アロエの数ある健康効果の中でも注目を集めているのが育毛作用です。苦味成分の「アロイン」により、髪の成長期が長くなり、細くなった髪にコシが生まれたり、成長が止まっている毛穴から発毛したりと、育毛効果をもたらしてくれるのです。【解説】八木晟(福山大学名誉教授・日本アロエ科学協会特別顧問・薬学博士)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

八木晟(やぎ・あきら)

薬学博士。1933年生まれ。日本アロエ科学協会特別顧問。福山大学薬学部名誉教授。専門分野は生薬学。現在、高齢化社会でのQOLに役立てることを目標に、アロエの老化予防物質の研究を行っている。
▼専門分野と研究論文(CiNii)

苦味成分のアロインが育毛効果をもたらす

私は長年にわたり、アロエの研究を続けてきました。アロエはアフリカ原産の熱帯植物で、世界中に500種類も品種があるといわれています。

日本国内でよく目にするのは、キダチアロエかアロエベラのいずれかです。双方ともに、育毛、便秘解消などの健康成分を豊富に含んでいます。

アロエは古来、「医者いらず」と言われるほど、健康づくりに重宝されてきました。実際、200種類以上の有用な成分が含まれていることが、近年の研究で明らかになっています。

数ある健康効果の中でも、注目を集めているのが育毛作用です。

これは、主にアロエの硬い皮(外皮)の部分に多く含まれる苦味成分の「アロイン」によります。アロエの葉をポキッと折ると黄色い汁が出てくるのですが、これがアロインです。

さて、薄毛には男性ホルモンが関わっています。少し難しい話ですが、解説いたします。

まず、私たちの髪の根元にある毛乳頭(毛根の根元にあって、毛の発生や成長の根源となる部分)には、ホルモンの受容体があります。そこは、さまざまなホルモンを受け入れており、それによって発毛や脱毛などの指令を出しています。

ここで重要なホルモンが、「テストステロン」という男性ホルモンです。これが、頭皮に存在する「5α還元酵素(たんぱく質の一種)」と結びつくと、「DHT(ジヒドロテストステロン)」というホルモンに変わります。

このDHTが、先ほど説明した毛乳頭の受容体に結合すると、脱毛の指令が出てしまい、髪が十分に成長する前に抜けてしまうのです。これが、髪が薄くなる原因になります。

アロエに含まれるアロインには、5α還元酵素の働きを阻害し、テストステロンがDHTに変化するのを防ぐ作用があります。

この作用によって、髪の成長期が長くなります。ですから、細くなった髪にコシが生まれたり、成長が止まっている毛穴から発毛したりと、育毛効果をもたらしてくれるのです。

余談ですが、男性型脱毛症(AGA)で使われる服用薬も、5α還元酵素を阻害することで発毛を促進しています。

他にも、アロエが含む「ヒアルロン酸」も育毛効果を持っています。ヒアルロン酸は水分を蓄える力が強く、保湿成分として化粧水にも使われています。

ヒアルロン酸が多い理由としては、アロエがもともと、日差しが強くて乾燥した地域の植物だからです。強い紫外線の害を防ぐため、分厚い外皮を持ち、その内部は、ヒアルロン酸を豊富に含むゼリー質になっています。この構造は、アロエが過酷な環境でわずかな水分を逃さずに蓄えるためのものです。

このヒアルロン酸は、人体においても有用です。皮膚、血管、関節など、さまざまな位置で水分や組織の弾力を保つ働きをしてくれることがわかっています。

髪に関しては、ヒアルロン酸が頭皮に水分を供給することによって、血行が促進されます。それが、髪を作る毛母細胞の働きを活性化します。

また、アロエのヒアルロン酸は白髪にも有用に働きます。

白髪は、髪の色を作り出すメラニン色素の合成が衰えると増えますが、これには血行不良による細胞の栄養不足が関わっています。ヒアルロン酸の働きによって血流が上がることで、白髪が改善すると考えられます。

こうしたアロエの育毛効果を期待するのであれば、頭皮に外用するのがよいでしょう。実際に、育毛の目的でアロエ成分を配合した医薬部外品も市販されています。

自分で作る「アロエ育毛剤」も、高い育毛効果が期待できます(詳しい作り方は下項)。

ただし、アロエ育毛剤は使用前に必ず、腕などの皮膚に10円玉大ほどぬって2日ほど置き、かぶれたり痛みなどの違和感が現れたりしないかを確認してください

アロエ育毛剤の作り方

※キダチアロエ、アロエベラのどちらで作ってもよい。
アロエ育毛剤を使用する前には、腕の目立たない位置などに10円玉大ほどぬって様子をみる。かぶれ、痛み、かゆみなどの違和感があれば、すぐに使用をやめること。

画像1: アロエ育毛剤の作り方

アロエの葉を1kgとってきて、水でよく洗う。

画像2: アロエ育毛剤の作り方

トゲを包丁やハサミで取り、5~10cm幅に切る。

画像3: アロエ育毛剤の作り方

広口瓶に②とホワイトリカー(35度)を約4L注ぐ。

画像4: アロエ育毛剤の作り方

冷暗所で1ヵ月保存。

画像5: アロエ育毛剤の作り方

布などを使って、アロエの葉をこして出来上がり。

アロエの砂糖漬けの作り方

私自身は50年来、アロエを砂糖漬けにしたものを食べています。

アロエは、粘膜の修復作用を持つアロエウルシン、血行をよくするアロエマンナン、その他にもアロエ多糖体(アロエの単糖が連なった高分子構造のもの)、ミネラルなどを含むので、食べることでも育毛作用をはじめ、多くの健康効果を発揮してくれます。

私のアロエの砂糖漬けの作り方も紹介しましょう。

画像: 八木先生のアロエの砂糖漬け

八木先生のアロエの砂糖漬け

アロエの葉をたくさんとってきて、葉の量に対して、1割の分量の白砂糖を目分量で加えて、密閉容器に入れます。それを、1ヵ月ほどおいて発酵させます。アロエの葉にいる微生物を利用した発酵方法です。発酵させることで、保存が可能なことに加え、味も苦味が抑えられ、飲みやすくなります。

このおかげか、私は88歳の今も腰やひざの痛みもなく、テニスを楽しんでいます。白髪はありますが、髪の量自体は若い頃からそう変わりありません。カゼもめったにひきません。

アロエは育毛剤の他にも、数多くの活用法があります。興味のある方法からでいいので、試してみてはいかがでしょうか。

画像: この記事は『安心』2021年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年11月号に掲載されています。

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