便秘をはじめ腸の不調に悩んで相談に来られた人には、もちろん漢方薬を処方したり、食事や生活の養生をアドバイスします。それと同時によくお勧めするのは、「人差し指さすり」です。中医学独特の考え方なので不思議に思うかもしれませんが、人差し指の側面には大腸の経絡が通っていて、ここを刺激すると、それだけでおなかの動きがよくなるのです。【解説】久保奈穂実(国際中医薬膳管理師)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

久保奈穂実(くぼ・なおみ)

女子美術大学造形科卒業。医薬品登録販売者。国際中医薬膳管理師。ペット薬膳管理士。芸能・音楽活動を行い、ハードな生活で身体のバランスを崩した際、漢方に助けられた経験から興味を持ち、イスクラ中医薬研修塾にて中医学を学ぶ。「中医アロマ」など、中医学の知識を活用して、多くの人の健康や美容を体の内側から支えている。
▼なおみん 健康と美容の中医学(Twitter)

腸は「健康の土台」となる重要な臓器

私は現在、漢方薬店で、中医学をベースに皆さんの健康と美をサポートする漢方相談に応じています。中医学とは、東洋医学の一つで、中国の伝統医学のこと。その考え方や手法は、数千年という長い歴史に裏づけられた理論と経験に基づいています。

漢方薬、薬膳、鍼灸なども、中医学の手法の一つです。生薬や食べ物、経絡(一種の生命エネルギーである気の通り道)を刺激することで、体全体のバランスを整え、自然治癒力を高めることを目的としています。

病気になる以前の予防医学としての要素が強い中医学は、日本でも健康意識の高い人々に注目され、日常生活に取り入れる人が増えてきました。また、西洋医学ではカバーできない症状の解決策としても効果が認められ、最近では医療や介護の現場でも導入が進んでいます。

そこで今回は、中医学の観点から、〝腸活〟についてお話ししたいと思います。

中医学でも、腸は非常にたいせつな臓器で、「健康の土台」といっていいほど重要です。というのも、腸がきちんと機能していないと、どんなにいい食べ物や生薬をとっても、消化吸収されないからです。

そもそも日本人は胃腸が弱いといわれています。周りを海に囲まれている島国であるため、湿気に弱い胃腸がダメージを受けやすいからだという説もありますが、真相は定かではありません。

しかし実際に漢方相談でも、便秘をはじめ腸の不調に悩んでいる人が、一年を通してとても多いことを実感しています。

相談に来られた人には、もちろん漢方薬を処方したり、食事や生活の養生をアドバイスします。それと同時に、誰もが簡単にできる、ちょっとした小ワザをお伝えすることもあります。

便秘にも下痢にもおすすめ

私が腸の不調によくお勧めするのは、「人差し指さすり」です。

これは、左右の手の人差し指の側面(親指側)を、指先から指の根もとまで、反対の手の人差し指でさするというセルフケアです。力を入れる必要はなく、表面を優しくなでる程度で十分。短時間でかまわないので、1日数回、気がついたときにスリスリとさすればOKです。

画像: 人差し指の側面(親指側)を、もう一方の人差し指でさする。

人差し指の側面(親指側)を、もう一方の人差し指でさする。

左右それぞれを30秒~1分さする。
1日何回行ってもOK。
いつ行ってもいい。

人差し指の側面には、大腸の経絡が通っています。ですから、ここを刺激すると、それだけでおなかの動きがよくなるのです。

中医学独特の考え方なので、不思議に思うかもしれません。でも、私自身、腸が弱くて便秘になりやすいのですが、「調子が悪いかも」と思ったときに人差し指さすりをすると、便秘にならずに済んでいます。

また、私は便秘になっているとき、人差し指の側面によくポツポツと湿疹ができたり、皮がむけたりしていました。便秘が改善すると、その肌荒れもなくなりました。腸の不調が、経絡上にも現れていたのでしょう。

中医学では、大腸と皮膚は密接に関連すると考えられています。それも影響して、皮膚症状が出たのかもしれません。

この人差し指さすりを、漢方相談に来られるかたに勧めたり、ツイッターで紹介したりしたところ、「効果があった」という声が多く届きました。

「お風呂で実践したら、翌朝おなかが痛くなることもなくスッキリ出た」「すぐにおなかが動き出した」「便秘症の6歳の息子にスリスリしたら、お通じがよくなった」など、即効性を感じているかたも少なくないようです。

漢方薬や食事は、人それぞれ合う・合わないがありますが、人差し指さすりは体質や好き嫌いに関係なく、万人にお勧めできるのもよい点です。小さい子供やお年寄りなど自分でできないかたにも、誰かが手軽にしてあげることができます。

大腸の経絡を刺激して腸を整えるので、便秘に限らず、下痢にも有効です。

これから、乾燥による不調が多くなる季節。空気が乾燥すると、皮膚や腸も乾燥します。そうなると増えてくるのが、コロコロ便タイプの便秘です。

コロコロ便を解消するには潤い補給が必要ですが、人差し指さすりを行えば、かたくて出にくくなった便を出やすくする効果が期待できるでしょう。

日常生活では、体を冷やさないように注意しながら、季節の力を借りたり、人差し指さすりのような小ワザを取り入れたりして、腸を整え、健康の土台づくりをしましょう。

画像: この記事は『壮快』2021年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年11月号に掲載されています。

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