近年、食生活の欧米化によって、日本人の食物繊維の摂取量が大きく減ってきました。一方で、腸に悪い影響を及ぼす食材を多く摂取するようになった結果として、腸内細菌のバランスが崩れています。それが、アレルギーや自己免疫性疾患など「免疫の暴走」につながっていると考えられます。【解説】林隆博(西焼津クリニック院長)

解説者のプロフィール

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林隆博(はやし・たかひろ)

西焼津クリニック院長。1984年、鳥取大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、藤枝市立総合病院などでの勤務を経て、1990年に西焼津クリニックを開院。アレルギー・アトピーの予防、撲滅を提唱し、そのための活動を行う一方で、予防医学協会に所属し、労働衛生健康管理にも精通。著書に『アレルギーは腸から治す』(幻冬舎)があるほか、医学誌等に寄稿するなど、精力的に活動している。

腸内環境を手っ取り早く整える食材とは

私は、アレルギーの問題に長年にわたりかかわってきました。その活動を通して、子供のアレルギーは改善されつつあることを感じています。一方で、大人のアレルギーは増え続けています。その最も大きな要因は、腸内環境の乱れにあるといってよいでしょう。

近年、食生活の欧米化によって、日本人の食物繊維の摂取量が大きく減ってきました。一方で、腸に悪い影響を及ぼす食材を多く摂取するようになった結果として、腸内細菌のバランスが崩れています。

それが、アレルギーや自己免疫性疾患など「免疫の暴走」につながっていると考えられます。

本来なら、免疫機構のなかで、免疫全体をコントロールする司令官の役割を果たすはずの制御性T細胞が、ちゃんと働かなくなってしまうのです。これも、腸内環境の乱れによって起こっています。

またなにより、このコロナ禍においては、新型コロナウイルス予防のためにも、腸管免疫をしっかり働かせておくことが重要です。

新型コロナウイルスの大半は、飲食した際に口から入ると想定されています。腸の免疫機構がしっかり機能していれば、それだけ発症の確率が下がる可能性が高いことはいうまでもありません。

そのためにも、プロバイオティクス(人の体によい影響を与える微生物)をとって腸内環境を整えておきたいのです。

プロバイオティクスを摂取していると、インフルエンザウイルス感染時に、その発病を抑制するという海外の報告があります。さらに、予防接種において、ワクチン効果を高めることもわかっています。コロナの予防接種においても、同様の効果が期待できるでしょう。

プロバイオティクスを手っ取り早くとるには、ビフィズス菌入りのヨーグルトがお勧め。ほかにも、みそや納豆などの発酵食品がお勧めできます。

水溶性食物繊維をとるには海藻がおすすめ

アレルギーや自己免疫疾患を改善するには、大元となっている腸内環境の乱れを整える必要があります。

そのために私が皆さんにお勧めしているのが、食生活の改善です。具体的には、砂糖や脂を断つことと併せて、食物繊維を含んだ食材を積極的に摂取しましょう。

私たちの腸に棲む代表的な腸内細菌は、3種類に分類されます。善玉菌、悪玉菌、そしてそのどちらにも属さない日和見菌の三つです。

善玉菌は消化吸収を助け、健康維持に好ましい影響をもたらす菌で、ビフィズス菌や乳酸菌がその代表です。悪玉菌は、体に悪い影響を及ぼす菌で、ウェルシュ菌・ブドウ球菌・大腸菌(有毒株)などがあります。

また、日和見菌は、健康なときはおとなしくしていますが、体が弱ったときなどに、腸内で悪い働きをする菌で、代表的なものにバクテロイデス・大腸菌(無毒株)などがあります。

多くの人は、砂糖と脂を減らすだけでも、効果が出てきます。それほど、現代人は砂糖と脂をとり過ぎているのです。

加えて、食物繊維をとって、腸内環境を整えましょう。

食物繊維は、水溶性と不溶性の二つがありますが、不溶性食物繊維は、白米を八分づき米や玄米に換えたり、パンを全粒粉にしたりするのがお勧めです。

水溶性食物繊維をとるのにお勧めなのは、海藻類です。私自身も、ワカメは必ず週に1回、モズク、メカブはほとんど毎日食べるようにしています。

腸内に届いた食物繊維は、ビフィズス菌によって発酵して、短鎖脂肪酸を産生します。短鎖脂肪酸には、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの種類がありますが、この短鎖脂肪酸が私たちの抗アレルギー力を高め、腸内環境をよりよくしてくれるのです。

サプリメントを活用する方法もあります。ビフィズス菌の仲間である、ブレーベ菌、インファンティス菌、ロンガム菌の3種の菌を意識してとることがお勧めです。

また、善玉菌のエサになるオリゴ糖を摂取するのもいいでしょう。

なかには、オリゴ糖をとると、下痢をしてしまうというかたがいます。それは、悪玉菌が腸内に増えている証拠といってもいい現象です。

そうした場合、オリゴ糖の摂取量を減らして、少しずつ継続してとってみましょう。もしくは、小麦やオーツ麦のふすま(外皮の粉)をかわりにとるようにしてもいいでしょう。腸内環境が整えば、下痢は起こらなくなります。

また、腸内細菌叢は精神的な要素からの影響も受けるため、食事以外では、ストレスを避けることがたいせつです。そのためには、よく眠ることや適度の運動も必要でしょう。

[別記事:旬の食材でおなかが喜ぶ!元気になる!〝腸活〟秋の美味レシピ→

画像: この記事は『壮快』2021年11月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2021年11月号に掲載されています。

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