野菜と穀物双方の要素を持つサツマイモは、準完全食品と呼ばれることもあるほど、栄養のバランスがよいのです。極端な話、人間は白米だけを食べていると栄養が偏って死んでしまいますが、サツマイモだけ食べていても死ぬことはありません。【解説】山川理(山川アグリコンサルツ代表・農学博士)

解説者のプロフィール

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山川理(やまかわ・おさむ)

1947年生まれ。69年京都大学農学部卒。農学博士。農林省九州農業試験場、農林水産省農林水産技術会議事務局、野菜・茶業試験場久留米支場、九州農業試験場などに勤務、イチゴやサツマイモの品種改良に従事。現在、山川アグリコンサルツ代表として、食品関連企業の顧問や地域活性化アドバイザーとして活躍。著書に『サツマイモの世界 世界のサツマイモ』(現代書館)。
▼専門分野と研究論文(CiNii)

野菜と穀物双方の 要素を持つ「準完全食品」

私は長年、農林水産省で「サツマイモ」の品種改良に携わってきました。今ではサツマイモ博士と呼ばれることもあります。

サツマイモのいちばんの特徴は、野菜と穀物、両方の要素を持っていることです。

野菜としての側面を見ると、ビタミン、ミネラル、食物繊維の多さが特長です。ビタミンとしては、抗酸化力が高いビタミンCやE、体の機能を高めるB群がたくさん含まれています。

ミネラルでは、ナトリウムの排出を促し、むくみの解消や血圧降下をもたらすカリウムが豊富。ほかに、鉄、マグネシウム、カルシウムも含まれます。

穀物としての要素を持つ、という意味は、野菜にしては糖質を多く含んでいることを指しています。

生のサツマイモの場合、糖質の占める割合が約25%。これに対して、ご飯として炊いたときの米の糖質は約30%程度。サツマイモは、炊いたご飯に近い糖質量ということになります。

このように、野菜と穀物双方の要素を持つサツマイモは、準完全食品と呼ばれることもあるほど、栄養のバランスがよいのです。

極端な話、人間は白米だけを食べていると、栄養が偏って死んでしまいますが、サツマイモだけ食べていても死ぬことはありません。江戸時代の飢饉のときも日本人はサツマイモで生き延びてきました。

色つきサツマイモの抗酸化作用に注目

そんなサツマイモですが、最近は、まるで嗜好品のように味や食感などのバリエーションも増えています。昔は、ホクホクした食感のサツマイモが好まれました。最近は、ねっとりした舌ざわりの物が人気です。

ホクホク系か、ねっとり系かは、含まれるでんぷん含有量や、でんぷん自体の特性などによって決まります。 ホクホク系の代表としては『ベニアズマ』、ねっとり系の代表としては、『安納芋』や『べにはるか』などが挙げられます。

画像: ※( )内は地域ブランド名。このほかにもいろいろな地域ブランドがある。 ※味や食感は、産地や貯蔵条件、調理方法によっても変わる。

※( )内は地域ブランド名。このほかにもいろいろな地域ブランドがある。
※味や食感は、産地や貯蔵条件、調理方法によっても変わる。

近年は、紫やオレンジなど、色つきのサツマイモも人気です。色つきのイモは、見た目が美しいだけでなく、機能性も高いのが特長です。

例えば、紫色のサツマイモには、ポリフェノール(植物由来の抗酸化物質)の一種であるアントシアニンが多く含まれています。アントシアニンには強力な抗酸化作用があり、血流改善にもいいとされています。スーパーでは、『パープルスイートロード』などの品種が売られています。

オレンジ色のサツマイモの代表格は、『安納芋』や『隼人いも(人参いも)』です。これらには、βカロテンという色素成分が含まれます。βカロテンにも抗酸化作用があり、こちらも目の健康維持や美肌にも役立つ成分です。

オレンジ系のサツマイモは、近年欧米で人気が高まっています。その理由はいうまでもなく健康効果。感染症や、皮膚炎にも効果があるといわれ、注目されているのです。特にアメリカでは、サツマイモの生産量がぐんぐん伸びています。

私は毎年秋の収穫期には、焼きイモや蒸しイモをたくさん作り、冷凍して、いつでも食べられるようにしています。

干しイモも自家製で作ります。蒸しイモの皮をむき、1.5cmくらいの厚さにスライスします。そして1週間ほど、ネットを張ったベランダに置き、扇風機を回して乾燥させます。雨が降ると困るので、夜は室内に入れており、少し手間がかかりますが、おいしい干しイモが出来上がります。

画像: 山川先生の自家製干しイモ

山川先生の自家製干しイモ

サツマイモは、意外に寒さに弱く、室温10度以下で1ヵ月以上放置すると、冷温障害が起こります。寒い時期には、12度前後の室内でダンボールに入れ、新聞紙をかぶせて乾燥を防ぎます。買ってきてすぐに食べるより、1~2週間ほど寝かせると、甘みが増しておいしく食べられます。

ぜひ自分の好みのサツマイモを見つけて、焼いたり、煮たり、蒸したりと、さまざまな方法で味わってください。

画像: この記事は『壮快』2021年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年12月号に掲載されています。

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