一つずつあるので、まず右側に指を当ててチュパチュパと5回吸います。吸う強さはストローでジュースを飲むくらい。強く吸う必要はありません。

吸ったらそのまま指の腹を口蓋骨に当てておきます。そうして、30秒おいてから、左も同じように5回吸って、指の腹を30秒当てておきます。

画像: 頭痛や鼻づまり、眼精疲労にも

自分でチュパチュパ吸う刺激だけで、十分な効果が期待できます。逆効果になりかねないので、強い力で口蓋骨を押すことは絶対にしないでください

素手でやる場合は、事前に手をきれいに洗ってから行います。爪も短く切ってください。ゴム手袋や指サックをつけて行ってもかまいません。

指しゃぶりは即効性があるので、一時的に高くなった血圧を下げるのにお勧めです。疲れたり、調子が悪かったりするときに血圧が高くなるというかたは、ぜひそのときにやってみてください。

そのほか、鼻が詰まって呼吸が苦しいときや、頭痛がつらいときにも、症状の緩和に役立ちます。後鼻漏や目の疲れにもよい結果が報告されています。コンスタントに続ければ、花粉症の予防効果も期待できるのではないでしょうか。

「指しゃぶりなんて恥ずかしい」と感じるかたもいるかもしれませんが、高血圧をはじめ、前述した症状に困っているかたは、ぜひお試しください。

画像: この記事は『壮快』2021年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年12月号に掲載されています。

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