解説者のプロフィール

佐藤一美(さとう・かずよし)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、東京都指圧師会会長。昭和1945年、東京都生まれ。68年、日本指圧学校卒業。82年、日本鍼灸理療専門学校専科卒業。83年、日本指圧協会学術委員長、84年、同科学的追求理論特別委員長、87年、日本経絡指圧会会長、平成元年、東京都指圧師会常任理事、日本指圧協会常任理事等を歴任。
首や耳の筋肉を緩めて血流を改善
耳鳴りやめまい、難聴、耳の中が詰まっている感じがする耳閉感は、病院で検査を受けても原因不明のことが少なくありません。
東洋医学では、耳や三半規管(平衡感覚に携わる器官)の不調は「頭熱足寒」によって起こると考えられています。この主な原因は、五臓六腑の一つである、「腎」の弱まりです。
腎には、気(生命エネルギーの一種)が蓄えられています。加齢や不眠、ストレスなどで腎が弱まり、気の流れが滞ると、体の熱を下半身にとどめられなくなります。足は冷え切っているのに、肩甲骨から上はカッカと熱がこもり、頭部への血行が悪化し、肩や首、耳の周囲の筋肉がかたくなります。
この状態が頭熱足寒で、耳鳴りやめまい、難聴、耳閉感のほか、頭痛やイライラといった不快な症状を引き起こすのです。「頭寒足熱は健康によい」と聞いたことがあるでしょう。頭熱足寒はこの逆の状態です。
では、頭熱足寒を解消し、耳鳴りやめまいなどを改善するためにはどうすればいいのか。その方法に、私は「足指と足裏の反射区もみ」をお勧めしています。
反射区とは、各器官と影響を与えあうとされている部分です。何か不調があるとき、その器官に対応する反射区を刺激すると、改善できるのです。ツボと似ていますが、ツボは「点」で捉えるのに対し、反射区は「面」で捉えます。
私の治療室では、およそ10年にわたり、5万人の患者さんのカルテを基に、反射区の研究を行ってきました。今回は、特に頭熱足寒を解消する足指と足裏の反射区をご紹介しましょう。

足指と足裏の反射区
耳と三半規管の反射区は、足の薬指(第4趾)と小指(第5趾)の、指の腹とつけ根の間にあります。この反射区を刺激することで、耳や三半規管自体に働きかけます。
また、耳や三半規管の不調は、前述のとおり首周りも関係します。首の反射区である、足の親指(母趾)のつけ根(母趾球)の刺激も効果的です。
腎の反射区を刺激し、気の巡りや血行を促すのも重要です。足裏全体を腎の反射区とみなせますが、特に土踏まずの中央を刺激するといいでしょう。
これらの反射区の刺激で、首や耳の筋肉が緩むと同時に、気や血流が巡りやすくなります。上半身にこもっていた熱はスムーズに下半身に下り、頭寒足熱となって、前述の症状が改善していくのです。
1日1回で十分!青竹踏みでもOK
足指と足裏の反射区もみのやり方は、下記をご参照ください。指で刺激できないときは、青竹踏みで刺激してもOK。青竹踏みは頻尿や尿もれに効果的ですが、足指と足裏の反射区もみも同様の効果が期待できます。
注意点は、痛みを感じるほど力を入れないこと。軽くなでるくらいでも、十分に効果は得られるので、気持ちいい程度に行いましょう。強くグリグリと刺激すると、筋肉が緊張し、逆効果になります。
足指と足裏の反射区もみは、回数を増やせば効果が高まるものではなく、1日1回行えば十分です。テレビを見ながらといった、リラックスしているときに行いましょう。お風呂上がりもお勧めです。
なお、足に傷ができているときは控えてください。傷口から菌が入り、傷が悪化する可能性があります。
足指と足裏の反射区もみは、ピンポイントではなく、その範囲を刺激すればよいので、比較的簡単に行えます。ぜひ、生活習慣の一つにしてください。
足指と足裏の反射区もみのやり方

❶床かイスに座り、右足を左の太ももに乗せる。右足の首の反射区(上の「足指と足裏の反射区」参照)を、右手の親指と人差し指で5秒軽く引っ張るようにもみ、パッと離す。これを1分くり返す。
❷薬指、小指の順で、右足の耳・三半規管の反射区を、①と同様にもむ。

❸右足の腎の反射区を、両手の親指の腹でやさしく5秒押して離す。これを1分くり返す。
❹左足で①~③を同様に行う。以上を1日1回行う。

この記事は『壮快』2021年12月号に掲載されています。
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