東洋医学の観点では、膵臓は五臓(肝・心・脾・肺・腎)の脾に属します。加齢や過労などの原因で、脾の気が足りずに衰えて、血糖値をコントロールできない状態が高血糖(糖尿病)と捉えます。高血糖のケアには、脾の気の巡りをよくすること。そこでお勧めしたいのが「足指のツボ押し」です。【解説】古賀直樹(中野坂上治療院代表)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

古賀直樹(こが・なおき)

中野坂上治療院代表。鍼灸師、整体師。日本で最初の鍼灸大学である明治国際医療大学で鍼灸を学び、鍼灸師・整体師として30年近く治療に携わる。雑誌やテレビなど、メディア出演多数。近著に『はたらく女子のオフィスで「カベ」ストレッチ』(雷鳥社)がある。
▼中野坂上治療院(公式サイト)

昔から糖尿病の施術に利用されてきたツボ

高血糖は、胃の後ろにある膵臓が大きくかかわっています。膵臓は食べ物を消化する膵液を分泌するほか、血液中の糖分量を調節する「インスリン」などのホルモンも作っています。このインスリンの分泌量が減ったり、効きめが悪くなったりして、血糖値の高い状態が続く病気が、糖尿病です。

東洋医学の観点では、膵臓は五臓(肝・心・脾・肺・腎)のに属します。脾というと、脾臓だけを指すと思うかもしれません。脾は飲食物の消化吸収を行うとされていることから、膵臓も脾に含まれるのです。

また脾は、「気」を作り出す働きを担っています。気とは、人間を含めた自然全体を動かしている、根源的なエネルギーです。人間の体内では代謝を促したり、体や気持ちに作用したりして、生命活動を維持しています。

そして、気は「血」をコントロールする働きがあります。血は血液や、血液中に流れる栄養素を指します。つまり、血液中の糖分も血に含まれるというわけです。

以上から、加齢や過労などの原因で、脾の気が足りずに衰えて、血糖値をコントロールできない状態が高血糖(糖尿病)と東洋医学では捉えます。

高血糖のケアには、脾の気の巡りをよくすることが重要です。そこでお勧めしたいのが、隠白(いんぱく)というツボを押す「足指のツボ押し」です。やり方は、下項をご参照ください。

人間の体には、気が流れる「経絡」が14本通っています。そして、経絡上で気の流れを調整できる場所が「ツボ(経穴)」です。脾に気を巡らせる経絡は「脾経」で、脾経の始まりに当たるツボが足の親指(母趾)にあります。これが隠白です。

隠白の刺激は、脾を巡る気を刺激し、血糖値コントロールに寄与するので、昔から糖尿病の施術に用いられてきました。私も以前、空腹時血糖値が180mg/dl(基準値は110mg/dl未満)、と高い時期がありましたが、足指のツボ押しを含めたケアで、現在は120mg/dl程度まで下げられました。

隠白への刺激は血糖値コントロールのほかに、急性胃腸炎など胃腸のトラブルや、生理トラブルの解消にも役立ちます。このような悩みがある人も、足指のツボ押しを試してください。

消化吸収や尿の排泄を促すツボ押しもお勧め

足指のツボ押しは継続がたいせつです。まずは続けられるように、隠白の刺激を紹介しましたが、可能なら厲兌(れいだ)至陰(しいん)というツボも加えて刺激すると、より効果的でしょう。厲兌は足の人差し指(第2趾)、至陰は足の小指(第5趾)にあります。足指のツボ押しと同様に刺激してください。

厲兌は、消化器官や生殖に関係する胃経のツボですが、高血糖の改善効果も期待できます。脾経と胃経は表裏一体で機能し、消化吸収のためにお互いに助け合っているからです。

至陰は、自律神経(意志とは無関係に内臓の動きなどをコントロールしている神経)や尿の排泄などに関係する、膀胱経のツボです。血液中の不要な糖分を、尿として排泄するのを促す効果が期待できます。

隠白や厲兌、至陰など、指先にあるツボは、気が泉のように噴出するところとされています。西洋医学的にも、指先の刺激は、自律神経のバランスを整えると考えられています。さまざまな分野から見てよいとされる足指のツボ押しを、ぜひ日々の生活に取り入れてください。

足指のツボ押しのやり方

ツボの場所

画像1: 足指のツボ押しのやり方

隠白:両足の親指の、爪の根もとの角(内側)から約3mm離れた場所
厲兌:両足の人差し指の、爪の根もとの角(外側)から約3mm離れた場所
至陰:両足の小指の、爪の根もとの角(外側)から約3mm離れた場所

左手の親指の先を、右足の隠白に当てて、1分、痛気持ちいい力加減でもむ(30~50回)。
左足も同様に行う。以上を1セットとし、1日2~3セット、起床後や食前に行う。

画像2: 足指のツボ押しのやり方

厲兌や至陰も同様に行うと、さらに効果的。
床とイス、どちらに座って行ってもよい。刺激するほうの足を、反対側の足に乗せると行いやすい。
皮膚を傷つけないように注意する。
ペンの頭で行ってもよい。尖っている先端は使わない。

画像: この記事は『壮快』2021年12月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年12月号に掲載されています。

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