脊柱管狭窄症の予防や改善には、脊柱筋、腹筋、背筋を強化したり、足腰の筋肉の柔軟性を高めたりして、安定した正しい姿勢を保てるようにすることが大切です。そのためにお勧めの運動が、腹筋の強化に役立つ「へそのぞき運動」と、背筋や脊柱筋の強化に役立つ「体幹トレーニング」です。【解説】三浦恭志(東京腰痛クリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

三浦恭志(みうら・やすし)

東京腰痛クリニック院長。名古屋大学医学部大学院卒業。医学博士。日本整形外科学会専門医。あいちせぼね病院理事。日本整形外科学会脊椎脊髄医、日本整形外科学会脊椎内視鏡下手術・技能認定医、日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医、脊椎脊髄外科専門医、日本PED研究会世話人。監修書に『図解 専門医が教える脊柱管狭窄症を治す最新治療』(日東書院)がある。
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[別記事:脊柱管狭窄症で起こる症状と治療法、症状を和らげるコツ→

体幹の筋肉の衰えも要因の一つ

脊椎管狭窄症は、加齢などで脊柱管の周囲の骨や靭帯、椎間板(背骨を構成する椎骨と椎骨の間の軟骨)などが変性することによって起こります。

しかし、それと同時に、脊柱を支える筋肉(脊柱筋)や、腹筋、背筋などの筋力低下、足腰の筋肉のこわばりなどによって、正しい姿勢が保てなくなることも深く関係しています。

筋力の低下や筋肉のこわばりによって、腰椎が不安定になり、正しい姿勢が保てなくなることが、脊柱管狭窄症の発症や悪化を助長してしまうのです。

そこで、脊柱管狭窄症の予防や改善、悪化防止には、脊柱筋、腹筋、背筋を強化したり、足腰の筋肉の柔軟性を高めたりして、安定した正しい姿勢を保てるようにすることが大切です。

そのためにお勧めの運動をご紹介しましょう。腹筋の強化に役立つ「へそのぞき運動」と、背筋や脊柱筋の強化に役立つ「体幹トレーニング」です。どちらも、簡単にできて、効果的に筋力を強化できる運動です。

ただし、痛みやしびれの強い時期は避け、症状が落ち着いた頃から行いましょう。また、行って痛みが増すときは行わないようにし、無理のない範囲で取り入れてください。

それぞれのやり方は下項の通りですが、いずれも、行う際のポイントを挙げておきましょう。

へそのぞき運動
②の動作では、肩が少し上がれば十分です。通常の腹筋運動のように、背中を上げてしまうと、かえって腰への負担が増すので注意しましょう。

体幹トレーニング
③~④は、慣れてきたら手足を同時に上げるようにすると、よりトレーニング効果が増します。

脊柱管狭窄症の予防・改善・悪化防止にお勧めの運動

へそのぞき運動

腹筋を鍛える運動です。

画像1: へそのぞき運動

あおむけに寝て、両ひざを立てる。

画像2: へそのぞき運動

へそをのぞくように体を起こす。

※①~②を10回くり返す。1日2度行う。
※②で、首を曲げ過ぎたり、体を起こし過ぎたりしないよう注意。肩が上がっているくらいでOK。

体幹トレーニング

体を支える筋肉を鍛える運動です。

画像1: 体幹トレーニング

四つんばいになる。

画像2: 体幹トレーニング

背中を丸めるように持ち上げ、5秒ほど静止する。

画像3: 体幹トレーニング

片方の腕を持ち上げ、5秒ほど静止する。反対側の手でも同様に行う。

画像4: 体幹トレーニング

片方の足を持ち上げ、5秒ほど静止する。反対側の足でも同様に行う。

※①~④を5~10回くり返す。1日2度行う。

股関節のストレッチやサイクリングもお勧め

以上のような筋力を高める運動とは別に、ストレッチも重要です。

脊椎管狭窄症の患者さんは、前屈みの姿勢を取ると、痛みが軽減されてらくになるため、前屈みの姿勢が癖になっている人が多くみられます。

歩いている途中に歩けなくなったときなどに、前屈みの姿勢で休むことは大切ですが、その姿勢が癖になると、体幹(胴)から足にかけての筋肉がこり固まってきます。そうなると、症状の悪化につながるので、足腰のストレッチで筋肉をほぐしましょう。

中でも、簡単に行えて効果的なのが、股関節のストレッチと、ハムストリングス(太もも裏の筋肉)のストレッチです。やり方は以下の通りです。

股関節のストレッチ

あおむけに寝て、両手で一方のひざを支え、ゆっくり腹部に引き寄せる。そのまま30秒保持する。反対側も同様に行う。

ハムストリングスのストレッチ

あおむけに寝て、 一方の足を上げる。ひざ裏を両手で支えて引き、固定しながら、可能な限り上げて15~30秒保持する。反対側も同様に行う。

こうした筋トレやストレッチだけでなく、無理なく歩ける範囲で(必要に応じて休みながら)散歩したり、自転車に乗って全身運動をしたりするのも、よい方法です。

自転車の乗車姿勢は前屈みになるため、脊柱管狭窄症の患者さんは、自転車には長く乗れるという人が多いものです。

ですから、無理なく安全に乗れる人なら、サイクリングを楽しむなど、自転車を全身運動に活用するとよいでしょう。

画像: この記事は『安心』2021年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年11月号に掲載されています。

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