解説者のプロフィール


工藤孝文(くどう・たかふみ)
みやま市工藤内科糖尿病内科医・漢方医・統合医療医。福岡大学医学部を卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科にて、糖尿病内科・ダイエット外来・漢方医療を専門に、地域診療を行っている。NHK「ガッテン!」「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」など、テレビ出演多数。著書は50冊以上に及び、Amazonベストセラーも多数。YouTube「工藤孝文のかかりつけ医チャンネル」が、現在人気を集めている。
工藤あき(くどう・あき)
みやま市工藤内科消化器内科医。一般内科医として地域医療に貢献する一方、美腸・美肌評論家としても活躍。腸活×菌活を生かしたダイエット・美肌・エイジングケア治療に力を注いでいる。漢方医としては、「植物由来で内面から美しく」をモットーに診療を行い、日本でのインナーボタニカル研究の第一人者としても注目されている。テレビをはじめ、多数のメディアに出演。著書に『からだが整う水曜日の漢方』(大和書房)、監修書に『腸活 オートミールレシピ』(池田書房)、『医師が教える"デブ腸"を"やせ腸"に変える50の法則』(学研プラス)などがある。
腸活に役立つ「発酵性食物繊維」が豊富
脱穀したオーツ麦(燕麦)を食べやすく加工した「オートミール」。欧米では、牛乳でおかゆ状にしたものを朝食にするのが定番な一方、日本では長年なじみの薄い食品でした。
しかし近年、オートミールは「腸活に役立つ食材」として注目を集めています。なぜなら、オートミールには「発酵性食物繊維」が豊富だからです。
発酵と聞いて皆さんが思い浮かべるのは、納豆やヨーグルトなどの発酵食品だと思います。
発酵性食物繊維は、これらの食品のように、加工時に発酵の過程を経るわけではありません。食べた後に腸内細菌のエサになる。つまり、体内で発酵する食物繊維だということです。これについて、簡単に説明しましょう。
発酵性食物繊維は、消化されないまま大腸にまで届きます。そして、大腸内にいる善玉菌のエサとして発酵・分解されます。
この過程で作られるのが、酪酸などの「短鎖脂肪酸」。この酸こそが、体にさまざまな好影響を与えてくれるのです。
①腸内環境の改善
短鎖脂肪酸には、腸内のpH(酸性、アルカリ性など水の性質を示す単位)を下げる働きがあります。
一般に、腸内の善玉菌が最も発育しやすいのは、pHが4.5~5.5の弱酸性の環境下だといわれています。短鎖脂肪酸によってpHを適度な値に下げることで、善玉菌が増殖しやすい環境になり、腸内環境が改善されます。
②やせホルモン「GLP‐1」の産生
最近よく話題に上る「やせホルモン」こと、GLP‐1。短鎖脂肪酸は、このホルモンの分泌を促す働きを持っています。
GLP‐1には、脳の肥満中枢を刺激して食欲を抑えたり、インスリンの分泌を促して血糖値が過剰に上がるのを防いだりする効果があります。
そのため、ダイエットをはじめ、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の予防・改善にも、大いに効果を発揮します。
健康的なダイエットに必要な栄養素が豊富
発酵性食物繊維は、オートミールをはじめとする未精製の穀物の他にも、海藻類、豆類、キノコ類、ゴボウなどに多く含まれています。毎日の食事で、こうした食材を意識してとれば、腸の健康を維持しやすくなるでしょう。
中でも私がお勧めしているのが、オートミール。この食材がお勧めの理由は、発酵性食物繊維はもちろん、健康に関わるさまざまな栄養が豊富に含まれているからです。
胚芽などが未精製であるオートミールには、ビタミンB1やミネラル、たんぱく質なども豊富に含まれています。
ビタミンB1は、体内で糖質を速やかにエネルギーに変えて疲労の回復を助けます。また、鉄分やマグネシウムなどのミネラルやたんぱく質は、貧血の予防・改善や美肌づくりに役立ちます。
特に後者は、女性やダイエッターに不足しがちな栄養です。オートミールを毎日食べれば、バランスのよい食事がとれるでしょう。
食べ方としては、最近注目を集めている「オートミール米化」がお勧めです。これは、水を加えたオートミールをレンジで加熱し、ご飯のようにする方法。短時間で簡単に調理でき、味もおいしいのが特長です。
[別記事:オートミール米化のやり方&アレンジレシピ→]
特筆すべきは、白飯と比較した際のカロリーと糖質の量。茶わん1杯分の白飯と比べて、カロリーは約半分、糖質は約3分の1に抑えられています。

※『八訂食品成分表2021』(女子栄養大学出版部)より、編集部で作成。少数点第1位以下は四捨五入。
その上、オートミールは低GI食品(食後に血糖値が上がりづらい食品)のため、血糖値が気になる人にもお勧めです。
米化したオートミールは、3食全てで置き換えても問題はありません。ただ、人によっては、オートミールの食べ過ぎで腹部膨満感や、おならが増加するなどの変化があるようです。様子を見つつ取り入れてください。
また、栄養バランスを整えるには、野菜や肉・魚などの摂取も必要です。これらも適度にとりながら、健康維持に活用するとよいでしょう。

この記事は『安心』2021年11月号に掲載されています。
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