へその周辺には胃腸の調子を整えるツボが集中しています。「のの字あんま」は、へその下を起点にしてのの字を描くように腹部をマッサージします。これは、江戸時代に生まれた「按腹」という手技療法が元になっています。特に、腹筋の弱い人やおなかに冷えのある人に効果的です。【解説】丸尾啓輔(太子橋鍼灸整骨院院長)

解説者のプロフィール

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丸尾啓輔(まるお・けいすけ)

太子橋鍼灸整骨院院長。鍼灸師、柔道整復師。整形外科勤務の経験を活かしたロコモティブシンドローム(加齢に伴う筋力低下などで移動機能が低下した状態)の改善を得意とする。「健康寿命をいつまでも!」と掲げ、リハビリや鍼灸治療を行っている。
▼太子橋鍼灸整骨院(公式サイト)

へそ周辺に胃腸を整えるツボが集中

東洋医学では、人間の体内を巡る「気・血・水」という三要素の過不足や流れの滞りが、病気や不調を引き起こすととらえます。「気」とは生命を維持するためのエネルギー、「血」は血液、「水」はリンパ液などの水分を指します。

私の治療院にいらっしゃる患者さんには、腸の動きが鈍く、便秘に悩まされている人が多く見られます。

東洋医学では、腸の不調は、ストレスなどの影響で気の流れが、運動不足や冷えで血の流れが、食習慣の乱れで水の流れが滞っていると考えます。

そこで、実際の施術では、患者さんそれぞれの体の状態を確認しながら、治療するポイントを決めて治療を行っていきます。

施術では全身のツボを用いますが、へその周辺には、特に胃腸の調子を整えるツボが集中しています。主なツボを紹介すると、次の四つです。

中脘(ちゅうかん):みぞおちとへそを縦に結んだ線の真ん中で、へそから指4本分上にあります。胃もたれや胃痛、胃の消化不良などを緩和し、腸の状態の改善に働き、食べ過ぎや飲み過ぎ、体のだるさにも有用です。

関元(かんげん):へそから指4本分真下にあります。「関」は関所、「元」は「元気」を意味し、生命力の源である元気を回復します。便秘、下痢、胃炎、胃もたれなど胃腸の不調全般のほか、冷え、頻尿、むくみなど泌尿器系の不調にも効きます。

天枢(てんすう):へそから左右の真横に指3本分離れた場所にあります。胃腸の気の流れを整え、便秘、ガス腹、胃もたれ、消化不良、食欲不振など胃腸の不調全般に効果があります。

帯脈(たいみゃく):へそから左右の真横のわき腹で、腸骨の手前のへこんだ場所にあります。「帯」は「腰の周り」、「脈」は「すじ道」を意味し、腰の周りのすじ道のツボを表します。便秘、下痢や吐き気など、おなかの不調のほか、尿が出にくいなどの泌尿器系、月経痛など婦人科系の不調にも効きます。

おなかが冷えている人や腹筋が弱い人に効果的

今回は、これら四つのツボを適度に刺激しながら、腸の動きをよくして胃腸の不調を解消するセルフケア「のの字あんま」をご紹介しましょう。

のの字あんまは、へその下を起点にして「の」の字を描くように、腹部をマッサージします。

これは、江戸時代にあんまの一つとして生まれた「按腹(あんぷく)」という手技療法が元になっています。按腹は、おなかにあるツボを刺激することで、気・血・水の巡りをよくして、胃腸の調子を整えます。

やり方は下項をご参照ください。両手の指先を重ねた「面」で、まっすぐ奥に向かって心地よい力かげんで押すのがポイントです。慣れないうちや、押すと痛い場合は、さするだけでもかまいません。20~30秒かけて1周し、3周行います。

四つのツボは、ピンポイントで押圧しなくても、だいたいの位置でけっこうです。腸の形に沿って腹部を刺激することで、小腸では消化吸収が促進され、大腸では蠕動運動が促されて、便やガスが出やすくなります。

特に、腹筋の弱い人やおなかに冷えのある人に効果的です。タイミングを決めて毎日1~2回行うと、1~2週間ほどで効果が実感できるでしょう。

のの字あんまは、起床後や寝る前、入浴後がお勧めです。便秘の人は、便が出ずにつらいときに行うと、排便を促す効果が期待できます。下痢の人は、下腹部を特に意識して行ってください。

食前に行うと、胃腸の働きが活発になり消化吸収がよくなります。夏バテや食欲不振の人は、食前がよいでしょう。

ただし、食後1~2時間は避けてください。妊娠中の人や腹部の手術を受けた人、腹部に外傷や腫瘍、動脈瘤のある人は行わないでください

また、蒸しタオルなどで腹部を温めてから行うと、より効果的です。のの字あんまとともに、おなかを温める習慣を身につけると、なおよいでしょう。

〝腸活〟の一つとして、のの字あんまをぜひ日常に取り入れてはいかがでしょうか。

「のの字あんま」のやり方

ツボの場所

画像1: 「のの字あんま」のやり方

中脘:みぞおちとへそを縦に結んだ線の真ん中で、へそから指4本分上
関元:へそから指4本分真下
天枢:へそから左右の真横に指3本分離れた場所
帯脈:へそから左右の真横のわき腹、腸骨の手前のへこんだ場所

やり方
押圧するツボの位置は、だいたいでよい。
毎日、1~2回を目安に行う。おなかを温めて行うと効果的。
食後1~2時間は行わない。おなかに力を入れて行わない。

画像2: 「のの字あんま」のやり方

あおむけになるか、イスの背もたれに寄りかかって座る。
両手の指先を重ね、おへその下に置き、関元→右の帯脈と天枢の辺り→中脘→左の帯脈と天枢の辺り→左下腹部の順に、「の」の字を描くように少しずつずらしながら心地よい強さで押圧していく。
1周20~30秒を目安に3周する。

画像: この記事は『壮快』2021年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年11月号に掲載されています。

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