シモンの原産はブラジルです。原住民の治療薬として受け継がれてきたもので、ブラジル大学のシモン教授がこのイモを見出し、その名にちなんで「シモンイモ」と名付けられました。生のシモンは、ちっともおいしくありませんが、ビタミンKやミネラルが豊富です。【解説】平田真知子(薬草コンサルタント)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

平田真知子(ひらた・まちこ)

昭和45年より独学で薬草の研究を始め、その後、長崎市の植物学者・高橋貞夫先生に師事し、薬草研究を行う。昭和60年より各地の薬草会の指導を始め、自治体の健康づくり大会で健康相談や、保健所、公民館、老人会や農協などで講演などを行う。主宰する「薬草の会」には数百名もの会員が40~100歳という幅広い年齢で在籍している。会員は皆、声にハリがあって大きく、肌ツヤよく、認知症やがんとは無縁で過ごしている。
▼マチコばあちゃんの薬草歳時記(You Tube)

今が摘みどき、作りどき!
「シモン一号」
【効果・効能】白血病、神経痛、糖尿病、胃潰瘍、高血圧など

ブラジル大学のシモン教授が見出した

気がつけば、私の薬草人生も、はや50年になろうとしています。

これまでたくさんの薬草と触れ合ってきましたが、中でも最も感慨深く思い出されるのが「シモン」です。今回は、ちょうど10月頃から収穫が始まるシモンについてお話ししましょう。

シモンの原産はブラジルです。原住民の治療薬として受け継がれてきたもので、ブラジル大学のシモン教授がこのイモを見出し、その名にちなんで「シモンイモ」と名付けられました。

1973年にそのシモンを日本に持ち込んだのが、台湾出身の医師、故・楊天和先生です。楊先生は、手術後の胃の出血で助かる見込みのない患者が、シモンの搾り汁を飲んで回復した話を耳にし、ブラジルへ向かいます。そこでシモン教授と出会い、2個の貴重な種イモを譲り受けました。

楊先生は、その後、高知県の沖の島の診療所に招聘されます。そこで島の人たちにシモンイモの効用を熱心に説き、10年がかりで日本産シモン一号を作り上げました。これがシモンとして全国に広まっていったのです。

生のシモンは、カリッとした食感で、最後まで甘味が出てこず、ちっともおいしくありませんが、ビタミンKやミネラルが豊富です。

楊先生がシモンを患者に使い、その効用をまとめた論文によると、「天然ビタミンKを多量に含む。止血効果がある。がん、白血病の予防、治療食にもはなはだよい。生汁が特に有効。解毒、抗菌、免疫促進、血圧降下の作用もある」などと書かれています。

シモンが知られるようになると、私の知人にもシモンの栽培を始める人が出てきました。

その方は、とある町の町会議員です。奥さんのひどいリウマチがシモンでよくなった話が、私の参加していた薬草の会でも評判になっていました。その方は、シモンを乾燥させて粉にしたものをカバンに入れて持ち歩き、会う人会う人に、盛んに飲むよう勧めていたものです。

ところが、あるときから、その方が急に「シモンが効かなくなった」と言い出しました。私が師事していた植物学者の故・高橋貞夫先生も、それを不思議がり、なぜ効かなくなったのか、会を挙げて調べることになりました。

すると、同じ薬草の会にいたMさんという人から、興味深い話が飛び出しました。Mさんはサツマイモを作っており、毎年お孫さんはそのサツマイモが届くのを楽しみに待っているそうですが、「おばあちゃん、今年のサツマイモは全然おいしくないよ」と言われたそうです。聞けば、今年は隣にシモンを植えたといいます。

そこから高橋先生は、「シモンが雑種化したため、薬効が落ちた」と結論づけられました。シモンは、とても雑種化しやすかったのです。

加えて、シモンは土壌の栄養分をよく吸収して育つので、畑に植える際は、連作障害にも注意しなければなりません。

思いもかけぬ力を与えてくれる薬草

そんなシモンで不調が改善した人はたくさんいますが、私の心に強く残っているのは、白血病を患っていた40代の女性です。私はその女性に頼まれて、シモンをまとめて送っていました。

きれいに洗ったシモンを薄くスライスし、乾燥させてからミキサーにかけ粉にしたもので、家庭でも簡単に作れます。通常は1日100g、不調がある人は、3倍の300gを朝昼晩に分けて飲みます。

3年ほどたった頃、その女性から電話がかかってきました。「先生、ついに病気が完治しました!」。電話の向こうでその女性は泣いていました。私も涙があふれました。このときの感動は、忘れることはできません。こんなによい物は、ぜひ再びよみがえらせたいと思っています。

誰にでも同様に効くとは言えませんが、薬草は思いもかけぬ力を与えてくれることがあります。すでに不調がある場合は、シモンを200gほどすりおろし、その搾り汁を飲みます。シモンは熱を加えると効果が低下しますので、生で用いるようにしてください。

解毒作用の高いシモンの搾り汁

用意するもの
シモン……100g

作り方
シモンの皮をむいてすりおろし、汁を搾る。そのまま飲む。

画像: 解毒作用の高いシモンの搾り汁

※搾りたての汁は真っ白だが、どんどん黒くなってくるので、なるべく早めに飲むようにする。
※すでに不調がある場合は、シモンの量を200gに増やし、同様に作る。

画像: この記事は『安心』2021年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2021年11月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.