首と肩のコリに大きく関係しているのが、姿勢です。肩甲骨の周りにある筋肉をほぐすと、肩甲骨がスムーズに動くようになって、胸が大きく開きます。全身を楽に動かせるようになり、痛みもコリも劇的に軽減します。肩甲骨によい姿勢やストレッチはとても簡単なので、意気込まず気軽に行ってください。【解説】藤縄理(福井医療大学保健医療学部教授・医学博士)

解説者のプロフィール

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藤縄理(ふじなわ・おさむ)

福井医療大学保健医療学部教授・医学博士。日本徒手理学療法学会理事長。1980年、国立犀潟療養所附属リハビリテーション学院理学療法学科を卒業し、理学療法士免許を取得。2007年、新潟大学大学院医歯学総合研究科生体機能調節医学専攻博士課程修了(医学)。埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科教授などを経て、現在に至る。主な著書に『丸い背中がピンと伸びる! 一生歩ける「寝たまま筋トレ」』(PHP研究所)などがある。
▼専門分野と研究論文(CiNii)

肩甲骨周りのコリは自律神経に悪影響

原因不明のめまい、そして寝つきの悪さや浅い眠りなどは、悪化した首や肩のコリが引き起こしているケースが珍しくありません。

首と肩のコリに大きく関係しているのが、姿勢です。日常生活では、料理など家事を行うときは前かがみになり、パソコンやスマートフォンを操作するときには首を前に突き出すなど、背中が丸まって胸が閉じてしまいがちです。

こうした姿勢は、首から肩周りの筋肉を緊張させて血流を悪くします。長時間続くと、肩甲骨周りがこり固まって動きにくくなり、痛みも現れます。

背中がさらに丸まり、肩甲骨がガチガチにかたくなった状態は、自律神経にも悪影響を与えます。その結果として現れるのが、めまいや不眠、頭痛、吐き気、疲れ目といった症状です。

こうした不快症状に悩む人にお勧めしたいのが、「肩甲骨によい習慣」です。日常生活の要所で、肩甲骨によい基本姿勢や肩甲骨周りを動かすストレッチを取り入れるのです。

肩甲骨の周りにある筋肉をほぐすと、肩甲骨がスムーズに動くようになって、胸が大きく開きます。全身を楽に動かせるようになり、痛みもコリも劇的に軽減します。肩甲骨によい姿勢やストレッチはとても簡単なので、意気込まず気軽に行ってください。

まず朝、目を覚ましたら大きく伸びをしましょう。

また、家を出る前に真上にバンザイをして、10回ほど上げ下げするストレッチを行いましょう。腕は、なるべく耳のわきを通るように行います。このとき、後述の基本姿勢で行ってください。

画像1: 肩甲骨周りのコリは自律神経に悪影響

眠っている間はあまり動かないので、起床時は体がかたくなっています。その状態をほぐすのは、一日を活発にスタートさせるのにも最適です。もちろん、伸びやバンザイはいつ行ってもかまいません。

そして、気づいたときには肩甲骨によい基本姿勢をとりましょう。信号待ちやメイク前、ひと息ついたときなどにも行うといいでしょう。

肩甲骨によい基本姿勢のとり方
気づいたときにこの基本姿勢を取る。ストレッチもこの姿勢で行う。

画像2: 肩甲骨周りのコリは自律神経に悪影響

家事や仕事の合間などには、背もたれを利用したストレッチでひと休みしましょう。前述の基本姿勢でイスに深く腰かけ、首が反らないように首の後ろのつけ根で両手を組みます。背もたれに寄りかかり、3~5秒、背中を後ろに伸ばしましょう。

画像3: 肩甲骨周りのコリは自律神経に悪影響

その後、座る位置を前に1cmずつずらして、同様に行っていきます。痛気持ちいい加減で行い、ピリッとした痛みが現れたら中断してください

このような習慣は、首や肩のコリが起因の不調に効果的ですが、次の症状があるときは、医療機関を受診してください

頭を動かすと起こるめまい
耳鼻科を受診しましょう。
首をねじると起こるめまい
脳神経外科などで検査を受けることをお勧めします。
腕にピリッと走る痛みやしびれ
この状態で行うと悪化する可能性があります。神経内科や整形外科を受診しましょう。

週1回の治療より自宅での姿勢が大事

こうしたストレッチは、治療家が患者さんに長年指導してきた、王道のセルフケアです。コリや痛みで患者さんが受診しても、週に1回治療を受けるだけで、自宅では悪い姿勢を続けているのでは、症状はあまり改善しません。

ですから私は、自宅で簡単にできるストレッチを患者さんにお伝えして、できるだけ毎日行ってもらいます。

ストレッチの効果はすぐに得られ、「コリがつらいときにストレッチすると、とても楽になる」などの感想も聞かれます。

病院で検査を受けても原因が見つからないめまいや痛み、不眠、首や肩のコリは、悪い姿勢を放置していると治りにくくなるばかりか、悪化することもあります。年齢が高くなるほど、姿勢を維持する筋肉が衰えるため、症状を訴える人が増える傾向にあるのです。

肩甲骨によい習慣は、継続して実践することがたいせつです。ぜひ毎日行い、不調を軽いうちに解消するように心がけてほしいと思います。

画像: この記事は『壮快』2021年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年11月号に掲載されています。

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