足先の動脈は、足の中心に近い、深いところを走っており、足先の毛細血管を経て、静脈に血液が入ってくるはずですが、動脈から静脈に血液を直接流入させる「抜け道血管」こそが、下肢静脈瘤の原因であり、コブ・むくみ・冷えなどの症状を起こしていると考えられます。そこで、ぜひ試してほしいのが、「足の甲テープ」です。【解説】佐藤達朗(サトウ血管外科クリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

佐藤達朗(さとう・たつろう)

サトウ血管外科クリニック院長。1986年、信州大学医学部卒業。神戸大学、京都大学の心臓血管外科、武田病院グループ心臓血管外科部長などを経て、2008年サトウ血管外科クリニックを開院。独自の静脈内レーザー手術法を開発するなど、年間800~900件のレーザー手術を手がける。著書に『下肢静脈瘤は「足の甲テーピング」で9割よくなる!』(河出書房新車)などがある。
▼サトウ血管外科クリニック(公式サイト)

元凶は動脈と静脈をつなぐ「抜け道血管」

下肢静脈瘤は、足の表面近くを走る静脈(表在静脈)が皮膚に浮き出て、ボコボコとコブ(瘤)として現れる病気です。コブが現れる前に、むくみやだるさ、冷え、こむら返りなどとして感じることもあります。

血管には、心臓から全身に酸素と栄養を届ける動脈と、全身から心臓に老廃物を戻す静脈があり、末梢の毛細血管を通じて切り替わります。

動脈を流れる血液は、心臓のポンプ作用で強く押し出されていますが、毛細血管を通って栄養を与え、老廃物を回収して心臓に戻る静脈では、血流の勢いが弱くなっています。

特に、下半身(足)の静脈は、重力に逆らって血液を押し上げなければなりません。そのために、足(ふくらはぎ)の筋肉のポンプ作用と、静脈内の逆流防止弁の働きで、血液を心臓に戻しています。

この逆流防止弁がなんらかの理由で壊れて血液が逆流し、静脈内にたまると、静脈の血管壁に圧力がかかって、コブ状になってしまうのです。

皮膚表面近くを走る「表在静脈」には、「大伏在静脈」「小伏在静脈」の2種類があり、それぞれ、太ももの付け根とひざの裏で、足の中心部を走る太い「深部静脈」と合流しています。

これまで大伏在静脈と小伏在静脈は別々の流れと考えるのが、医学の常識でした。

ところが、あるとき私は「大伏在静脈と小伏在静脈が足の甲でアーチ状につながっている人がいる」ことに気がついたのです。調べてみると、95%の人の足の甲に、アーチ状静脈が存在することがわかりました。

しかも、このアーチ状静脈をエコー(超音波)で観察すると、普通の静脈ではあり得ない「動脈のような波形」が見られました。

足先の動脈は、足の中心に近い、深いところを走っており、足先の毛細血管を経て、静脈に血液が入ってくるはずです。

しかし、アーチ状静脈のエコーを見ると、動脈を流れる血液の一部が、抜け道を通ってアーチ状静脈に直接流入していると考えざるを得ません。

画像: 元凶は動脈と静脈をつなぐ「抜け道血管」

つまり、動脈から静脈に血液を流入させる「抜け道血管」こそが、下肢静脈瘤の原因であり、次の三つの症状を起こしているということです。

勢いのある動脈の血流が、抜け道血管を通って静脈に流入することで、通常よりも強い圧力が静脈壁や弁にかかり、コブができやすくなる

静脈を流れる血液が増えるため、流しきれない血漿と水分が静脈外に染み出し、むくむ

動脈から抜け道血管に抜ける分、足先の毛細血管に回る血液が減るため、足先が冷える

 
抜け道血管が開きやすいのは、気温が高いときや足を温めたとき、気圧が低かったり重力がかかりにくいときなどです。

下肢動脈瘤では、足のむくみや冷えに悩み、電気あんかで温めたり、足を高くして寝たりしている人が多いのですが、これは抜け道血管を余計に開くことになり、逆効果だということをぜひ覚えておいてください。

特に、電気あんかのような電磁波が出る温熱器は厳禁です。

抜け道血管が開きやすい就寝中に巻くとよい

その代わりにぜひ試してほしいのが、伸縮力の強い弾性包帯でアーチ状血管を圧迫して、抜け道血管を流れる血液を減らす「足の甲テープ」です。

テーピングで圧迫すると、足先の血行が悪くなりそうだと思うかもしれません。しかし、動脈は骨に囲まれた足の中心部にある上、弾力も強く、テーピングによる圧迫の影響は受けにくいので、巻いたときに痛みやしびれがなければ心配いりません。

ただし、外反母趾などで、圧迫すると痛みがある場合は、すぐにゆるめてください

入浴時以外は巻きっ放しが理想ですが、難しければ就寝中に巻いておきましょう。また、抜け道血管が開きやすい、立ちっ放し・座りっ放しのとき、生理中などに、予防的に巻いておくのも有効です。

足の甲テープで改善できるのは、足のむくみ、だるさ、冷え、こむら返りが出やすかったり、細い血管が透けて見えたり、血管がボコボコしていたりといった症状です。

すでに足にかゆみが出たり、湿疹や色素沈着、潰瘍ができていたり、痛みや変形にまで症状が進行している場合には、即治療が必要となるケースがあるため、早めに受診してください

足の甲テープのやり方

【用意するもの】

5~7.5cm幅で自己粘着性の弾性包帯
※(=自着性の伸縮包帯)包帯同士がくっつくため、結んだりテープや金具で留めたりする必要がなく、伸縮力の高い包帯。ドラッグストアなどで購入できる。
※弾性包帯以外では、幅広のキネシオテープ(伸縮力のあるテープ)、サラシなども利用できる。

【テーピングする場所】

画像1: 足の甲テープのやり方

【やり方】

小指の付け根から真横に引っ張りながら、巻きつけていく。

画像2: 足の甲テープのやり方

きつめに引きながら3~5周巻き、押さえて固定する。

画像3: 足の甲テープのやり方

両足に巻き、軽く歩いてみて痛くないことを確認する。痛ければ少しゆるめる。

画像4: 足の甲テープのやり方
画像: この記事は『安心』2021年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年11月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.